ぱにっく2!敬礼!ヒロインが爆死するであります!
私立月陽学園都市。そこは未開拓の地に建設された物である。その規模は大きく、地帯自体も広大だ。
卒業まで三年を要するのだが、それまでの期間いかなる理由でも外出ができない。
そのため、生徒達に不自由を感じさせないように各種様々な店舗が置かれている。
それ以外にもシャワールームなどの生活に必要な施設が完備されてあるのだ。
人工桜が春風と共に舞う四月二十八日。各々が交友関係を持ち、大河も関西姉妹と出会い、何不自由ない生活を送っていた。
バカ組学生寮。この私立月陽学園都市には二つの学区に分けられいる。
一つは大河達がいる東洋学区だ。もう一つは外国人がいる西洋学区だ。
両学区には三つのクラス分けがされており、下から順に『バカ』『凡才』『天才』と分けられている。
当たり前だがそれは個人の成績を表すもので、季節の変わり目に行われる“レベルアップ試験”に合格しないと進級できないのだ。
むろん、試験に合格しなければバカのままとなる。留年しても学費や生活費等の資金は援助されるため金銭面では苦労しないのだが、一生バカのままというわけにもいかないだろう。
最初の試験は、七月。
それまでにバカは凡才にレベルアップできるくらいの力を身につけねばならない。
もっとも、ただの勉強では意味がないのだが。
ドーナツ状の物が何十にも積まれた、全長二千メートルの円柱型の建物。それがバカ組の学生寮だ。
ドーナツの穴の部分がエレベーターとなっており、最上二十階から最下一階までの間はこれで行き来できる。
各エリアごとに六つの部屋があり、共同で住む者もいれば個別で利用する者もいる。
共同生活しても部屋は各一人に分け与えられるため、そういう場合は物置などに利用されることが多い。
大河と関西姉妹もそれだ。三人は共同生活をしているのだ。
一階は受け付けなどの事務的な場所に占領されているため、生徒達が利用するのは二階からである。
三人は五階に住んでいた。
三人の部屋。中はドーナツの形に沿り横に広がって行く形だ。
日用雑貨品が点々と置かれたその部屋は意外とスペースがある。出入口のすぐ横にはトイレと洗面所が兼用で設置されており、キッチンは別の専用部屋にあるためここにはない。
白いシーツの掛けられたトリプルベッドの上で解放的な姿の三人が寝ていた。
真ん中に虎鉄が寝ており、それを挟む形で大河と神戸が寝ている。
人工的な光が三人を照らしている。もうそろそろ起床の時間だ。
「生ハム……ハム……生ハム」
意味不明な寝言を口にしているのは虎鉄だ。
そんな虎鉄のブラジャーの下から手を突っ込んでいる大河。生暖かい体温と強張った胸の膨らみの感触が指先に伝わる。
器用に揉みほぐしながら、ヘラヘラと気味の悪い笑みを浮かべている。
そんなことをしていた大河だが、ふとすくりと起き上がった。
寝惚け眼で辺りを見渡しながら背中を掻いて、トイレへと足を運ぶ。
トイレの扉を開け、下着を下ろし便座に座る。
「ふはぁ〜」
大あくびをする大河。便座に座ってから一分が経過する。と、異変に気づく。
用を足している中、ある物が大河の目に入ってきた。
それはさながら春に姿を見せる土筆のようなもの。それより二回りほど小さい”ナニ”が生えていた。
大河は目を擦って再確認する。当たり前だ。大河は女であり、そんなものが付いているはずがない。
だが、付いていた。いや、生えていた。
夢ではないとすると――――大河はそれに触れてみる。
大河の顔からやかんが沸騰したように湯気が噴く。
己の性別を探るように手にトイレットペーパーを巻いて便座の中に手を入れる。
トイレットペーパーが水気を帯びた。大河はホッと息をなでおろす。
いやいや。大河は即座に突っ込みを入れる。
安心している場合ではない。大河は女だ。現在も女として機能している。が、男としても機能しつつある。
「……どゆこと?」
ポカーンと間抜けな表情で目を丸くさせる大河。トントン、トイレの扉を叩く音が、
「生ハム〜ハム〜」
虎鉄だ。まだ夢から覚めていないようだ。
ガチャ、悪夢の音と共にドアノブが回る。
瞬間、大河はドアノブを掴み、回せなくした。
運動もしていないのに身体中が汗だくだ。
「……はっ! 危うく生ハムに食われるところやった! あれ? 誰か入っとるんか〜?」
「入ってるよ! もう出るから!」
鍵を施錠し、パンツを履く。
若干だがナニの形が浮き彫りになっている。
「まだ〜?」
迷っている暇はない。大河は出ることを決意した。水を流し、そして扉を開けて飛び出す。
「おおっ! 朝から元気ええな〜」
眼前の床に散らばる紅色のプリーツスカートを履き、半袖のブラウスを着る。それに要した時間はわずか三十秒足らず。
「ハァハァ……」
息を乱しながら周囲を警戒する。誰も見ていない。
何とかその場は乗り切れたようだ。
「ふぅ」
今度こそホッと息をなでおろす。
しかし、これからどうするのか。この時の大河はそんなことを考える余裕すらなく、まるで地雷の埋められた危険地帯に足を踏み込んでいるような心境だった。
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