ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  tea break Ⅱ 作者:龍門 
少し中途半端ですが、幕引きです。
【 最後 】



 変化は無かった。
 喜央京助の存在は見事に消えていた。

 だけど、一人だけ変わっていた。

 咲隼秀里だ。

 見た時に吃驚した。目元を腫らし、暗い顔をしていた。
 まるで自分の世界が終わった様な・・・。

「咲隼さん」

 私は思わず話しかけていた。見ていられなかった。偽善と言われても言い返せない。
それと、彼女の変化の原因を知っている私は、同情に似た感情を抱いていた。

「何?」

 声に生気は感じられない。抜けがらの様に、淀んだ瞳は私を捉えてはなかった。
 それ程にこの人は、喜央京助を想っていたのだろう。

「どうしたの?元気が無いみたいだけど」

 その理由は知っているが、尋ねる。

「どうして?」

 どうしてと言われても。何て言えば。

「いや、そう見えたから・・・」

「そう。なら大丈夫だから・・・」

 そう言って咲隼秀里は私から去って行った。
 私は少し心配になり、咲隼秀里の後を追いかけた。

 咲隼秀里は四階まで行き、ある扉の前で止まった。

 あそこは・・・。

 咲隼秀里はその扉のドアノブを回す。
―――だが。

ガチャ、ガチャ、ガチャ―――・・・。

 屋上への扉を開けようとするが、鍵がかかっており、開かない。
 前までは行けたのだろう。

 咲隼秀里はその場に崩れ落ちた。

「――――どうして、どうして・・・・・」

 繰り返す言葉。自分に言い聞かす様に呟く。

 心が痛い。
 何故、彼女はこんなに苦しんでいるのだろうか。どうして彼女は涙を流さないといけないのか。どうして・・・。

 私は、いつのまにか泣いていた。でも、私はその涙を拭わず、咲隼秀里を見ていた。

 差し伸べる手は、今の私にはない。
 彼女が・・・咲隼秀里が求めている人は、喜央京助一人なのだから。

 私は唇を噛んだ。口の中に鉄の味が広がる。
 悔しかった。無力な自分が。どうして、私は何もできないのだろう?

 どうして、私はこんなにも悲しいのだろう?

