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旧作 作者:hayashi

シーズン2 第2章「暗殺」

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任務

前回の話――シベリカからやってくる地方議員マハートの暗殺計画があるということで、ジャン、セイヤ、リサの3人はマハートを護衛するよう、任務を与えられた。
 シベリカ地方議員マハート氏がトウアに到着する日――
 この日は、トウア中心部の繁華街と建造物および地下鉄全駅に爆破予告されている日でもある。マハート氏滞在日と爆破予告実行日はぴったり重なっていた。

 治安部隊のほかの隊員らが地下鉄駅や中心部の繁華街に出動している中、ジャン、セイヤ、リサの3人は、爆破予告があった場所とは全く逆方向にある――マハート氏が滞在する予定のホテルに向かう。

 空港からホテル到着までの間は暗殺される可能性はほぼゼロと考えられた。
 国の表玄関である空港は常に厳重に警備するように、上からお達しされており、トウア国際空港は、常に治安局パトロール隊による警戒態勢が敷かれているからだ。その空港からホテルまで、マハート氏は秘書と2名の護衛に守られながら、防弾が施された車での移動になる。

 ジャンたち3人はホテルに着くと、マハート氏が滞在する部屋とレストランやパーティー会場の位置、非常口を確認し、とりあえずホテル内の見回りを始めた。
 マハート氏が滞在する部屋は4階にあり、そのフロアーにはほかの宿泊客は泊めないよう、前もって治安局からホテル側に要請が入っており、警備を厳重にするよう通達されていた。
 14階建ての高層ホテルは近代的な設備で整えられており、高い吹き抜けのロビーには観葉植物があちこちに飾られ、リッチな気分にさせてくれる。

「ま、暗殺が行われるとすれば、ホテル内部で行われるパーティや食事会よりも、会合や視察に出向く外出時だろうな。
 マハートを窓際に居させるなんてことは護衛がさせないだろうし、ホテル内にいるところを狙撃する可能性は低いだろう」
 ジャンはそう話しながら、セイヤとリサを見やった。

「暗殺方法はやっぱり狙撃なのかな」
 リサの独り言のようなつぶやきに、ジャンはこう答えた。
「そうとは限らないが、遠くから狙えるから可能性としては一番高いんじゃないか。
 それでも護衛がついているから、1発目は防げなくても2発目からは盾となってマハートを守る。暗殺はそう簡単にはいかない」

「ホテル側もそれなりに警備員を置いているけど、相手がよほど挙動不審でない限り、チェックしないでしょうね」
 セイヤも話に入ってきた。

「それにしても4階って中途半端な階ですね。もっと見晴らしの良い高層階に泊まるかと思ったけど」
 さらにリサはジャンに話題を振る。

「エレベーターが使えない場合を考えてのことだろう。4階なら階段を使って移動できる」
「なるほど……」
 リサはジャンの的確な答えに感心しつつも、先輩の服装はいかがなものかと思っていた。

 3人は、中に防弾ベストを身につけているものの私服姿だった。ホテル側からほかの宿泊客を不安にさせないよう、あまりものものしい雰囲気にしないでほしいとお願いされ、客を装っていたのだが……ただでさえ大柄なジャンは目立つというのに、ピンク色のシャツに鮮やかな黄緑色スーツ姿という超ド派手なコーディネイトだった。

 ちなみにリサは、下に防弾ベストを身につけた上から大きめのサイズの薄桃色ブラウスと青のジャケットを着ていた。
 セイヤは深緑色のシャツに紺系の上着で、相変わらず無難にまとめていた。

「先輩、そんなに目立つ格好しちゃっていいんですか。任務に差し支えるんじゃ…」
「これがオレの勝負服だからな。これなら治安局の隊員に見えないだろう。ものものしい雰囲気にするなというホテル側の願いを聞いてやってるんだよ」
「目立つ格好で、いかにも警備してますっていう動きをすれば、敵には分かっちゃいますよ」
「それならそれでいい。警備してますっていうのを相手が知れば、暗殺を踏み止まるかもしれないだろ。いわば抑止力だ」
「へえ…」
 そういう考えもあるのかとリサはまたちょっとジャンを見直した。

 そんなリサをよそにジャンは気楽な感じでつぶやいた。
「ま、もともと暗殺計画なんてないのかもしれないけどな」

 ホテル内を一通り見回った後、3人は支配人室に立ち寄った。客用テーブルに案内され、3人は革張りのソファに並んで浅く腰掛ける。
 挨拶もそこそこに、気になったことを手短に質問をし、向かいに座っている支配人から話を聞いた。

「ほかの宿泊客の手荷物検査はしていないのですか?」
「はい、さすがにそこまでできません。
 ですが、マハート様が滞在される部屋の4階フロアーは貸切となっていますので、ほかのお客さまが出入りすることはございません。
 マハート様お付の護衛の方が夜中も4階フロアを見回り監視するそうですし、当ホテルでも24時間体制で複数の警備員が各所見回るように致します。
 レストランやパーティ会場も手抜かりはございません。マハート様に接する従業員も当ホテルに長年仕えてきた者たちで、身元も保証致します」

