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旧作 作者:hayashi

シーズン4 第3章「黒い政界」

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黒い仮説

 クジョウ首相の第一秘書官マオー氏の孫ダイへの襲撃未遂事件後。
 セイヤが入院してしまったので、ジャンとリサのほか、ダイの警護にはグレドが加わった。ゴンザレ、アザーレ、フィオはそのままヤハー氏の孫に張り付き、特命チームは任務続行中だった。

 その襲撃事件から4日後――選挙まで残り10日という今日、トウア公共放送局第一スタジオで党首討論会が生放送で行われていた。横長テーブルに並んだクジョウ首相はじめ各党の党首らが、党の選挙公約をアピールし、党としての主張をし、討論に移ろうという時だった。
「ちょっといいですか」
 共和党党首が手を挙げ、そのまま勝手に話を始めた。司会者は止めさせようとしたが、その驚きの内容に思わず口をつぐんでしまった。

 その話の中身はこうだった。
「実は、公に報道はされませんでしたが、4日前にクジョウ首相の第一秘書官マオー氏のお孫さんへの襲撃未遂事件があり、警備に当たっていた治安部隊隊員が負傷したという情報を手に入れました。
 また同じ時期、民主平和党のヤハー氏もお孫さんのことで脅迫を受け、そちらも治安部隊が密かに警備に当たってましたよね。
 クジョウ首相はこのことをご存知でしたか?」

 いきなりの質問にクジョウ首相はうろたえた。
 共和党党首はさらにたたみかける。
「いかがですか、首相」
「どこからそんな情報を……」
「そうお答えするということは、知っていたんですね。選挙前の微妙な時期です。そのような脅迫を受ければマオー氏もヤハー氏も、当然、首相に相談されたことでしょう」
「……」

 応えない首相から視線を逸らさず、共和党党首は追及していく。その顔は舌なめずりしている猫さながらだった。
「こういう情報もあります。これまでに、それぞれ西地区、北地区、東地区で子どもが殺害されましたが、その殺害方法から同一犯の可能性が考えられる事件が3件起きましたね。その被害者とマオー氏とヤハー氏のお孫さんに共通点があることを我々は突き止めてます」

 クジョウ首相は何も言葉を発することなかった。しかし首相の顔は強張り、蒼白で、大量の冷や汗を額ににじませている。その尋常ではない様子をテレビカメラは余すところなく撮っていた。

「その共通点とは何でしょう。首相はご存知ではありませんか?」
「……」

「何なのですか? ぜひ教えてください」
 国民党党首が話に入ってきた。ほかの党首たちも同調するように頷き合う。

「それを公にすることはプライバシーの侵害にあたります」
 やっとクジョウ首相が重い声を上げた。

「いいえ、これは公共性の高い情報であり、公にすべき内容です。すでに3人の子どもが殺害され、脅迫を受けたマオー氏のお孫さんも襲われかけたんですよ。国民も不安でしょう。被害者に共通点があるのであれば広く知らせるべきです。その共通点に当てはまる人は警戒することで、被害に合わずに済むのですから」
 共和党党首は、ほかの党首らに同意を求めるかのように、粘つく視線を流す。

「そうですね。そんな情報があるなら明らかにするべきです」
 野党である党首らも共和党党首に賛同の意を示した。

 しかしクジョウ首相も負けていなかった。
「今、議論すべきことではありません。番組の主旨からも外れてます。この国をどう導くか、外交、防衛、社会保障、経済などテーマに沿って問題点、解決策を議論するべきです」

 即座に共和党党首は反論する。
「いえ、この国とシベリカ国に関連する重要な問題です。子どもの命の問題ですから」

「個人の犯罪の問題です。全く関係ありません」
「いえ、国が法規制をし、違反者に厳しい罰則を設ければ防げる事案です。ですから国の問題です」

 共和党党首とクジョウ首相の応酬が続くものの、ほかの人には何の事だか全く話が見えていない。当然、視聴者にもワケが分からないので、ついに司会者は共和党党首へ質問をした。
「つまり被害者の共通点とは何ですか?」

