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幼なじみは魔法使い!?
作:須賀 隆太郎



VOL.28:番外編-バーナーナー!!-(後編)


「それで、どうするんです? あんな伝説級の怪物とまともにやりあっても、まず勝ち目はないと思うんですけど」
 作戦会議に入ったものの、沈黙が続く一同。それを破ったのは意外にも峻佑だった。
「この事態を解決するためにはアレを再び封印するしかないわ。で、喚び出したのがちひろちゃんである以上、その封印もちひろちゃんにしかできない。ちひろちゃん、封印の魔法がその魔法書のどこかにあるはず。それであのバナナを封印するのよ」
 英里がようやく口を開き、作戦を周囲に伝えた、そのとき。
「バーナーナァァァ!」
 警官1名を飲み込んだ後、しばらく大人しくしていたバナナちゃんが急に暴れ出し、バナナレーザー08をぶっ放した。
 放たれたレーザーは校舎を貫通、校舎は黄色い光に包まれ爆発し、無惨にも崩壊、瓦礫の山と化した。と、砕けた瓦礫がいくつか峻佑たちの方へ飛んできた。
「うおわぁっ!」
「峻佑くん、危ないっ!」
 そのうちのひとつが峻佑に当たりそうになり、峻佑は情けなくも悲鳴を上げた。だが、瓦礫は彼に当たることなく弾かれ、地面に落ちた。
「助かった……ちひろ、みちる、ありがとな」
 峻佑に当たる直前に、ちひろたちが防御障壁を張ってくれたらしく、彼の前にはうっすら光る壁があった。
「峻佑くん、大丈夫だった? ここは危ないから離れていたほうがいいかも」
 みちるが神妙な表情で話した。
「いや、オレはここに残る。さっきヤツに飲み込まれた警察官は逃げようとして離れていくときにあの長い舌に捕まった。うかつに逃げだそうとすればオレもあの舌に捕まるかもしれない。だからここに残るよ」
 峻佑もまた真剣な表情でみちるたちに告げる。
「でも……」
「そうね。あんな怪物を前にしてうかつな行動はしないほうがいいわ」
 なおも渋るみちるの言葉を遮ったのは、英里だった。
「叔母さん……わかりました。峻佑くんは私が守る!」
 みちるがグッと拳を握りしめて決意した、そのとき。
「あった! これだわ!」
 分厚い魔法書から封印の魔法を探していたちひろが声をあげた。
「ちひろちゃん、バナナマスター08は今は何もしてないわ。今のうちに封印を!」
 英里がちひろを促し、ちひろは頷くと、魔法書を見ながら詠唱を始めた。
「С*ωЖРЕИШУП∋……」
 峻佑にはなんと発音してるのかわからないが、ちひろが言葉を紡ぐたび、風もないのに彼女の短い髪が舞い上がり、それに合わせるように彼女の身体から幾何学模様の輪っかが出現し、バナナマスター08に絡みついていく。
 ――だが、そこまでだった。
「バーナーナー!」
 バナナちゃんの叫び声ひとつで幾何学模様の輪っかは粉々に弾け飛び、封印の魔法は失敗に終わった。
「な、なんで……?」
 上手く行くと思われた封印の魔法が失敗し、全員が呆然とする中、ちひろは魔法書を調べ直していた。そして、
「なるほど、失敗の理由がわかったわ」
 魔法書をパタンと閉じてつぶやいた。
「この封印魔法は生物であればなんでも封印することができる便利な術みたいなんだけど、効果を発動させるためには、その対象をある程度弱らせてからでないとダメみたいなの」
 ちひろがそこまで話したところで、
「じゃあ、あのバナナを封印するには結局戦って弱らせないとダメってことなの?」
 みちるが驚いた顔でちひろにたずねた。
「そういうことになるわね。だから、みちると叔母さんでどうにかアレを弱らせられないかしら? あたしはさっきの封印魔法をいつでも発動できるように準備するから。はい、これ持っていって」
 ちひろはみちると英里にバナナちゃんの相手を頼み、みちるに魔法書を手渡した。
「さあ、またバナナちゃんが暴れ出す前に、早く!」
 ちひろはみちるたちを送り出すと、ゆっくりと力を溜めるように封印魔法の詠唱を始めた。