 聞こえる泣き声を聞く事しかできない自分に、最低と言う言葉を贈ろう。










 放課後。私は屋上への扉の前に立っていた。

 確信はなかった。でも、無理とは思わなかった。
 あの白変態が言った。台風の目と言う言葉。

 まだ、終わって無い筈だ。この・・・退屈凌ぎは。


 私はドアノブに手をかけた。









「気付くのが早過ぎるな」

 一人の男と、女が屋上に居た。

「頭は良い方だと思っているけど?」

 私は作り笑顔で答える。

「そうか・・・・やはり誤算だな。君を選んだのは」

 そう言って、白変態は笑った。作り笑顔で。

「そちらの女の人は?」

 私はもう一人の女性に目を向けた。
 私と目が合うと、女性はニコリと笑う。作り笑顔で。

「俺の助手みたいな奴だ」

 白変態は言う。
 まぁ~それ程興味は無い。

 私は白変態に目線を変えた。
 もう、この場に笑顔は無い。

「で、どうだった?この退屈凌ぎは」

「最低ね」

「それは俺に言う言葉じゃないな」

「えぇー、自分によ」

 簡単な事だった。
 私はずっと巻き込まれたと思っていた。咲隼秀里を理解した?違う。

 そう、簡単だ。

 私は巻き込まれたのではない。ずっとこの変化の中心にいた。

 私も、咲隼秀里と同じく望んだ。

 私が望んだのは――・・・。

「私が望んだのは、変わる事。私が変わるのではなく、他人が変わる事を望んだ」

 そう、私は周りに合わせて生きて行く事を、心の中で否定していたのだ。
私が変わるんじゃなく、周りが変われば良いのだと。

 そこで、私が矛先を向けたのは・・・咲隼秀里だった。

 私は勘違いしていた。彼女は何も苦労しないで生きてきたのだと。

 私は巻き込まれた訳ではない。私がこの茶番の中心だった。

 白変態が言う様に、本当は喜央京助が消えるのは咲隼秀里が卒業した時だった。

 でも、私の望みがそれを邪魔した。
 私は、心の中で他人の不幸を望んでいたのだ。

「私は・・・・私は・・・」

 涙が流れていた。
 全ては私が。私の望みが、全てを狂わせ、喜央京助を消し。咲隼秀里を壊した。

 喜央京助が言った事は外れていた。
 白変態は考えていたのだ。この予想外の真実を。

「優しいね・・・」

 私は白変態を見て、言った。
 白変態は悲しそうな目をしていた。

 彼は、途中で全てに気付き、私に接触してのだ。
 そして、彼はワザとヒール役になった。

 屋上のアレは、演技だったのだ。

「まさか気付くとはな」

 白変態は苦笑しながら言った。

「考えれば簡単だった。だってアンタがヒント言いまくるから」

「それで解るのが可笑しいんだよ」

 また苦笑しながら言う。

「私のせいで・・・彼女は・・」

 ダメだ・・。また涙が出る。

「これで、君の世界の変化が終わった」

 終わった・・。傷跡を残して。

「だが、また始めてもらう」

 白変態が言う。私は白変態を見た。
 始める?何を。まさかこの茶番を?

