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ぱにっく139!魔法使いと不死身の吸血鬼“ヴァンピール“!?
 おかしな笛の音のような音が上空から地上へ、落ちてきた。
 無数の悲鳴が同時に届き、中空に差し掛かった頃、その正体が分かった。
 女子生徒達だ。
 喩えて言うなら、肉団子だ。
 女子生徒達が一つの塊になり、落ちてきていたのだ。

「いきなりなんですの〜!?」

 塊の中にいるキャッツが心の底から叫んでいる最中、地面に着地する直前のことだ。
 光が一瞬にして奪われた。
 広大な砂漠の全ての光は、暗幕を引かれたように、闇に変わった。
 唯一の救いは、遥か上空に浮かぶ満月のみ。
 女子生徒達が一斉に、砂漠に叩き落とされた。
 幸い、透き通った水のような砂がクッションとなり、痛手にはならなかった。
 むしろ――
 関西姉妹とラインヒルドが大急ぎで駆け寄る。落下してきた女子生徒達が心配なのだろう。素晴らしい友情である。

「大河〜! 大丈夫か〜!」

 名指し。
 ざわつく女子生徒達の群の中心、

「きゃっ!」

 女子生徒が黄色い悲鳴を上げた。
 周囲の視線がそこ一点に向けられる。
 悲鳴の主が尻を上げた時、神戸の表情が一変、不安そうなそれが消え、冷たさ一色に染まった。
 大河は潰されていたのだ。が、何故かその表情は至福そのもの。理由は言わなくても分かる。
 たくさんの尻に潰されていたからだろう。
 神戸がそういう目になるのも仕方ない。

 ――月に人影が映る。

 一同は散開し、恥夜から話を聞くことにした。
 涼しい夜風が吹く。少量の砂が運ばれる。
 恥夜は一同の中心に立ち、右手を天に掲げた。
 唐突な行為に首を傾げる一同、恥夜は掲げた手の指先を弾いた。
 パチンッ! と大きな音を上げた瞬間、一同が持つアイテムが光の粒子となって儚げに消えた。

「アイテムが急に消え……!」

 しかし、変わりに別の物が現れた。
 生徒手帳だ。

「――各エリアで中級の生き物を退治したのを確認できましたので、これより、上級の生き物――不死身の生き物を退治してもらいます」

 月から人影が消えた。
 黒い両翼を羽ばたかせ、華麗に宙を舞い、男を虜にするような妖艶な容姿を露にする。
 鉛を薄く溶け込ませたような銀灰(ぎんかい)色の長髪がきらびやかに揺れ、双方に生えたコウモリの羽に似た角を映す。
 芸者のような艶やかな瞳と膨らんだ口元は美しく、豊らかな胸元を大胆に開いた黒のドレスが美しさを際立てた。
 肩に掛ける紐がずれ、今にも裸体になってしまいそうな、危ない格好をしている。

「今から七時間後、現世では朝陽を迎えます。それまでにあの“吸血鬼(ヴァンピール)“を退治してください」

「魔法を使っていいんですか?」

 女子生徒が質問する。
 まあ、退治できるアイテムがないので使っていいのだろう。
 ええ、恥夜はやはりそう答えた。
 意外と楽な戦いになりそうだ、と喜びを露にする一同、そうなるといち早く吸血鬼を退治せねば、という欲望と焦燥感が走り出す。

「言い忘れてましたが」

 恥夜が歓喜の状況に歯止めをかけた。

「吸血鬼に効く魔法は一つしかありませんから」

 現世もすっかり暗くなっていた。現刻は午後九時を回るので、当然と言えば当然なのだが。
 校舎前通りに人気はなく、たった一人、インテグラだけが、ちょこん、と地に座っていた。
 月夜に陶酔(とうすい)しつつも、その行方を心待ちにしている。

「勝利か、敗北か」

 昨晩、学園長室にて、恥夜はインテグラにこう告げていた。

『“合唱魔法のみ“が通用する相手を最後に用意しておいてください』

 インテグラはそれを思い出したのか、静かに笑った。

「さて、どちらのレールを引っ張ってくるのか」

 停車時間は七時間。
 とてつもなく長い。
 だが、その場にいる者達からすれば、それは、とてつもなく短く感じるのかもしれない。


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