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旧作 作者:hayashi

シーズン1 第3章「出動」

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銃撃戦

挿絵(By みてみん)
 特戦部隊突入班が、犯人らが立てこもっている倉庫室に突入する際、煙幕が張られた。
 今、室内は白い靄で何も見えない。
 突入班の隊員らは身を伏せつつ移動し、人質の救出に向かう。

 そこへ何発もの乾いた発砲音が重なった。隊員らに向かって犯人側から銃撃が続けられたので、やむなく隊員らは応戦する。

「やめてくれ」――シベリカ語が聞こえた。
 もしかしてリーダーだけが隊員らに銃撃を加え、わざと銃撃戦に持ち込もうとし、ほかのシベリカ人労働者らはそれを止めようとしているのでは、と推測できた。

 ――あのリーダーに銃撃戦を仕組まれた?
 ――そして、シベリカ人労働者らもリーダーに騙されていた?
 ――でも、なぜだ? リーダーは一体、何が目的だ?
 セイヤの疑問は大きく膨らむ。

 その時、大きな爆発音がして何かが崩れる音がした。
 煙幕のせいで、天井裏の通気口にいるジャンとセイヤは何も見えなかった。今考えれば、天井の通気口からリーダーと思われる犯人の動きを観察し、リーダーのみターゲットにするよう突入班の隊員らに指示する方法もあったが、これではそれもできない。

「クソ……突入班に煙幕を張らせるべきではなかった。全て後手後手にまわってる」
 ジャンは頭をかきむしった。

 壁を爆破したのか?――セイヤは爆発音がしたほうを見据えた。
 やがて煙幕が薄くなる。
 思ったとおり、廊下に通じる壁に大きな穴が開いており、その時にはもう、犯人側からの銃撃は止んでいた。

 犯人が逃げた?――ジャンとセイヤは焦ったが、犯人らの姿があちこちで確認できた。
 先ほどの銃撃戦で倒れている犯人もいたが、残りは銃を手放し、両手を上げて膝をつき、投降の意思を示していた。

 突入した隊員らは人質の無事を確認し、犯人らの怪我の具合を見ながら身体を拘束していった。2名が重傷を負い、1名は死亡していた。しかし、犯人は14名しか確認できなかった。

 ――あのリーダー格の犯人がいない。逃げられた――
 セイヤはすぐにファン隊長と各隊員らに知らせる。

 と同時に、廊下のほうから何発か銃声がした。別場所で待機していた隊員と、あのリーダー格の犯人が接触したのだろうか――そう思った時、セイヤは青ざめた。
 ――リサは今、どうしている?

   ・・・

 銃声が聞こえ、何かが倒れた音がした。特戦部隊の隊員らは全員、防弾ベストを着用しているが、撃たれれば命は無事でも、着弾の衝撃で気絶する。

 それからまもなく、何者かが走ってくる足音が近づいてきた。
 どうやら犯人を足止めできず、撃たれたのは隊員の方だったようだ。『犯人を一人逃した』という知らせを受けていたリサは銃を構える。

 ――ここを通らなければ外に出られない。犯人は必ずここに来る――

 廊下の向こうから人影が見えた。目出し帽を被った犯人だ。
 が、すでに犯人も銃口をリサに向けていた。
 リサはとっさに横に飛び、壁に身を隠す。

 足音が近づいてくる。リサは身を潜ませながら、再び銃を構えた。
 人影を確認したが、犯人の発砲が早かった。威嚇の発砲だったのだろう。当たりはなかったが、リサは思わず身を縮ませてしまった。筋肉が硬直し、動きが鈍る。

 ――手馴れている……これは、ただの外国人労働者ではない?――
 リサのこめかみから冷や汗が流れる。

 その間に、犯人は外へ通じる階段を走り抜けた。
 今度こそとリサは追いかけ、犯人を狙う。
 その時『殺せば、一生、重い十字架を背負うことになりますよ』というサギー先生の言葉が頭をよぎる。一瞬、ためらいの気持ちがリサを支配する。発砲したが、犯人には当たらなかった。

 それからもリサは、犯人を追いかけては発砲したが、やはり外してしまった。
 犯人を止めるために足を狙っていたのだが、なかなか当たらない。犯人も命中させじとジグザグに動きながら走っていた。

「あれだけ訓練したのに」
 リサは焦った。仕方なく、的が大きい犯人の胴体部分を狙う。
 しかし、またもや――
『あなたは血に染まった手で、ご飯を食べることができますか?』
 サギーの言葉がリサを縛る。

 ――いえ、どんなことをしてでも、私は兄さんの代わりに犯人を捕まえなければ――
 リサは撃つ。
 でも当たらない。どうしても当たらない。焦りが冷静さを奪う。

 その後も、威嚇にもなると何発も発砲したが、犯人の足を止められなかった。銃を構える度に足を止めるリサと犯人の距離は開く一方だ。

 ――逃がさない――
 焦燥感に駆られながらリサは犯人を追う。

 途中、ファン隊長に指示を仰ごうと思ったが、やめた。きっと隊長は待機を命じるだけで、ほかの隊員を動かすだろう。
 リサは通信機を完全に切ってしまった。これでファン隊長から横槍が入ることもない。違反にはなるが、あとで「知らないうちに切れていた」と言い訳すればいい。

 犯人は地上の駐車場に出ていた。
 そこにも防寒着を着込んだ2名の隊員が待機していたが、犯人に発砲され、隊員らは身を伏せるしかなかった。

 駐車場には数台のスノーモビルが並んでいる。犯人はその中の1台に乗り込み、懐からキーを取り出していた。ほかのスノーモビルは発電所職員用のものだが、予め1台だけ逃走用に用意してあったのだろう。

 治安部隊は、犯人らが乗ってきたと思われる3台のバンについては確保し調べていたが、駐車場に並んでいたスノーモビルまでチェックしていなかった。発電所職員用のものとして見逃していた。

 犯人が発砲を続けたため、駐車場に配置されていた隊員は身を伏せたまま何もできない。そもそも単なる外国人労働者が、銃撃戦でプロの特戦部隊の隊員らを蹴散らし、外に出てくるなど想定外であった。治安部隊側は完全に油断していたのだ。

 犯人を追いかけてきたリサは、ちょうど犯人の後ろに位置していた。「今度こそ」と狙いを定め、引き金を引く。
 しかしもう弾切れだった。

 犯人のスノーモビルにエンジンがかかる。
 弾を込める時間はない。リサは犯人に向かって走った。発電所職員用の他のスノーモビルも並んでいたが、キーがなければ動かせない。

  ――決して逃がさない――
 思わず犯人のスノーモビルの後ろ側に手をかける。犯人はハンドルを握っているので何もできない。
 スノーモビルが走り出す。と同時にリサは後ろに乗り込み、そのまましがみついた。

 リサが一緒に乗り込んでしまったため、駐車場に配置されていた隊員らは犯人に発砲することができず見送るしかなかった。

 駐車場を出たスノーモビルは走り去り、あっという間に見えなくなった。
 ――時は夜深く、外は暗闇に包まれ、猛吹雪だった。
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