「それは8年前の同じ時期に、シベリカ国で心臓移植手術を受けていたという点です」
 待ってましたとばかりに、共和党党首は答えた。

「え? 3人の被害者も、そのマオー氏とヤハー氏のお孫さんもシベリカ国で同じ時期に心臓移植を受けていると?」
 ほかの党の党首たちも確認するように訊いてきた。

「そうです。では、なぜシベリカで心臓移植を受けたことで、脅迫されたり、殺されるような恨みを買ったのでしょうか。以前よりシベリカ国で人身売買や臓器売買が行われている疑惑があることをご存じの方、いらっしゃいますよね。週刊誌でも話題になったことがあります。この臓器売買と関係あるのではないでしょうか」
 勝ち誇った顔で共和党党首は他党の党首らを見回し、挑発するようにクジョウ首相のところで視線を止めた。

「証拠もなく憶測で言うべきことではありません。正当に移植を受けている方もたくさんいらっしゃいます」
 クジョウ首相が批判したが――

 共和党党首はここぞとばかりに問い詰め、推測を述べる。
「ならば、なぜシベリカで心臓移植を受けたことが隠されるんです? 後ろめたいから隠すのではないですか?
 クジョウ首相、あなたはそのことを知っているからこそ、この問題が公にならないよう、極秘扱いにしてマオー氏とヤハー氏のお孫さんに警護をつけるように治安局に指示されたのではありませんか? 何しろ大事な選挙前ですからね。マオー氏とヤハー氏がシベリカ国における臓器売買に加担し、シベリカ人の子どもを犠牲にし、孫を助けるために心臓移植手術したことを世間に知られたくなかったのでしょう。マオー氏やヤハー氏個人がやったことだとしても、民主平和党のイメージは相当悪くなります」

「証拠もなく、臓器売買に加担したなどと、でたらめを言わないでください。名誉棄損に当たりますよ」
 クジョウ首相は声を荒げた。

 が、共和党党首はどこ吹く風であった。
「治安部隊警察捜査隊は管轄が違うといえど、現場の捜査官は殺された3人の被害者の共通点を知っていたのでしょうか?
 まさか、この情報も握りつぶされていたのでは? 治安局上層部がそう仕向けていたのではありませんか?
 では、上層部はなぜそのような重要なことを隠そうとしたのでしょう。そうするようにどこかからか圧力がかかったのでしょうか?」

「全て憶測です。公共の電波を使い、誹謗中傷に近いことをされるとは……名誉棄損の上、選挙妨害に当たります」
「誹謗中傷のつもりはありません。疑問に思ったことを質問しただけですよ。ま、そう受け取ったのであれば失礼致しました」

 共和党党首はしれっと言いつつ、頭を下げた。

 が、クジョウ首相と民主平和党のイメージはガタ落ちになったことは誰の目にも明らかだった。ほかの党首も内心ではほくそ笑んでいることだろう。
 クジョウ首相の額は汗にまみれ、その表情は苦々しいものだった。

 そこへ突然、物音と共に「困ります、部外者は立ち入り禁止です」という声が聞こえた。放送局の番組スタッフを振り切り、若い男がスタジオに入ってきた。

「そこまで言うからには共和党党首は情報源を明らかにする必要があると思います。共和党はなぜ3人の被害者とマオー氏およびヤハー氏の孫の共通点を知り得たのですか? 現場の警察捜査隊も知らなかったことです」

 止めようとする番組スタッフを無視し、その若い男――セイヤ・シジョウは共和党党首に鋭い視線を向けた。

 事の一部始終を見守っていたこの番組の現場責任者であるチーフ・ディレクターは迷っていた。こんなことになって、番組はメチャクチャである。しかしながら、面白すぎる展開になってしまった。

 普段であれば硬い話題で面白くもない党首討論会など低視聴率もいいところであるが、今回は高視聴率、間違いなしである。偶然にチャンネルを合わせた人はこのまま見入ってしまうだろう。ネットで話題になり、速報が出て、チャンネルを合わせる人も大勢出てくるだろう。これから視聴率が上がっていくはずだ。

