ぱにっく17!バカエロはただバカでエロいわけじゃない!
メイドは扉の外にいた。盗み聞きする様子もなく、ただ呆然と立っていた。
大河はドカドカと乱雑な歩調で学園長に肉迫する。
学園長は動じず、至極冷静に大河を待ち構えていた。
無礼など知ったことかと言わんばかりに大河は学園長の胸ぐらを掴む。
「お前のせいで俺は……!」
ピタッ、と学園長の二本の指が大河の額に触れた。
直後、胸ぐらから大河の手が離れていった。それどころか大河自身までもが学園長から離れていく。
軽く浮遊する大河は疑問符を浮かべあちこちを見渡す。
二メートルほど距離を置かれたところで大河は地面に優しく下ろされた。
地面に尻を着き、ひっくり返った蜘蛛のような態勢となりながら学園を見上げる。
学園長は優しく笑みを浮かべていた。
「俺、ですか?」
大河は疑問符を浮かべる。
「女の子が自分を『俺』と呼ぶのは好めませんね」
もっとも――――大河は男の子であるから無理もないですね。学園長はそう付け足し、終始可憐な笑みを浮かべていた。その可憐さが逆に薄気味悪く見える。
大河は顔を引き攣らせながら、その場を立ち上がった。
「お前が勝手に……いや、頼んだのはママだけど、お前が俺の性別を変えたんだろ!」
「ええ、そうですよ」
「いやいや!」
大河は再び乱雑な歩調で前進しようとしたが、
「そうですよじゃなっぶっ!」
透明な壁に歩行を阻まれた。
トナカイみたいに鼻を真っ赤に染めた大河。打った部分を押さえながら目を瞑り痛みを堪える。
「すぐに手が出るのも好ましくないですよ」
「っ〜! 知らないよぉ」
学園長は溜め息をついた。
「……確かに、私が魔法で大河の性別を変えました」
学園長は大河の元に近寄りながら口にする。
「その件については謝ります。大河が希望するのであれば“女性に戻します“」
「ま、マジか……!」
大河と学園長が一枚の透明な壁を挟んで立つ。
「ええ、ただし条件があります」
条件? 大河と問う。
はい、学園長は眼前の壁を氷を溶かすように解いた。
「あなたが女性に対し、猥褻な行為をしないことです」
「猥褻な行為なんてしないよ」
「いえ、現にあなたは数多くの女性の胸を揉む等の猥褻な行為をしています」
ぎくっ、と大河は肩を揺らす。図星だ。
「スス、スキンシップだよ〜」
苦し紛れの言い訳は通じない。
「あなたが本当に女性ならスキンシップで済むかもしれませんが、あなたは男性でしょう」
大河は煮詰まった表情をしていた。
「うっ、それはそうだが……」
学園長は大河の両肩に手を乗せ、重く煮詰まった表情を向けた。哀愁感じるその瞳は痛く哀しかった。
「今という幸せを手放すようなことはしてはいけませんよ、大河」
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