これも恋の始まり?〜不器用な恋物語〜(18/24)縦書き表示RDF


△月○日
やっと見つけた琉依は、まるで子供のように小さく見えた。いつもは自分の弱さを見せない琉依なのに今日はこんなにも弱さをさらけ出している。そんな琉依が愛しくなってしまう。失いかけてから初めて気付いたこの気持ち……。もう離さないで。
これも恋の始まり?〜不器用な恋物語〜
作:山口維音



act18琉依の決意


 
 今まで気付かなかった気持ちに素直になった翌朝、目が覚めると隣では琉依がまだ眠っていた。そんな琉依を見ると、昨日の事は夢ではなく現実なのだと改めて実感した。
 今までよく琉依とはこうして一緒に寝ていたが、こんなにも琉依が愛しいと思ったのは初めてだった。
 「見てなよ……。絶対に夢中にさせてやるから」
 そう呟いて、まだ夢の中の琉依の前髪に触れた。
 「期待していますよ」
 琉依は突然目を覚ますと昨夜同様、意地悪な笑顔を見せてきた。
 「お、起きてたの?」
 「当たり前でしょ? やっと手に入れた俺の彼女の寝顔を……」

 ボスッ!

 琉依が言い終わる前に、枕で琉依の顔を殴った。
 頭ではなく顔を殴ったのは、赤くなっているであろう自分の顔を見られるのが嫌だったからだ。

 「今日、大学行くでしょ?」
 「行くけど、みんなに打ち明ける為だけで、終わったら帰るよ」
 着替えながらそう答えると、琉依はドアの方へ歩いて行った。だが、すぐに足を止めると、
 「それに、浅井クンにも謝らないといけないし?」
 「浅井クンに? 何をしたの?」
 琉依は再び歩き出すと、階段を降りながら
 「ちょっと、彼に嘘をついてしまったんだ」
 そう答えた琉依の言葉の意味を、私は理解できなかった。

 一階に降りると、琉依は携帯で伊織に電話している。一限をさぼって、喫茶店に集合していてと言う琉依の顔は何かを吹っ切れた清々しい表情だった。
 大学へ向かう車の中でも、これから仲間に別れを告げるとは思えないくらい明るい表情の琉依……。そこから、琉依の決心は固いものなのだと思った。
 大学に着いて車から降りて喫茶店に向かっている間、琉依と手を繋いでいたが、やはり緊張しているのか琉依の手が少し震えていた。
 そんな琉依の弱さを、私は気付かないフリをして一緒に歩いた。

 「琉依!」
 喫茶店に入った瞬間、伊織が立ち上がって叫んでいた。他のみんなも次々と席を立つ。そんなみんなを、琉依はただ寂しげな表情で見つめていた。
 「おはよう!」
 何となくぎこちなかった雰囲気の中、突然梓が琉依に大きな声で挨拶をしていた。梓にしては珍しいと、思わず全員の視線が梓に向けられる。
 「あっ、おはよう……」
 恥ずかしくなったのか、急に声のトーンを下げて再び言う梓に琉依は近付くと、いつものように梓に抱きついた。
 「やっぱり可愛いなぁ、梓は」
 「きゃ〜っ! きゃ〜っ! きゃ〜っ!」
 琉依に抱き締められながら必死に抵抗する梓を、伊織がまたいつものように琉依を殴って助けていた。
 そんな様子を見ていると本当にいつもと変わらないのだけれど、そんな楽しい雰囲気がこれから琉依の一言で崩れてしまうのだ。

 「ごめんね、心配掛けて……。みんなにはもっと早くに言うべきだったね」
 琉依が話し始めると、さっきまでの賑やかな雰囲気から一気に静かになった。
 「みんなも知っていると思うけど、先日……退学届を出してきました。俺は……語学勉強の為に、来月イギリスに行きます」
 琉依の衝撃の一言に、みんなは驚きを隠せないでいた。
 「えっ……」
 「マジかよ……」
 次々と声を出すが、みんなはまだ琉依の決意を上手く理解出来ないでいた。そんな中、琉依はずっと私の手を離さないでいた。
 「みんなにはちゃんと言っておきたくて、こうして集まってもらったんだ」
 「どれくらい、イギリスにいるつもりなんだ?」
 浅井クンの問いに、琉依は少し考えていた。そういえば、私も聞かされていなかった。
 「三年は、いようと思っている。中途半端では投げ出したくないから」
 もはや琉依の決意は固いと分かっていたみんなは、琉依を止めようとする言葉を言う事は無かった。言っても、簡単に意志を曲げようとする琉依では無い事くらいみんなは十分分かっている。
 「頑張ってね。琉依の夢を現実にする為に……」
 寂しげな表情で言う梓を、琉依は笑顔で返した。
 「寂しくなるわね……。仲間が遠くへ行ってしまうのは」
 それは琉依も同じ思いだと思う。琉依にとって、みんなは大切な仲間……。長い時間を共に過ごした仲間との別れに、とても悩んだに違いない。
 「ちゃんと日本に帰ってくるから……」
 みんなは笑顔で返しているけど、きっと内心ではこう思っている……。

 琉依は三年なんかでは帰っては来ないと……。

 「俺、事務所に行って来るわ。退学届をちゃんと受理してもらってくる」
 琉依はそう言って席を立ち上がると、去って行った。

 琉依……、何か忘れていない?


 18話終了です!本当にありがとうございます!!読んで頂き、本当に感激です!そろそろ、終わりが見えてきたのでシリーズ第二弾の準備も始めるつもりです。完結までどうぞよろしくお願い致します!











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