白銀の街
白銀の街。
まだ活気に満ち溢れていた頃は、そう呼ばれていた。
年中空から真っ白な雪が降り注ぎ、冷たい風が街を駆け巡る。
人々は温もりを求め合い、人の輪をつくる。
その強く確かな暖かみで寒さを乗り切って来た、人の街。
そう。昔はとても良い街だった。
白銀のベールが街を覆い、太陽の光を反射して美しく輝き。
その中で力強い灯りが集まって、気高く生きる。
自然と共に活きる街。
大好きな故郷。
その街が、死んでしまったのはいつだっただろうか。
今では寂れ、物言わぬ街となって灰に埋もれる死の樹海。
それは街の灯りを溶かし、沈めていく。
灰に染まった、見捨てられた街。
もう帰ることなどできない。
白銀の街はとうの昔に死に絶えたのだから。
後に残ったのは、時が止まった瓦礫の山と行き場のない孤独。
この世界に私の故郷はどこにもない。
私すら、どこにもいない。
街が死んだ時から私は私ではなくなった。
私の時は彼らと一緒に止められたのだから。
だけれど。
私は決して忘れはしない。
私が、私であったことを。
あの、美しく気高い街を。
今日も今日とて私は想う。
「私」と「彼ら」と「あの街」を。
死の灰が積もった、街跡を。
私はいつになったら私になれるのだろうか。
いつになったら、あの街に帰れるのだろうか。
忘れたくなくて。
分かっているはずの答えを、探し続ける。
行く道には、いつの間にか銀色の景色が広がっていた。