 支配人から警備体制を聞いたジャンは、隣のセイヤとリサを見やった。
「これなら大丈夫じゃないか。外国の地方議員クラスにしちゃあ、相当な厳重警備体制だ。
 マハート氏には2人の護衛が常時はりつくし、ホテル内では狙撃は無理だ。
 あと考えられるのは毒殺くらいしかないが、料理人や接待係の身元もちゃんとしているようだし、厨房もレストランもパーティ会場も監視カメラが死角がないように設置されているし、マハート氏が口にするものも、ちゃんとチェックするそうだ。
 ま、オレらは明日のマハート氏の出先での警護に備えた方が良いかもな」

 ジャンはこれで話を終わらせようとしたが、セイヤが「私からも確認しておきたいことがあるんですが」と待ったをかけた。
「セイヤ、まだ気になることがあるのか?」
「はい」

   ・・・・・・・・・・・・

 ホテル支配人室から出ると、ジャンたちは今夜泊まる自分達の部屋へ一旦戻った。
 何かあればすぐにマハート氏のところへ駆けつけられるように、部屋は4階フロアーのマハート氏の隣にとり、夜はそこで仮眠をとりながら待機する。
 マハート氏の部屋は、東側と西側にある2つの非常階段口から、ちょうど真ん中あたりに位置し、エレベータからは割と近くだった。
 ジャンたちは不審物がないか、再度、マハート氏の部屋と4階フロアーを入念にチェックした。

 それからまもなく――マハート氏と秘書とその護衛の者たちがホテルに到着した。
 マハート氏は現在32歳、シベリカの若手地方議員である。端正な容姿をしており、知的な雰囲気を醸し出していた。たどたどしいトウア語でジャンたちに「よろしくお願いします」と挨拶をしてくれた。
 ちなみにマハート氏の秘書と護衛はトウア語に堪能で、ジャンたちとの意思疎通に不自由はなさそうだった。

「マハートさんってなかなか素敵な人だね」
 リサがセイヤに耳打ちした。

 だが、セイヤにしてみれば面白くなかった。リサがほかの男を褒めるのが。しかもそれが『いい男』の部類に入るとなると。
 ……オレってけっこう器が小さいかも……と思いつつ、ヤキモチをやいてしまうのであった。

 その夜、ジャンたちはマハート氏の護衛と、ホテルで行われたパーティで警護をこなした後、明日の予定の確認と警備に関する詳細な打ち合わせを行い、もう一度、4階フロアーに不審物がないかチェックしてまわり、その日の仕事を終えた。
 4階フロアは引き続き、護衛らが交代で見回り、夜中も監視するというので、ジャンたちは自分たちの部屋に戻り、仮眠をとることにした。

「けっこう疲れたな。あと2日間の辛抱だ」
 ジャンは上着こそ脱いだが、防弾ベストは身につけたまま簡易ベッドに寝転んだ。
 もう夜中1時半を過ぎていた。朝は5時起きの予定だ。

「予告されていた爆破の件は今のところ大丈夫だったみたいですね」
 セイヤもベッドへ横になる。
「爆破予告の件も、あと2日間無事だったら『とりあえず良かった』ってことになるのかな」
 リサは、セイヤの言葉に反応するようにひとりごちた。

「ま、こっちはマハート護衛の任務に励むしかない。もう休もうぜ。マハート側の護衛が交代で夜中もずっと警備してくれるから任せよう。何かあれば連絡くることになってるし……」
 そう言ったと思ったら、ジャンはもうイビキをかいていた。

「早…」
 ベッドに腰掛けたリサは半分呆れたようにジャンを見やった。
「これも一種の才能だよな。オレらも早く休もう」
 セイヤが声をかけてきた。
「うん……」
 リサはそう返事をしたものの、爆破の件を話題にしてしまった時、あの地下鉄中央駅爆破事件で損傷の激しい遺体が並べられた光景が思い起こされ、眠気が吹っ飛んでしまった。
 防弾ベストも身につけたままだったので、なかなか寝付けなかった。


 それから、しばらく時間が経ち――

 ――突然、ドーンっという地響きのような音に3人は飛び起きた。さらに、あちこちで同じような音が鳴り響き、悲鳴も聞こえてきた。
 3人はすぐに装備を整え、銃を手にした。

「何が起きた?」
 ジャンの問いにセイヤは答えるかのようにつぶやいた。
「なるほど、爆破騒ぎを起こして暗殺か。逃げ惑う客たちにまぎれこんでしまえば逃走も容易くなる」
「ルイの言ってたことは本当だったんだね」
 リサがセイヤのつぶやきに反応した。
「ああ、ルイの考え通り、あっちの爆破予告は陽動だった。本命はこっちだ」
「治安部隊のほとんどは爆破予告のほうに取られているから、こっちは手薄もいいところだもんね」

「何だよ、お前ら……ルイって誰? つうか暗殺の件、お前ら、わりと確信していたんだな」
 ジャンはワケが分からないなりに今のこの状況を把握した。暗殺計画は本当だった。そしてついに敵が動いた、と。
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