ぱにっく32!何で現世に魔法があるの?
学園長室に忍び寄る部外者が、眼前の扉を開けた。
直後、そこには誰も居らず、水の枯れた井戸ような空虚な光景が広がっていた。
「――球技大会の会場は、ここじゃありませんよ」
部外者の背後より冷淡な声が聞こえた。学園長だ。
学園長が張り付くように立っていたのだ。
部外者は振り向かず、ただ降参を表すように両手を上に上げた。
その時、外套の袖から黒い球が数個溢れ落ちてきた。
野球ボールより一回りほど小さいそれが地面に着地した瞬間、固体から液体に変化した。
地面には黒い水溜まりが生まれている。
それらは独りでに一点に集中し、やがて一匹の軟体生物と化した。
姿形を常時変化させる、不規則な動きをした軟体生物。まるで黒いスライムのようだ。
学園長は黒いスライムに危険を察知したのか、地面を蹴り上げ、素早く後方の階段に飛んだ。
だが、それを追うようにスライムが体を伸ばす。伸縮自在の動きが可能のようだ。
黒いスライムは学園長の足首を掴んだ。
学園長はそのまま階段に倒れ――途中、胸元から一匹の黒猫が飛び出てきた。
軽快な身のこなしからジャンプし、部外者の頭上を超える。
部外者は不意をつかれたように、左右交互に二度見した。
と、その時、黒いスライムが掴んでいた“学園長もどき“が一瞬にして燃え尽きた。
それは、黒いスライムごと焼き払う。
部外者は背後を振り向く。が、時既に遅かった。
そこには、先ほどの黒猫はいなかった。
黒いドレスに黒のブーツ、更には黒い三角帽子を被った、全身黒尽くめの女性がいた。
三角帽子から飛び跳ねるくせ毛が何とも可愛らしい。
豊満な胸の谷間を大胆に見せており、細身であるためドレスがこれ以上とないくらいに似合う。
身長は百七十五前後くらいで、猫のような鋭く吊り上がった目をしている。
双方の澄色の瞳がどこか夕闇を思い立たせる。
私立月陽学園都市の長・シュプリンガーだ。
「一撃目はサービスしてやるわい」
挑発的な口調でそう口にしながら、シュプリンガーは部外者の脇腹に片手を潜り込ませた。
片肘で盾を作り、そして、片手を押し当てた。
「“マジックアンプリファイアー“」
瞬間、半透明な球体が押し当てていた片手から一斉に広がった。
雷雨を予兆させるような轟音と共に地面を毟り取りながら破壊していく。
部外者が身に纏っていた外套は剥がされ、そのまま階段に投げ落とされた。
八段下まで転がり落ちていき、そこで止まった。
シュプリンガーは部外者を見下ろした。
部外者はすくりと起き上がり、その金色の長髪の分け目からシュプリンガーを睨み付けた。
部外者は黒と白を基調した修道服を身に纏っている。
「修道女がそんな目をするでない」
「今の私は修道女ではない。裏切り者を連れ戻しにきた一人の女、インテグラだ」
冷たい空気が漂う。
その頃、ローションビーチバレー会場は熱気に溢れていた。
学園のアイドル的存在、恥夜が動く度に胸が揺れ、同時に会場が揺らいだ。
黄色い歓声と
「キャアアア! 神知様ー!」
変質者の歓声が、
「頑張れ! 神乳!」
揺らしていたのだ。
恥夜は声援に応えて大胆なビキニに挑戦したのだが、結果的にそれは、己に対する恥辱以外のなにものでもなかった。
恥夜は自滅していた。
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