表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

白銀の街

作者: みゐえな

白銀の街。


まだ活気に満ち溢れていた頃は、そう呼ばれていた。

年中空から真っ白な雪が降り注ぎ、冷たい風が街を駆け巡る。

人々は温もりを求め合い、人の輪をつくる。

その強く確かな暖かみで寒さを乗り切って来た、人の街。


そう。昔はとても良い街だった。

白銀のベールが街を覆い、太陽の光を反射して美しく輝き。

その中で力強い灯りが集まって、気高く生きる。

自然と共に活きる街。

大好きな故郷。


その街が、死んでしまったのはいつだっただろうか。

今では寂れ、物言わぬ街となって灰に埋もれる死の樹海。

それは街の灯りを溶かし、沈めていく。

灰に染まった、見捨てられた街。


もう帰ることなどできない。

白銀の街はとうの昔に死に絶えたのだから。

後に残ったのは、時が止まった瓦礫の山と行き場のない孤独。


この世界に私の故郷はどこにもない。

私すら、どこにもいない。

街が死んだ時から私は私ではなくなった。

私の時は彼らと一緒に止められたのだから。


だけれど。

私は決して忘れはしない。


私が、私であったことを。

あの、美しく気高い街を。



今日も今日とて私は想う。


「私」と「彼ら」と「あの街」を。

死の灰が積もった、街跡を。


私はいつになったら私になれるのだろうか。

いつになったら、あの街に帰れるのだろうか。


忘れたくなくて。

分かっているはずの答えを、探し続ける。




行く道には、いつの間にか銀色の景色が広がっていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