ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
ぱにっく119!目障りな蟻は根刮ぎ踏み潰す……
 極彩色の宝石が宙を舞った。
 七色の陽射を生み、アスファルトを照らし出す。
 七つの宝石が順々に落下してくる最中、

「主は主で、我は我――それが貴方の御言葉。ならば、私は私のやり方で動きます。シェリル様」

 彩り豊かな糸で口の開いた箇所が飾り付けされた白い外套、それを着た細身の女性――インテグラはそう口にした。
 七つの宝石が割れた鈴の音を地に奏でる。段階的に響き、足音を立てる。
 全ての宝石が割れた。中から油のような重い質感をした液体が溢れ出てきた。
 紋章(クエスト)
 溢れ出た液体が、ある物を描き出したのだ。
 基本の円形、枠の回りに現代では解読不可能な形、恐らく、文字だろう。それが赤く鼓動を打っていた。
 円の中は、二枚の三角形を逆向きになるよう重ねた六芒星が全体を占め、間には片目が七つ、不気味に開眼している。
 風が吹き荒れる。
 外套の頭巾が剥がれ、金色の長髪を縦靡かせる。
 風の勢いは増していき、突風のような風切る音が鳴り響く。
 インテグラは紋章に両手を掲げ、叫ぶ。

「実力を叩き込みに行きますよ。お前達――」

 インテグラの影が隠れた。
 天候は曇一つ見られない晴れ、自然によるものではない。
 白い巨人が――丸太のように“ぶっとい“手足を持った巨人が、紋章の扉を開き、姿を現した。
 数は七体。幅十メートル、高さ三十メートルの体躯の持ち主。
 不気味な隻眼(せきがん)を頭部に持つ。
 上は七から下は一まで、しかし被りは生じていない。
 まるで点呼を取る為の番号のようだ。
 巨人から見れば、そいつは蟻ように小さい。
 蟻が像を誘導する。
 インテグラが七体の巨人を引き連れ、歩み出す。
 その進行方向の果てでは、魔法体育祭が行われていた。
 しかし、第二部の中間まで終えた現在は昼食中のようだ。
 正面入口付近にある屋台で購入した物を食べる。全員がグランドに集結するため、人混みが激しい。
 慌ただしい昼食中、大河は放送席に足を進めていた。
 ラインヒルドを昼食に誘おうとしているのだろう。
 いつもなら、何も言わずとも向こうからやって来るのだが、仕事が忙しいのだろうか。
 人混みを掻き分け、すり抜け、ようやく白いテントの姿が見えた。
 焦る気持ちが先走ってしまったのか、大河は上級生を薙ぎ倒しながら進んでいた。迷惑この上ない。
 人混みから脱し、

「ライン〜! 仕事なんか放っておいて一緒に飯でも――」

 第三レーンで立ち止まる。
 目前のテントに、ラインヒルドの姿が無かったのだ。
 疑問府を浮かべたような表情をしながら、辺りを見渡す。
 昼食中とあってか、テントには教員の姿も無かった。
 聞く当ても無くなった状況、教員と昼食をとっているのかもしれない。
 そこに、飲み物を販売しているメイドに出会した。三十本ほど積まれた木箱を手に持ちながら、覇気のない声で宣伝している。
 大河はそのメイドを取っ捕まえた。
 メイドは客と判断したのか、

「いらっしゃいませ」

 と、マニュアル通りに接してきた。が、大河は普通に無視した。

「ラインはそっちで飯食ってるの?」

「ラインヒルド様は此方にはいません」

「……そうか」

 大河は生徒手帳でサイダーを購入し、後ろを振り返った。

「ありがとうございました」

 ラインヒルドはグランドにいた。
 人混みの中ではない。正面入口をずっと先まで後退した所で、かつての仲間と出会していた。
 七体の巨人を引き連れたインテグラと、無防備なラインヒルドが対峙する。

「――帰ってくる気は?」

 インテグラのたった一つの問い。

「――ありません」

 ラインヒルドのたった一つの答え。

「私の友達に手出しはさせません!」

 ラインヒルドのたった一つの決意。
 インテグラは不敵な笑みを溢す。

「お前からそんな台詞を聞けるなんて……“最ッ高“だよ!」

 来る。
 ラインヒルドは身構えた。
 大河に己が持つ魔力の半分を捧げてしまった為、今は半分の力しか出せない。
 だけど、戦うしかない。
 自分を友達と言ってくれた人達のために。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。