「弱らせろって簡単に言うけど、どうすりゃいいのよ……」
 みちるは途方に暮れつつ、魔法書を開いて使えそうな魔法を探し始めた。
「とりあえず、真っ二つにしてみましょう。食らいなさい、“風刃裂波ウインド・ブラスト”!」
 一方の英里は、手に風を呼び起こし、バナナちゃんに向けてカマイタチとして放った。
「バーナーナ―――!」
 あっさり切り裂かれたバナナちゃんは悲痛な叫び声を上げると、二つに分裂して地面に落ちた。
 しかし、次の瞬間。
「バーナーナー!」
 二つに分裂したバナナちゃんは起き上がると、叫び声を上げながら再び合体して元の大きさに戻ってしまった。
「切られたくらいじゃ倒れないか。さすがに伝説級の怪物ね……」
 英里は特に落胆した様子も見せず、次の魔法に移ろうとした。だが、
「ヴゥァァァヌゥァァァヌァァァ―――!!」
 バナナちゃんが突然怒りのうなり声を上げ、英里に向かってバナナレーザー08を放った。
「なんて威力なの……回避できない――」
 英里は最後に何か言ったように見えたが、聞き取れないまま黄色い光に飲み込まれ、光が収まったとき、そこに英里の姿はなかった。
「バーナナナナナナ!」
 バナナちゃんはまるで笑っているかのような声を上げ、
「叔母さ――――ん!」
 ちひろとみちるが同時に叫び、さらにちひろの集中が途切れたことで封印魔法の溜めも消えてしまった。
「榊さん! 総員、榊警部を捜索するんだ!」
「刑事さん、オレも手伝います」
 英里の部下、秋塚は一緒に連れてきた他の警官たち、それと峻佑とともに消えた英里の捜索を始めるのだった。

「私は1人でもアレを弱らせてみせるから、姉さんはまた封印魔法の溜めをしといて。大丈夫、なんとかなるよ! それに、叔母さんがそんな簡単にやられるなんて思えないのよね。きっと上手く逃げのびたわよ」
 みちるは未だ落ち込んでいるちひろを励まし、バナナちゃんを弱らせるための魔法を探し始めた。
「そうね……あたしが引き起こしたことなんだし、きちんと責任取らないとね」
 ちひろも元気を取り戻し、再び封印魔法の溜めを始めた。

「いない……くそっ、やはりさっきの黄色い光で跡形もなく消されてしまったとでも言うのか!?」
 英里を捜索する秋塚たちは、先ほどレーザーが着弾した箇所を探し尽くしたが英里を見つけることはできなかった。
「まだ諦めるには早いですよ。もしかしたら着弾の瞬間の爆発でどこかに吹き飛ばされてる可能性もあるでしょうし」
 落胆し、地面を叩く秋塚に考えうる最後の可能性を告げたのは、峻佑だった。
「そうだな。よし、数人単位で固まって、その辺を探すんだ。くれぐれもバナナを刺激するなよ!」
 秋塚は立ち上がると、部下に指示を出し、自らも峻佑と組んで崩壊し瓦礫の山となっている校舎跡に向かった。