 闖入してきた若い男は両手を上げ、手に何も持っておらず暴力行為を行わないことを体で示していた。少なくとも危険人物ではなさそうだ。

 ディレクターは、番組最高責任者であるプロデューサーに連絡を入れ、経緯を説明し、自身の考えを述べ、続行の許可を得た。闖入者を止めようとしている番組スタッフを引かせ、司会者には静観させるようにとアシスタント・ディレクターに指示し、テレビカメラを闖入者にも向けさせ、マイクで声も拾わせた。

「情報源を教えてください」
 再度、セイヤは問い詰めた。

「君は誰だ。部外者が入ってきていいと思っているのか」
 共和党党首が目を細める。セイヤの立ち位置は暗く、ライトが煌々と照った討論席から見えづらかった。

「あなたは番組のテーマから外れ、今、治安局が捜査中の事件を話題にしてましたね。そして公共性の高い話題だとし、3人の被害者およびマオー氏とヤハー氏の親族のプライバシーに踏み込みました。なので情報源について答えるべきでしょ」
 セイヤはしつこく食いついたが、共和党党首は相手にしようとはしなかった。

「情報源は明かせない。君の質問に答える義務もない。誰か、この部外者を外に連れ出したまえ」
 しかしスタッフは動かなかった。静観するように上から指示が出ていた。

 セイヤは共和党党首を挑発した。
「ならば、あなたが言ったことは、クジョウ首相と民主平和党を貶めるための嘘かもしれませんよね」

「君がどう思おうが自由だ。情報源は明かせない。我々は情報提供者を守る義務がある」
 共和党党首の答えは同じだった。

 が、セイヤにしてみれば、それは想定済みである。
「でも、あなた方に情報を渡した人物自ら、世間に明かしてもいいという場合ならいいですよね」
「……?」

 セイヤは振り向き、扉まで戻り、そこに隠れていた人物を連れ、前に出した。
「こちらはトウア国立中央総合病院の心臓外科部長サマー医師です」

   ・・・・・・・・・・

 ――党首討論会生放送4日前のことだった。

 例の少女に横っ腹を刺されて、トウア国立中央総合病院に運ばれたセイヤは入院中、シベリカでの心臓移植の関連性が疑われる襲撃事件について考えていた。

 そのうち……心臓移植後は免疫抑制剤を服用するため、感染症に罹患しやすく、術後数年過ぎても注意が必要で、心臓移植を受けた子どもたちは、術後もどこかの医師にケアしてもらっていたはずだと思い至った。そこで朝、コッソリ病院を抜け出し、独自調査をすることにした。

 まず自宅に戻り、治安局の制服を着て、身なりを整え――そして、治安局の手帳を持ち、極秘捜査をしているということにして、マオー氏とヤハー氏の家族に「心臓移植前と移植後、どこの病院のどの医師に診てもらっていたのか」を尋ねた。それがトウア国立中央総合病院心臓外科医サマー氏だった。

 ジャンやリサら特命チーム6名はそれぞれ警護対象である孫にひっつき、昼間は学校へ行っていたので、彼らには見つからずに済んだ。

 セイヤが訪ねたマオー氏とヤハー氏のそれぞれの家族の話はこうだった。
 ――彼らの孫が生き延びるには、心臓移植しか道が残されていなかった。しかしトウア国では、子どもの心臓移植件数はほとんどないと言っていいほど少なく、海外で手術を受けることを勧めたのがサマー医師だった。

 子どもの外国人患者を受け入れている海外の心臓移植症例数の説明を受けた時、シベリカ国がダントツであった。シベリカ国の人口は多いといえど、子どもの心臓移植の症例数の多さは他国と較べても異常だった。

 ただ――シベリカ国の臓器売買のウワサは聞いていたし、そんなにゴロゴロと子どもの脳死者が出るはずがないと思いつつも、脳死者からの正当な移植が受けられる可能性もあるのだからということで、シベリカ国での移植手術を希望し、その後のケアもサマー医師が世話をするということで、サマーに全て任せたという。

 こうしてマオー氏とヤハー氏の孫が移植前も移植後も同じ医師に世話になっていたことを知ったセイヤは、同じ共通点を持つ殺害された3件の被害者も同様だと推測した。このサマー医師が心臓移植を行うシベリカの病院の仲介窓口になっていたのだろう。