「勘違いするな。今回は君に変えて貰う」

 意味が良く解らず、私は間抜けな顔した。

「喜央京助の存在を復活させるには、時間が居る。その間、君には咲隼秀里の支えになって貰う」

 白変態が言った。私は、驚きの顔をする。

「えっ?存在を復活なんて出来るの?」

「かなり難しいが、やるしかないだろ。長くても二年だ」

 良かった。良かった。
 私はその場に崩れ落ちた。

「だが」

 白変態が低いトーンで言う。
 私は顔を上げ、白変態の顔を見る。

「人一人の存在を復活させるには、人一人の存在を消さないといけない」

 えっ・・。

「君が決めろ。喜央京助を存在させ、自分が消えるか。自分の為に、咲隼秀里を切り捨てるか」

 残酷な選択だった。自分か他人を・・・。

 他人の不幸を望んだ私に、他人の為に死ねと言うのだ。

「これは・・・罰?」
 私は空を見ながら呟いた。

「ああ」

 そっか・・・そうだよね。私は最低な事をしたんだ。これ位の罪を背負わないと、ダメだよね。

「そう・・・だよね・・・これは・・罰・・なんだよ・・・ね」

 そうか、私は・・・死ぬんだ・・・。
 直ぐではないけれど、死ぬ。いつかは人は死ぬけれど、それはいつかは解らない。でも、私は・・・・少なくとも二年の間に死ぬ。

「俺は君に優しい言葉はかけられない。君がどうするか決めろ」

――――・・・・。

「私は―――――」














CDショップ

 後ろから、秀と喜央京助の姿を見ていた。

 あの時屋上で問われた、生きるか死ぬかの選択。
 私は、死ぬ事を選んだ。

 生きたとしても、きっと自ら私は命を絶っただろう。
 そう考えると、私は楽な選択をしたのかもしれない。

 秀と友達になるのは、かなり手こずった。
 だからしつこく話かけ、しつこく遊んだ。

 ある日、秀に名前で呼ばれた時、凄く嬉しかった。

 同じ大学に行こうと言われた時、凄く嬉しかった。

 その度に、死にたくないと願った。
 泣き叫んで、願った。

 その度に、秀の笑顔が浮かんだ。

 私はその笑顔を二度も消したくなかった。

 これは罪だと言い聞かせた。

 そして、今に至る。

「良かったね・・・秀」

 後ろから秀の姿を見る。

「少し時間がかかった」

 横に白変態が立っている。
 私は秀を見たまま話す。

「いや、早い方よ」

「そうか?」

 そうよ。

「ねぇ、最後のお願い」

「何だ?」

「秀から私の記憶を消して」

 私の願いが以外だったのか。白変態が黙った。

「良いのか?」

「うん。だって、消えた人間の記憶なんて・・・悲しみしか残らないじゃない」

 本当は覚えていて欲しい。けれど、その事によって秀が傷つくのは嫌だった。
 親友だから・・・最初で最後の・・。

「・・・・解った」

 白変態は少し考え、承諾してくれた。

「・・・・ありがと」

 私は涙を流していた。静かに。ゆっくりと。

「さてと、どっかで茶でも飲んで行くか?」

 不意に白変態が私に聞いた。

「お茶?」

「あぁ。疲れたからな。ティーブレイク」

「午後の一息?柄じゃないでしょ?」

 馬鹿にするように言うと、白変態は私の顔見て言う。

「俺じゃなくて君だよ」

「私?」

「もう。終わったから・・・」

 悲しそうに言う。そうか・・・終わったんだ。
 終りと聞いても、不思議と涙は出なかった。

「そう・・・・ね」

 私と白変態はゆっくりと歩き出し、CDショップを出る。振り返らない。辛いから。

「ねぇ、どこに行くの?」

「茶が美味しい所」

「それがどこよ?てか、あの女の人にバレたら怒られるんじゃ?」

「いやいや、アイツもう結婚してるよ」

「嘘ッ!?」

「ホントだよ」

「あらら。まぁ、綺麗な人だもんね」

「そうだな」

「それと、喜央京助が消える最後に言った一言って何?」

「ん?あぁ~あれか・・・いや、教えない」

「何で?教えてよ!」

「・・・・下手くそって」

「下手くそ?・・・もしかして喜央京助も演技してたの?」

「打ち合わせ通りにな」

「最悪・・・私完全に騙された」

「騙される――――」
「騙すな――――」

 少しずつ、二人の姿が消えていく。霧の様に。煙の様に。
 それでも、二人の声は聴こえる。笑う明るい声が・・・。
少し焦り過ぎたのかもしれません。
本当は後二話ぐらい続く筈だったのですが・・。

しかも最後少し悲しい感じに。
でもバットエンドではないです。

えぇー少し裏話を・・・・。

終わり方はⅠ同様悩みました。それと凛子の世界の変化の理由です。
最初は凛子もハッピーエンドな感じにしよう思ったのですが、それではあまいりにもだったので、罰という形で凛子が消えるみたいな感じにしました。

無条件で消えた人間が生き返るなんて、そんな上手い話はないですよ。
それに見合った代償がないと。

凛子の記憶は、咲隼にはもうありません。これも背負わそうと思ったんですが、咲隼は十分辛い思いをしているので、背負わせない方向で。

それでも内容的に結構無理やりな部分が多々ありますね。
これはもう、作者の力不足ですね。

でも、納得はしてます。
誰かの幸せは、誰かの不幸の上になっていると言うのを結構前面に押し出した作品になってるのではと思います。
そして、他人の為に消えれると言う強さも表わせたんではと思ってます。

それと、書いてない部分。咲隼と凛子が友達になるまでの部分とか。
あれはぶっちゃけると長くなると言う理由と、もしその部分を書いてしまうと、咲隼が悪い子になってしまうからです。

作者の中では咲隼は被害者ですから。


これで終わりますが、読んでくれた方。感想お待ちしています。
それでは、また違う作品で・・・・。

評価
ポイントを選んで「評価する」ボタンを押してください。

▼この作品の書き方はどうでしたか?(文法・文章評価)
1pt 2pt 3pt 4pt 5pt
▼物語(ストーリー)はどうでしたか?満足しましたか?(ストーリー評価)
1pt 2pt 3pt 4pt 5pt
  ※評価するにはログインしてください。
ついったーで読了宣言!
ついったー
― 感想を書く ―
⇒感想一覧を見る
※感想を書く場合はログインしてください。
▼良い点
▼悪い点
▼一言

1項目の入力から送信できます。
感想を書く場合の注意事項を必ずお読みください。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。