突然自分の了解無く部屋を出されたことに、御坂は不満を爆発させていた。
「何で勝手にテレポートしたのよ。私、あの人にもっと聞きたいことがあったんだけど」
無能力者《レベル0》にして大能力者《レベル4》を倒すほどの実力者と戦えば、自称無能力《レベル0》の、あのツンツン頭を倒すヒントが見つかるかもしれない、と御坂は踏んでいたが、その目論見を相方の白井は当然のように見抜いていた。
「どうせ丁度良い腕試しの相手が見つかったと思ったのでしょう。そうやって誰彼構わず突っかかるのは、およしになられたほうがいいですわよ」
相も変わらずの世話焼き女房ぶりが、火に油を注ぐ。唯だ善人のみ能く尽言を受くとはいうものの、人はそう単純ではない。
「誰彼構わずって、人を狂犬みたいに言わないでよ! 私だって相手くらい選ぶんだから」
「ですが、あの方はやめておいたほうがいいと思いますの」
「何でよ。私が負けると思ってるの?」
白井は力なく、首を左右に振って否定した。
「お姉様が負けるなどと、露ほども思っていませんわ。だからこそ、お止めしているのです」
しおらしく顔を伏せ、白井は御坂に進言する。
白井に向かって『直接的な手段』を助言した廷兼郎の眼は、冗談の色を含んでいなかった。あの時、本当に『直接的な手段』を行ったり、その素振りを見せていたら、彼は躊躇い無く白井に攻撃を加えていただろう。その手段は、彼の言うところの『直接的な手段』だったかもしれない。
白井は、自分が廷兼郎に負けたとは思っていない。むしろ彼の言ったように、生殺与奪権は自分にあると考えている。だが、それ以外で彼を無力化する方法を思いついていないのも事実である。
「あの方に勝つには、殺してしまう以外にないと思いますの。それ以外の綺麗な勝ち方を、あの方はさせてくれませんわ。今回は模擬戦でしたし、私はあの方を殺す覚悟が無かったので、負けてしまいましたわ」
白井と御坂では能力も、そのレベルも違う。戦い方も自ずと違ってくる。それでも白井には、電撃を受けて大人しく降参する廷兼郎の姿が浮かんでこない。
自分が廷兼郎に気絶させられたから、彼の戦力を過大評価しているのかもしれない。そうだとしても、二人が戦うところを見たくないというのが、白井の偽らざる心だった。
「お姉様にとって、あの方はそれほどの覚悟を以って倒す相手ですか? 今日会ったばかりのあのお方に、超電磁砲を撃って、体を粉々に吹き飛ばす必要があるのですか?」
自分はその必要を見出せなかった。見出せていたら、廷兼郎は死体になっていたはずだ。
それは果たして、白井にとって『勝利』なのか。もしくは、御坂にとって『勝利』となるのか。
「超電磁砲を使わなくたって、無力化する方法は幾らでもあるわ。殺さなくたって勝てるわよ」
白井の進言も届かず、御坂はさらに対抗心を燃やした様子だった。この分では、二人が戦うことになるかもしれない。それは出来れば、模擬戦という枠組みであってほしいと、白井は切に願った。
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