ぱにっく109!恐怖!属性支配の重奏魔法・アクセラレータ!
人工的な灯りに照らされたアスファルトに人影が走った。
夜の闇を前傾姿勢で突き進む大河、そこは、地上ではなく空中だ。
光の粒子が道標を残し、鮮やかに溶け込み、消えていく。
目前で待ち構えるキャッツもまた、大河と同じく空を飛んでいる。
その距離、およそ二十メートル。エースストライカー使用時なら五秒で着く。
大河はキャッツを見据える。
いや、キャッツではなく、その右手のようだ。
「タイプライターは装備魔法か。アレは色んな場面で役立つな」
大河はその場に止まった。
キャッツは首を傾げる。
直後、大河は高々と生徒手帳を突き上げた。
月光を浴びる生徒手帳。
キャッツは身構え、警戒態勢に入る。
生徒手帳を二本の指で挟み、下に構える。
月光に打ち勝つ眩い光を発した。衣服が夜風に着崩され、生き物のように揺らした。
大河は魔法名を叫ぶ。
「行け! タイプライター!」
固まる。
突き上げた右手に白銀のピースが埋められていく。
月光を反射し、白銀の光の瞬きが放たれる。
キャッツは光で目をやられないように、腕で視界を隠した。
甲に描かれた無数の元素記号が鼓動を打つ。
「エースストライカーと言い、これといい。魔法を使えない筈の大河が使えるようになっているわ……」
キャッツは大河に恐怖を感じているのか、口数が減っていた。
果敢に攻めるのではなく、冷静に分析しかしていない。
いや、分析しかできないのか。恐怖が先程の行動力を奪ってしまったのだろう。
しかし、それは大河も同じだった。
「性質を変えれるんだっけな。変えれそうなものは……」
大河は周囲を見渡す。
手の届く所にある物は電柱だが、あまり効果的とは言えない。
大河は辺りを物色し続けている最中、乾いた破裂音が大音響で唸り、水の刃が横切った。
袖が口を開き、肌に切傷が刻まれる。
水で薄んだ血が白に滲む。
大河は切られた個所を掴んだ。右腕の上腕に当たる部分だ。
空気中に水はない。
大河はキャッツを見た。
キャッツはしゃがみ、エースストライカーに右手を当てていた。
タイプライターが装備された右手を。
「重奏魔法・アクセラレータ」
キャッツはゆっくりと体を上げていく。
「アクセラレータ?」
ええ、キャッツは頷いた。
妖艶な眼差しを向けながら、単調な語り口で言った。
「エースストライカーの弱点は属性が固定されてしまうこと。しかし、タイプライターを使えば属性、つまり性質を自由に変えれることができるのよ」
大河は息を呑む。
「アクセラレータは“属性支配“の重奏魔法。――これより私は、“勝負を支配します“」
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