「あった! 対象を傷つけることなくその力を吸い取り、弱らせる魔法! でも、これはバナナちゃんにも効くのかな? 少し宙に浮いてるし……でも、やってみるしかないよね」
 みちるはついにバナナを弱らせるための最も有効そうな魔法を見つけ、詠唱を始めた。
「ИЕгЯШЮРвЗЖ*……」
 先ほどのちひろと同様に、みちるの髪も舞い上がって行く。違うのは、幾何学模様が地面に魔法陣として出現しているところにあった。
 魔法陣はバナナちゃんの真下で輝きを増していくかに思われたが、それ以上の変化は起きなかった。と、そのとき。
《我が末裔よ……》
 魔法書から声が響いてきた。
「その声は……ご先祖さま?」
 みちるが問いかけると、
《そうだ。私はジェン=マノール。我が末裔の危機を救うため、アドバイスを授けに意識だけを飛ばしてきた……よいか、バナナマスター08を封印するにはヤツを弱らせなくてはならぬ。弱らせる方法は間違ってはおらぬが、宙に浮いてる者には効果がない。まずはヤツを地面に着かせないとならぬ。それからじゃ……》
 魔法書を通じて語りかけてきたジェンの言葉はそこで途切れてしまった。
「どうやってあんな大きな怪物を地面に落とせばいいの……?」
 バナナちゃんを見上げて、改めてその巨大さに途方に暮れるみちる。と、そのとき。
「みちるちゃん、私がやるわ」
 そこに現れたのは、バナナちゃんの攻撃で安否不明になっていたはずの英里だった。刑事のスーツはかなりボロボロになり、秋塚警部補と峻佑が肩を支えてようやく立っているといった状態だった。
「叔母さん! 無事だったんですね!」
 みちるが叫んで駆け寄っていく。
「ええ、あのレーザーが直撃する瞬間に防御障壁を張ったんだけど、爆発の衝撃まではガード出来ずに吹き飛ばされて瓦礫に埋まってたの。でも、手は動かせたから、携帯を操作して秋塚くんたちを呼んだわけ」
 英里は事情を説明した。
「そうだったんですか……でも、無事で良かったです。さあ、バナナマスター08を封印してしまいましょう」
 みちるはひとしきり喜んだ後、英里にそう言った。
「ええ、私はバナナマスター08を地面に落とせばいいのね? 任せて。“重力弾グラビティ・バレット)”!」
 英里は軽く頷いて、バナナちゃんに向けて手をかざした。
「バァ〜?」
 バナナちゃんは何かを感じたようだが、それが何かわからずに不思議そうな声を上げていた。
 やがて、バナナちゃんの巨体が重力に負けてゆっくりと地面に着いた。
「みちるちゃん、今よ!」
 英里が叫び、みちるは頷くと、詠唱を再開した。
「ИЕгЯШЮРвЗЖ*……」
 その詠唱によって地面に幾何学模様の魔法陣が出現し、輝きがバナナちゃんを包んでいく。
「バーナーナー!」
 魔法陣の輝きはバナナちゃんの力を確実に吸い取っていくが、元々の力が半端ではないので、多少吸い取られたくらいではバナナちゃんはピンピンしていて、うなり声を上げながら長い舌を伸ばし、
 ――ベロン!
 一瞬にして舌は警察官の1人を捉え、飲み込んだ。悲鳴を上げさせるヒマさえ与えない、まさに神速の出来事だった。
「バーナーナー!」
 ――ベロン! ベロン! ベロン!
 さらに舌は周囲を固める警察官や近隣の野次馬に襲いかかり、捉えては飲み込んでいった。
「なんてパワーなの……!? 吸い取っても吸い取ってもキリがないわ……」
 みちるはバナナちゃんから吸い取った力を自らのものとしていたが、有り余る力を制御するのに苦戦していた。
「みちる、しっかりしろ!」
「みちるちゃん、吸い取った力を開放して、周囲に流して!」
 峻佑や英里がみちるに駆け寄り、口々にみちるに伝える。
「も、もうこれ以上は溜めきれない!」
 みちるはその言葉とともに意識を失い、魔法陣も消滅した。
「みちる、ナイスよ。これなら……行ける!」
 ちひろはみちるに駆け寄ってねぎらうと、これまでずっと溜めていた封印魔法を解き放った。
 解き放たれた封印魔法は激しく回転する幾何学模様の輪っかとなり、バナナちゃんに絡みついていく。やがてバナナちゃんが見えなくなり――
「バーナーナー…………」
 断末魔の叫びらしきものを残してバナナちゃんことバナナマスター08は再び封印されたのだった。

 その後、崩壊した校舎が再建されるのに1週間かかり、その間学校が閉鎖されたのと、目撃した住民の記憶を消すために奔走したり、ちひろが英里にこっぴどく怒られ、「魔法書の‘召喚の章’を見るのは禁止!」と言い渡されたのは言うまでもない。


いかがだったでしょうか?
感想お待ちしております。

なお、この番外編で登場したバナナマスター08は、ヒュンケル氏の作品の『想いと運命の狭間』と『バナナとなり〜の狭間なり〜』に登場しております。
もしよろしければ、そちらもどうぞ。

ランキングにも参加しておりますので、よろしければ投票をお願いします。

次回からは本編に戻ります。
峻佑がついにとある決意を……!?
VOL.29:峻佑の決意(仮)  お楽しみにっ!






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