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魔女に乾杯!
作:坂田火魯志



第八十二話


                   第八十二話   走る
 かくしてライゾウのコーチの下タロのダイエットがはじまった。まずは身体を動かすことからだった。
「じゃあいいかな」
「うん」
 タロはライゾウを前にして頷いた。
「まずは第一に身体を動かすことだ」
「トレーニングだね」
「そう、それでカロリーを消費する」
「御主人様みたいにだね」
「何だ、わかってるじゃないか」
「いつも見ているからね。じゃあはじめるか」
「あいよ」
 詳しく教えることができなくていささか不満であったがライゾウはコーチをはじめた。まずはタロの背中に乗った。まるで馬に乗る騎手の様であった。
「それじゃあしゅっぱぁーーーーつ」
「了解」
 こうしてまずはランニングからはじまった。タロはライゾウを背に乗せたまま駆け足を開始した。
「中々いいじゃないか」
 ライゾウは風を身体に受けながら言った。
「いいスピードで・・・・・・ん!?」
 だがここで異変に気付いた。
 タロの駆け足があまりにも速いのである。ライゾウはそれを受けてまともに座ってはいられなくなった。
「う、うわ」
 慌ててしゃがみ込む。そしてタロの背中に倒れ込む様な態勢になった。
「ん、どうしたの?」
「どうしたもこうしたもないよ」
 ライゾウはたまりかねた声で答えた。
「速過ぎるよ、旦那」
「そうかな。いつもと変わらないけれど」
「犬にはよくても猫にはちょっと辛いよ。少しスピードを落としてくれよ」
「仕方ないな。それじゃ」
 タロは速度を少し緩めた。すると何とか乗っていられる速さになった。
「そう、これ位なら」
 ライゾウは安心した声で言った。
「大丈夫だよ。こんな調子でね」
「了解」
 そしてこのまま駆け足を続けた。一時間程でそれを終えた。
「中々いいじゃないかい」
「いい運動になったね」
 二匹は家に帰ってこう言い合った。見れば二匹共舌と足の肉球から汗をかいていた。犬は舌、そして猫は肉球からしか汗をかかないのである。
「次はな」
「うん」
 二匹は餌のところに置かれている水を飲みながら次の打ち合わせをしていた。
「反復横飛びでもするか」
「反復横飛び?」
「そうさ。これはおいらの得意技の一つでね」
 ライゾウは誇らしげに言いはじめた。
「まずは手本を見せるから。楽しみにしておいてくれ」
「あまり期待しないで楽しみにしておくよ」
「ちぇっ」
 そんないつものやり取りの後で二匹は庭に出た。そして次のメニューに取り組みはじめた。

第八十二話   完


                  2006・1・14







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