 とにかく、3件の被害者もサマー医師と関わりがあったかどうか確かめなければならない。
 すでに午後2時を過ぎていたが、セイヤはそのまま3件の被害者遺族のもとへ向かうことにした。それぞれ西地区、北地区、東地区と離れていたので、行くのに時間がかかりそうだったが、近いところから訪ねてみた。

 おかげで西地区と北地区の被害者遺族宅で話を聞くことができ、2件ともサマー医師が関わっていたことを確認した。東地区の被害者遺族も同じくサマー医師が関わっているだろうと確信し、終電に間に合わなくなるので、東地区の被害者遺族宅には行かず、病院に戻ることにした。

 ちなみに交通費は自腹である。傷口が完治してないので、歩くのを避け、電車かタクシーを使った。なので、けっこうな額になってしまったが、捜査なんて命じられていないのだから仕方ない。
 勝手な行動をとったということで、この行為は始末書ものだ。悪くすれば、何らかの処分も食らうだろう。

 それでもセイヤは調べたかった。正義感からというよりも、気になったことは調べないと気が済まないタチだ。疑問が見つかれば、答えを見つけたい。これはもうセイヤの性分だった。

 そんなわけでトウア国立中央病院に帰ったのが深夜になってしまい、担当医師や看護師から、それはもうメチャクチャ叱責を受けた。

 3件の被害者遺族を訪ねようと決めた時に、とりあえず病院に電話をし、ワケあって外出していることと、戻りは夜遅くになること、元気なので心配しないでほしいことを伝えておいたので大丈夫だと思っていたけど、そうは問屋がおろさなかった。
 連絡を入れた時、電話口では慌てた風の看護師が何か言っていたが、「電車が来たから」と携帯電話を切り、その後、じっくり考え事がしたかったので、電源も切り、以後、帰るまでそのままにしてしまった。ちょこちょこ連絡を入れておけばよかったと反省した。

 それにつけても、大変だったのがリサである。
 セイヤが病院から抜け出し、いつまで経っても戻ってこないという連絡は当然リサに行っていた。

 帰りの電車で携帯電話の電源を入れたら、ズラリとリサからの着信が並んでおり、メールの文面では怒りのオーラが漂っていた。

 病院に戻った時、リサは任務中だったが、割り振られた仮眠時間を利用して、夜中だというのに駆けつけてきた。「面会時間過ぎてますから」「ご主人を休ませましょう」と取りなす看護師を無視し、セイヤに怒りまくった。

 セイヤはひたすら平謝りするしかなかった。

 リサがずっと怒り続けているので、遠慮気に「オレのことはもういいから休んだほうがいいぞ」と言ったら、「こんな状態で眠れるわけないでしょ」「どうしてくれるの、お肌もボロボロよ」と火に油を注ぐ結果になった。

 そんなリサを眺めつつ……お肌ボロボロっていうけど、そうでもないぞ、相変わらず白くてピチピチしているぞ、女性ホルモン充実しているんだな、若さってすごいな、と言いたかったが、火に灯油を注ぐ気がして黙っておいた。

 リサの説教は続いた。
「心配かけないでねって昨日言ったばかりじゃない。また同じセリフ言わせる気?」

 それについても、昔のリサのほうがずっと無茶をしでかし、オレに散々心配かけさせたぞ、とセイヤは言いたかったが、火にガソリンを注ぐ気がして黙っておいた。

 いつの間にかリサの目に涙がたまっていた。時折、手で目をぬぐい、泣きながら怒り続けた。
 セイヤは神妙に頭を垂れるしかなかった。

 そして空が白み始めた頃、リサはフラフラになりながら、任務に戻っていった。

「……任務に支障を来さなきゃいいけどな」
 セイヤは心配だったものの――ただ、おそらく当分の間、少女は襲ってこないだろう。
 痛み止めが切れ、傷口が痛んできたが、罰だと思い、そのまま痛みとつきあった。
 リサの怒りを受け止めるのはけっこう疲れたけど、あんなに心配してくれて、ちょっと嬉しくもあった。そんなことを思っているうちに眠ってしまった。

