桃缶ぱにっく!ブレイク・オブ・クロニクル!(10/160)PDFで表示縦書き表示RDF


桃缶ぱにっく!ブレイク・オブ・クロニクル!
作:俺とキルマシーン



ぱにっく10!猫に泥棒されたー!


 螺旋状の塔が夜の闇に染まり、天辺は暗雲に呑まれ消える。
 中から人工的な白い光が差し出て、月明かりと共に夜から闇を奪っていた。
 眼前、圧倒的に(そび)え立つその校舎が、地上でぽつんと立つ彼女を俯瞰していた。
 彼女の名は、白衣大河。
 そして、ここは西洋学区。
 東洋学区にいる筈の大河がここにいるのには理由がある。
 模擬試験だ。模擬試験をするために乗り込んでいたのだ。
 模擬試験の内容は簡単だ。要は西洋学区の新入生と相見えて、白星を獲得することである。
 しかし、肝心の相手がいない。西洋学区は夜間授業が主であるため、基本的に夜に外を出歩く者は少ないのである。
 そう、少ないのであっていないわけではない。
 大河が出直しを考えていた時、夜風と共にそれは彼女の前に現れた。
 前方の昇降口、蜂蜜色の瞳に差し込む細い反射光線がぎらりと光る。まるで真夜中の猫の目のように輝いていた。
 波を描く金髪のロングヘアーが翻り、革靴の底が無音のそこに高らかなステップを刻む。
 彼女の名は、キャッツ・アイ。西洋学区の新入生である。
 吊り上がったそれが蜂蜜色の瞳を縁取る。彼女の自信を感じさせる。
 双方の石柱は校門を生む。キャッツは片方の石柱に背中を貸し腕を組み、高慢な態度で大河に接した。

「あなた、東洋学区の新入生でしょう」

 大河は疑問符を浮かべる。

「えっ、そうだけど……どっかで会ったっけ?」

 ふふ、と妖艶と不気味が入り混じった微笑を浮かべる。

「天才である(わたくし)が、あなたみたいなバカと会ったことなんてありませんわ」

 大河は呆然としながら硬直していた。自分を平然とバカ呼ばわりしてきたのに腹を立てているのか。

「何だよー、天才組の生徒か。道理で強そうなはずだよ」

 違った。それどころか大河は言葉の解釈の仕方を間違っている。
 やはりバカは健在である。

「まっ、まあ? 私が強そうに見えるのは仕方ないですわね! 何て言ったって私は天才ですもの! オッホッホッホ!」

 だが、対するキャッツも相当なバカだと言えよう。
 手の甲を口元に当てながら、キャッツは貫高い笑い声を上げていた。

「私はキャッツ・アイ。あなたの名前は?」

「俺? 俺は白衣大河。大河でいいよ」

 キャッツは背に反動を付けて起き上がらせる。

「――立入禁止の東洋学区の新入生が規則を破ってまでして西洋学区(ここ)に足を踏み入れているということは、あなたも模擬試験の相手を探しているのでしょ?」

 そして、数歩先に立つ大河と真正面で向き合う。

「いいですわ、私が相手になりますわよ。大河」

 袖口から手の平に生徒手帳を流し落とす。
 大河に見せ付けるように、生徒手帳を持つ手を裏返した。

「えっ、キャッツ先輩は天才組で……あれ?」

 新入生に魔法の授業が取り組まれるのは六月中旬以降であり、五月初旬の時点で魔法を使えるのはおかしい。
 しかし、キャッツは魔法を使えた。












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