ぱにっく10!猫に泥棒されたー!
螺旋状の塔が夜の闇に染まり、天辺は暗雲に呑まれ消える。
中から人工的な白い光が差し出て、月明かりと共に夜から闇を奪っていた。
眼前、圧倒的に聳え立つその校舎が、地上でぽつんと立つ彼女を俯瞰していた。
彼女の名は、白衣大河。
そして、ここは西洋学区。
東洋学区にいる筈の大河がここにいるのには理由がある。
模擬試験だ。模擬試験をするために乗り込んでいたのだ。
模擬試験の内容は簡単だ。要は西洋学区の新入生と相見えて、白星を獲得することである。
しかし、肝心の相手がいない。西洋学区は夜間授業が主であるため、基本的に夜に外を出歩く者は少ないのである。
そう、少ないのであっていないわけではない。
大河が出直しを考えていた時、夜風と共にそれは彼女の前に現れた。
前方の昇降口、蜂蜜色の瞳に差し込む細い反射光線がぎらりと光る。まるで真夜中の猫の目のように輝いていた。
波を描く金髪のロングヘアーが翻り、革靴の底が無音のそこに高らかなステップを刻む。
彼女の名は、キャッツ・アイ。西洋学区の新入生である。
吊り上がったそれが蜂蜜色の瞳を縁取る。彼女の自信を感じさせる。
双方の石柱は校門を生む。キャッツは片方の石柱に背中を貸し腕を組み、高慢な態度で大河に接した。
「あなた、東洋学区の新入生でしょう」
大河は疑問符を浮かべる。
「えっ、そうだけど……どっかで会ったっけ?」
ふふ、と妖艶と不気味が入り混じった微笑を浮かべる。
「天才である私が、あなたみたいなバカと会ったことなんてありませんわ」
大河は呆然としながら硬直していた。自分を平然とバカ呼ばわりしてきたのに腹を立てているのか。
「何だよー、天才組の生徒か。道理で強そうなはずだよ」
違った。それどころか大河は言葉の解釈の仕方を間違っている。
やはりバカは健在である。
「まっ、まあ? 私が強そうに見えるのは仕方ないですわね! 何て言ったって私は天才ですもの! オッホッホッホ!」
だが、対するキャッツも相当なバカだと言えよう。
手の甲を口元に当てながら、キャッツは貫高い笑い声を上げていた。
「私はキャッツ・アイ。あなたの名前は?」
「俺? 俺は白衣大河。大河でいいよ」
キャッツは背に反動を付けて起き上がらせる。
「――立入禁止の東洋学区の新入生が規則を破ってまでして西洋学区に足を踏み入れているということは、あなたも模擬試験の相手を探しているのでしょ?」
そして、数歩先に立つ大河と真正面で向き合う。
「いいですわ、私が相手になりますわよ。大河」
袖口から手の平に生徒手帳を流し落とす。
大河に見せ付けるように、生徒手帳を持つ手を裏返した。
「えっ、キャッツ先輩は天才組で……あれ?」
新入生に魔法の授業が取り組まれるのは六月中旬以降であり、五月初旬の時点で魔法を使えるのはおかしい。
しかし、キャッツは魔法を使えた。
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