挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
旧作 作者:hayashi

シーズン1 第2章「治安部隊」

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

10/114

おそるべしジャン先輩

挿絵(By みてみん)

 二日後、セイヤとリサは治安局中央地区管轄の特戦部隊に所属する公務員として職務についた。

 出動要請がない時は、パトロール隊の補佐として街の巡回をしたり、警察隊の捜査を手伝ったりするが、それ以外の時間では訓練が続けられていた。

「セイヤ、射撃訓練に行こうぜ」
 同僚のジャン・クローが声をかけてきた。

 ――ジャンは、セイヤより4期上の先輩で、任務の時にはバディを組むセイヤのパートナーである。赤髪で愛嬌のある顔立ちをしていたが、男性ホルモンが過剰に分泌されているのではと思わせる『大いなるマッチョ』であった。制服を着崩し、たくましい胸板を見せつけるがごとくシャツのボタンを2つほど外し、ちょっと暑苦しいオーラを放つ。
 特戦部隊の隊員は皆、そこそこにマッチョだが、ジャンはその中においても『マッチョの中のマッチョ』『スーパーマッチョ』だ。そんなマッチョが集う特戦部隊室はむさくるしいことこの上なかった。

 特戦部隊は二人一組で動くことが多く、ほとんどの隊員にはパートナーが決められている。セイヤとしてはリサと組みたかったが、新人同士の組み合わせなどあり得なかった。

 一方、リサには決まったパートナーがいなかった。誰も女のリサと組みたがらず、外回りの仕事の時だけ、先輩たちが持ち回りで適当に組んでくれていた。

「この部隊では、女性隊員は初めてでな。皆、どう扱ったらいいのか分からないのだろう。私の命令でパートナーをつけられないこともないが、周囲の者も君自身も、お互いに慣れることを優先したい。まずは様子見をさせてくれ」
 直属の上官となる特戦部隊ファン隊長はリサにそう説明した。

 マッチョたちを率いるファンも同じくマッチョで、濃ゆい顔をした食えない感じのおじさんだった。そんな隊長はリサを慰めようとしたのか、こう評してくれた。
「私は、訓練生時代からキミの射撃の素質を買っていた。キミも特戦部隊を希望していると聞いて、人事に推薦し、キミを採ることにしたのだ」

 リサはパートナーがいてもいなくてもどちらでも良かった。かえって決まったパートナーがいないほうが煩わせられることもなく、ラッキーだとさえ思っていた。

「私の売りは射撃か……もっと腕を磨かなきゃ」
 書類仕事が片づいたので、さっそく射撃場に行ってみたリサだったが――セイヤとジャンが先に来ていたので、そのまま踵を返した。
 あれからずっと――リサはセイヤを避けていた。

「あれ、あのコ、うちのリサじゃないか」
 ジャンが口を開いた。射撃の準備をしていたセイヤは振り返ってみたが、もうリサの姿は見えなかった。

「射撃訓練に来たみたいだけど、オレたちの姿を見たら帰っちゃったぜ。感じ悪いよな~」
 ジャンはセイヤに同意を求めたが、セイヤはどう反応していいか分からず、ジャンから視線を逸らした。本当ならば、ここは適当に話を合わせて、詮索されないようにするのが一番よかったが……できなかった。

「ん? お前、ひょっとしてリサのこと気に入ってる?」
 案の定、ジャンは食いついてきた。
「いえ、そんなんじゃ」
「そういやあ~、同期だよな~、お前とリサ」
「……」
「もしかしてリサと何かあったのか?」
 詮索モードに入ったジャンは射撃訓練もそこそこに、しつこくしつこくしつこくセイヤを問い詰める。
「オレたち、パートナーだろ。話せよ。秘密は守るからさ。それとも、オレを信用できないのか?」
 と迫り、ついには――
「話さないなら、ほかのヤツらに、お前とリサが何かあったらしいことを尾ひれをつけて言いふらす」
 と脅してきた。
 ああ~何でこんなことに、と思いつつ、セイヤは仕方なく――
「内緒ですからね。先輩を信用して話すんですからね」
 とリサとのことをかいつまんで話した。
 セイヤの話を聞いたジャンは顎に手をやり「ほお~」とニタニタしていた。
「このことは、ほかの人にしゃべらないでくださいね」
 セイヤは念を押す。
 が、それには応えず、ジャンは話を進めた。
「で、どうするよ?」
「はい?」
「リサはお前に惚れているから、ああいう態度になるんだろうよ。ここはひとつ、男のお前が迫ってやれよ」
「え、どうしてそういうことになるんですか?」
「オレの経験上では、そういう判断になる」
「リサはオレを避けているんですよ?」
「お前のことが気になるから、わざと避けているんだろ」
「え……」
「行け。唇のひとつくらい奪ってこい。大丈夫だ。このジャンが保証するぜ」
「え……」
「万が一、撃沈した時は、このジャンがお前の骨を拾ってやろう」
「撃沈って……保証してくれるんじゃないんですか?」
「お前、恋に保証を求めるなよ」
「さっきと言ってることが違うじゃないですか」
「言葉の綾というやつだ。細かいことは気にするな」
「撃沈するくらいなら、今のままでいいです」
「なさけないヤツだな。ここは特戦部隊だぞ」
「関係ないでしょ」
「い~や、ここは女に飢えたヤロウどもの巣窟だぜ。さっさとモノにしないと、ほかのヤツにとられるぞ。それでもいいのか?」
「……」
 何も応えないセイヤに、ジャンはズバリと訊く。
「リサに惚れているんだろ?」
「いえ……その……」
 セイヤは口ごもる。
 そんなセイヤにイライラするかのようにジャンは問い詰める。
「なぜ、ごまかそうとする? さっきから『リサが好きだ』という反応をしておいて」
「……」
 セイヤは完全に固まってしまった。
 ジャンはため息をつきながらも、ニヤリと笑う。惚れた腫れたの類の話が大好きのようだ。
「仕方ない。ここはひとつ、先輩としてお前の恋愛相談にのってやろう」
「いえ、けっこうです」
「遠慮は無用だ」
「いえ、遠慮してません」
「このジャンに任せろ。オクテなお前の面倒をとことん見てやるぜ」
「先輩、聞いてます?」
「任せてくれないなら、ほかのヤツに話す」
「約束、破る気ですか」
「リサをモノにできたらオレに酒でも奢れ。撃沈ならオレが奢ってやる。あ、トイレ」

 ジャンは言いたいことだけ言って、さっさとトイレに行ってしまった。
 論戦には少々自信があったセイヤだが、ジャンには全く論理が通じないことを知って、頭を抱えた。
 ――ジャン先輩、おそるべし――
挿絵(By みてみん)
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