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旧作 作者:hayashi

シーズン2 第4章「特命チーム」

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特命チーム始動

挿絵(By みてみん)
 ――夏が終わる頃。
 ジャン、セイヤ、リサは特戦部隊から離れ、正式採用ではないが『治安局長の特命によって動く治安部隊特殊チーム』所属となっていた。

 この3人は、発電所立てこもり事件の主犯を捕らえ、マハート氏暗殺を阻止し、そしてルイ・アイーダ拉致監禁事件を解決へ導いたとし、その功績が治安局上層部の目に留まり――それほど隊の色に染まっていない伸びしろのある柔軟なこの若者たちを『隊の垣根を越えた別働隊』として試用してみることになったのだ。
 ちなみにこの案の立役者は治安局長ホッシュ・ルッカー。40歳の気鋭のエリート官僚である。

 ルッカーはこれまでの隊の縦割りを見直し、横の連携をスムーズに行えるような組織作りを考えていた。そこで、まずはこの特戦部隊出身の隊員3人を治安局長直属の特命チームに仮採用した。
 仮採用とは言っても、機密事項を扱うこともあり得るとのことで『特命チーム専用室』が与えられ、書類仕事はそこで行うことになる。

 今までの特戦部隊室を出て、『特命チーム専用室』に引っ越すことになったので、セイヤたちは「お世話になりました」とファン隊長に挨拶に行った。
 ファンは心底ホッとした様子を見せていた。自分の弱みを握っているセイヤたちが離れてくれるからだろう。

 セイヤもこれ以上、ファンの弱みを利用しようとは思っていなかった。
 ――利用し過ぎれば、必ず後で痛い目にあう。憎まれるのはマイナスだ。ファンは基本的にこちらの味方なのだ。敵にしてはいけない――そう考えていた。

 リサは射撃の腕を確実に上げていた。
 ――トリガーを弾く時、兄を殺した犯人の姿と、血に染まりながら死んでいった兄の姿が脳裏に浮かんだ。
 的に当たった時、リサの頭の中では犯人の体が赤く染まった。
 反対に外れた時は、自分への罰として『兄の体が赤く染まる様』を思い浮かべた。
 だから、決して的を外せない……外せば、兄を血まみれにすることになるのだ。それは絶対に許されない。

 こうした射撃訓練でのリサの凄まじい集中力に、ジャンは畏怖さえおぼえるようになった。
 今ではリサの射撃の実力はジャンをも超えていた。

 セイヤのほうは格闘術の訓練でジャンを相手に腕を上げていった。
 根っからの世話好きなジャンは、積極的にセイヤやリサの面倒を見続けた。
 そして、ジャン自身も軍の協力を得ながら、セイヤたちに先駆けて高度な格闘術や特殊な武器を扱う訓練を受けることになった。
 ルッカー治安局長は特命チームに軍の兵士並みの能力を求めた。

 というわけで、ジャン、セイヤ、リサの3人は、治安部隊の隊の垣根をとっぱらった特殊部隊として仮始動していた。

   ・・・・・・・・・・

 一方、ルイはこれからの活動資金のことを考え、投資に手をつけ始めていた。経験豊富で実績がある投資家を数人雇い、リスクを分散させながら、確実に資産を増やしていった。
 そして、トウア国に逃げてきたアリア人との組織つくり、人脈つくりに、よりいっそう励んだ。トウアをシベリカから守るだけではなく、祖国アリアをシベリカから完全独立させたかったからだ。

 現在、アリア国はシベリカの属国と化し、アリア領内ではシベリカ軍が駐留し、まるでシベリカ国の一地方扱いだった。
 多くのシベリカ人もアリアの地に移住してきて、我が物顔で振る舞い、アリア人は隅に追いやられているという。アリア国に主権はないも同然だった。

 こうしたアリア人の窮状を訴えるためにも、機会があればトウアのメディアに出るようにしていた。
 また有名人であり続け、世間の注目と関心を買うことこそが身を守る一番の方法だとも考えていた。ルイの身に万が一のことがあれば、シベリカ国が疑われるだろう。『拉致事件』で失敗したシベリカ工作員は、そう簡単に手が出せないはずである。

  ルイは己の目的を達成するべく模索中であった。
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