ぱにっく12!妖精のいたずら……何かエロい?
大河は校舎側に向かって走り、キャッツは寮側に向かって走り出した。
両者共に拳銃を下に構えた状態で走り続ける。
やはり互いに考えることは同じで、まずは建物に身を隠す手段を取った。
大河は食堂の脇にある隙間に入る。横にはゴミ袋がまとめて置いてある。防臭されているのか刺激臭はしない。
フェンスに足を伸ばし、外壁に背もたれする。
「二十点で合格なら青の五点を四回で済むな」
バカでも掛け算くらいは出来るようだ。
確かに大河の言うことは正しいし、それが合格への最短ルートと言えよう。
しかし、そう上手く事が進むわけがない。
青の軌道はダウン、つまり、いくら真正面に向けて銃を発砲しても描く軌道は全て下となる。
倍以上身長差がないと地上での発砲はまず意味がないので、その倍以上の身長差を生むためにも建物の上から撃つのが一番有効である。
有効ではあるが、それは向こうにとっても有効である。そう、赤のホップアップだ。
徐々に軌道を上昇させるその姿は、さながら水面を飛翔する燕のよう。
上に的がいれば、それだけ当たりやすくなるというものだ。
軽く挙げただけでもこれだけの法則が浮かび上がるのだが、大河はそれすらも気づいていない。
だが、対照的にキャッツの方はそれに気づいていた。
この時間の西洋学区の学生寮は無人に等しい状態であるため、騒音の被害を与える心配がない。
キャッツは学生寮に身を隠していた。
「ふふ、むこうは軌道を気にしてるでしょうけど、私には軌道なんて関係ありませんわ」
キャッツは袖口に隠していた生徒手帳を取り出した。
「――最も高得点なもの。それを“確実に当てる“のですから」
中心の砂時計がひっくり返り、中の砂が下に滑り落ちていく。
魔法名『フェアリー』の文字が筆記体で浮かび上がる。
『now loading……』の文字が浮かび上がり、全ての砂が下に落ちたと同時に文字は消え、新たに『ordrr select』の文字が浮かび上がった。
キャッツは小声で魔法名を呟く。
「フェアリー」
直後、生徒手帳が緑色に発光し、中心から人間の頭部が出てきた。
やがて、それは全体を露にした。身長三十センチほどの発光体。淡い緑色に包まれたそれの見た目は人間と同じである。
波を描くロングヘアーは額が隠れぬよう左右に分けられている。衣服は着ていない。
まだあどけなさが感じられるその少女こそが妖精なのだ。
妖精はキャッツの頭上を自由気ままに回り続け、光の粒子を蒔き散らしていた。
「フェアリー、ちょっと力を貸してもらうわよ」
妖精は幼い表情のまま首を傾げる。
その頃、大河は表に姿を現していた。裏で動くのは性には合わないのかもしれない。
滑走路のように広大で直線的な道を大河は歩いていた。
「おーい、早く出てこーい、猫目〜」
と、前方、五十メートルくらい離れた先にキャッツの姿が現れた。
ゆっくりと歩いてきながら、銃口を大河のプレートに向けていた。
「一点なんか取ったって意味ないじゃんー」
パンッ、と軽い発砲音と同時にペイント弾が直線的な軌道を描きながら飛んできた。
直線的な軌道は白色のペイント弾――――のはずだった。
大河のプレートに着いた色、それは、
「あ、あり? 白じゃないの?」
ダウンの軌道を描く筈の青色のペイント弾、そう、白色ではなく青色だったのだ。
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