   ・・・・・・・・・・

 日がだいぶ高くなった頃。
 朝食や検温、診察以外の時間は眠り通し、昼になってようやく頭が冴えてきたセイヤは仮説を立てた。

 ――クジョウ首相の第一秘書であるマオー氏、民主平和党の重鎮であったヤハー氏の、それぞれの孫の心臓病について知る立場にあったサマー医師は、民主平和党と敵対関係にある政党の議員またはその関係者にその情報を売った。

 議員やその関係者や親族の情報――その中でも『健康状態・持病』は価値のある情報となる。それを売ったサマー医師は、見返りに今のトウア国立病院での地位を確立したのかもしれない。

 ここで分からないのが……サマー医師はなぜ一般人である3件の子どもの情報まで渡したのか? ということだ。全く関係ない一般人の情報など価値がないだろう。

 またなぜ、その8年前に行われた心臓移植情報が『あの少女』に渡っていたのか?
 まさか、サマー氏とつるんでいた『議員またはその関係者』が、『あの少女』ともつながっていたのか?

 と、その時、セイヤは突然ひらめいた。

 ――そうだ、あの国会襲撃事件だ。少女は国会も襲撃している。そして少女だけが逃走を果たした。協力者がいなければ逃走は絶対に無理だ。

 思考は、ある仮説へと導く。

 もし少女が『議員またはその関係者』と協力関係にあったとしたら、二重スパイだったとしたら……
 その『議員またはその関係者』が国会襲撃工作情報を予め得ていたとしたら……

 セイヤは身震いした。己の立てた仮説の内容の、あまりのえげつなさに。

 ――国会襲撃事件では、どの党の議員が一番多く生き残った? あるいは国会を欠席していた議員は? どの党の議員が一番多く欠席していた?

 少女は何をエサにされたのか……それが8年前のある時期にシベリカ国で心臓移植を受けたトウア人の子どもの情報だったとしたら……

 ちぐはぐだったピースが組み合わさり、ひとつの画が浮かび上がっていく感覚だった。それは、とてつもなく黒く醜悪な画だ。

 ――おそらくあの少女は、臓器売買で犠牲になった子の関係者だ。工作とは関係なく、少女は個人的理由で復讐をしたかった。

 しかし『議員またはその関係者』のほうは、マオー氏とヤハー氏を利用し、クジョウ首相率いる民主平和党のイメージダウンを狙いたかった。だから殺害予告をし、マオー氏とヤハー氏がクジョウ首相に相談させるように仕向け、首相をこの件に関わらせた。当然、クジョウ首相は選挙が終わるまで内密にさせるだろうと見越して。

 そして選挙前に「クジョウ首相がこれらのことを隠していた」と世間に訴える。確かな証拠がなくても、多くの国民に疑惑を持たせることができれば、クジョウ首相と民主平和党に大打撃を与えることができる。大勝すると予想されていた民主平和党は、議席をかなり減らすだろう。政権も奪われるかもしれない。

 マオー氏とヤハー氏の孫の件については……襲撃に失敗した少女が捕まって、いろいろしゃべられては困るだろうから、殺害予告によって警備が厳重となるだろうマオー氏とヤハー氏の孫への襲撃は本当はさせたくなかったはずだ。
 だが、復讐にこだわる少女は言うことを聞かなかったのかもしれない。殺害予告のことを知らなかった可能性すらある。

 そう、少女とその『議員またはその関係者』は直にはつながってはおらず、間を取り持つ仲介者がいるのだろう。少女にも必要最低限の情報しか与えていないはずだ。少女は本当の取引相手が誰かまでは知らない――。

 仲介者は時期を見計らいながら、少女を上手く誘導し、一般人の子どもから襲わせるようにした――。

 ここまで考えて、セイヤは一息ついた。
「まだ分からないこともあるけど、この仮説なら今まで疑問に思っていたことの辻褄がほとんど合う……」

 少女の取引相手は、国会が襲撃されることを知っていて、多くの議員や護衛官を見殺しにした。3人の子どもが襲われることを分かっていて、見殺しにした。
 ……いや、それどころか、殺害実行の協力もした可能性すらある。

 己が描いたグロテスクな画にセイヤは暗澹たる気持ちになった。世の中は思っている以上におぞましく汚いものなのかもしれない。
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