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魔物娘たちの御主人様! 作者:よあけ

要塞都市バルタロ編

第15話 賞金換金所

翌朝、タロウとプス子は宿屋の女将レイデの作る美味しい朝食を頂いた後、部屋で装備を整えると、この難民街の中にあるという「賞金換金所」に行く事にした。

タロウは荷車を宿屋に預けたまま、プス子を従えて難民街に出る。

「今日も快晴。良い天気だな」

「あい」

太陽らしき恒星は、まだ目線より少し上ぐらいの高さだったが、澄みきった青い空に輝く日の光は実に爽快だった。

プス子も眩い太陽を見上げたのか大きな単眼を細めている。

タロウは女将レイデより賞金換金所の場所を聞いておいたので、特に迷うこともなくそれらしい建物へと辿り着いた。

一階建ての赤レンガ作りの建物。

簡素な木製の小屋が多いこの難民街の中では、立派な建物の部類だった。

「(建物の広さは普通のコンビニ4~5個分程度かな。周りが簡素で小さな小屋しかない中だからか、異様なでかさに感じるな……)」

タロウは入り口の上に掲げられている大きな看板を見上げる。
そこには「賞金換金所」と、この世界の文字で書かれていた。

「さて、プス子も連れて入っていいものやら」

タロウは入り口付近で目を動かす。

すると入り口の横に小さな木製の下げ看板がかかっていたので、その前に歩み寄って内容を確かめる。

「なになに……」

そこには色々な注意書きが書いてあった。

・換金所内での喧嘩禁止。
・換金所内での飲食禁止。
・酔っぱらい入所禁止。
・所員への暴行にはギルド連盟より制裁を加える。

タロウは色々と細かく書かれた注意書きの中に「魔物使いの魔物同伴を許可する(ただし2体まで)」という一文を見つける。

「いいみたいだな。んじゃ、プス子も一緒に入ろうか」

「あい」

タロウはプス子を連れて賞金換金所内に入る。

所内は天上から吊り下げられている、蛍光灯並に光り輝くランプ達のお陰で実に明るい。

木の床に白い壁紙、難民の小屋と比べれば遥かに質は良いが、特に豪華というわけではなかった。

室内のフロアはちょうど真ん中辺りで二つに区切られている。

フロアの真ん中で区切り線の様に配置されているのが受付カウンターで、フロアの端から端まで伸びており、カウンターには小さな区切りと専用の椅子が設けられている。

受付カウンターの内側では所員のデスクが並び、人間の所員達が事務仕事を行なっている。

もう片方は客用のフロアで、3~4人用の木製の長椅子が規則正しく何個も並んでいた。

「(銀行みたいだな)」

まだ、朝一番で人の数が少ないせいか実に静かだったので、タロウは思わず第一印象で元の世界にあった銀行を思い出す。

「(形も似ているし、お金を扱うという点でも一緒だよな。ま、銀行とは違ってここはお金を吐き出すだけらしいけども)」

待機用の長椅子に座っている何人かの魔物殺しらしき男達が、タロウとプス子に視線を向けるが、一瞥いちべつするだけで視線を宙に戻してしまう。

「プス子は俺の後ろで立って待ってな」

「あい」

タロウはとりあえず空いている受付カウンターに行き、その前に置いてある木製の簡素な丸椅子に座る。

プス子は素直にタロウの後ろに立つと静かに佇む。

タロウが座ったカウンターには、メガネをかけた真面目そうな若い男が受付として座っており、手慣れた感じで声をかけてくる。

「いらっしゃいませ。換金ですか?」

「あ、いや。魔物でお金を稼ごうと思って。何でも「腕輪」というものをここで貰うんだとか」

「あ、はいはい。魔物殺し用の「討伐記憶腕輪」の支給ですね」

「討伐記憶?」

タロウはその言葉から「腕輪」の機能を悟ったが、あえて分からない振りをする。

「もしかして、賞金換金所のご利用は初めてですか? それでしたら色々と説明しましょうか」

タロウの態度からタロウを「新人」だと理解した受付の若い男は、営業スマイルを浮かべながらメガネの端を人差し指で押し上げる。

「ひとつお願いします」

「はい、承りました。まず、当所では魔物を討伐すれば、その対価として賞金を出しております。ちなみに魔物討伐に賞金を出しているのはロイレン帝国です」

「ロイレン帝国が出しているのか……」

タロウは納得がいったという感じで小さく頷く。

ロイレン帝国とはこの大陸の西側を制覇し、この大陸内で最も幅を利かせている武闘派の帝国主義国家である。

既に3つの小国を平らげており、今も尚、東側の列強にちょっかいを出し続けている。

「ええ、ロイレン帝国はこの大陸で最も魔物を忌み嫌っていますからね。その絶大なる国力をもって賞金を出すことにより、自国内から魔物を減少させることに成功しております。ロイレン帝国領内にはたくさんの賞金換金所がありますが、ここは魔物討伐の最前線基地ということもあり最大手になります。あ、もちろん最大手は要塞都市内にある賞金換金所本店の事ですけどもね。うちは支店みたいなものです」

「ということは、この要塞都市はロイレン帝国の管轄下になるんですかね?」

「いえ、そもそもこの地「コロル大荒野」は不干渉地帯です。西のロイレン帝国、東のゼノバ皇国、両方がこのコロル大荒野と地続きの為に、何度か小競り合いはありましたが、ここはまだ誰の物でもありません。ただ魔物の巣窟となっている北の未開拓地の入り口という事で、ロイレン帝国が作った賞金の仕組みを背景に、魔物殺し達が勝手に集まって要塞都市が出来ただけです。ロイレン帝国は北の未開拓地から領内に魔物が雪崩れ込むのを防ぐという名目で、支配権は無くともこの要塞都市が栄えることには口を出さないようです」

「要塞都市はロイレン帝国を資金源として頼り、ロイレン帝国は魔物に煩わされること無く、大陸制覇に集中できるわけか」

「そういう感じですね。では、腕輪の説明に入りますが、これはロイレン帝国のお偉い魔導士様達が開発したアイテムでして、討伐した魔物の種類や数を記憶してくれます。残念ながらどういう仕組なのかは、普通の人間である私達には分かりませんが、とても便利な物ですので正式採用されております」

「じゃあ、魔物の死体とかを持って帰らなくていいわけか」

「ええ、魔物殺しの場合には討伐するだけで賞金が出ます。ですが、魔物狩りになれば魔物を生け捕りにして、持ち帰ってくる必要がありますね。その場合は、当所でも高額で買取りしますし、魔物奴隷商を利用されても結構です」

「(なるほど。農奴用などの格安魔物奴隷は、こうやって魔物狩りから仕入れているわけか)」

受付の若い男はカウンターの引き出しから、簡素な腕輪を取り出してカウンターの上に置く。

1cm程度の幅を持つ鉄製の平たい金属が「C」という形になっている。

装着した際には腕時計ならば文字盤がある位置に、ビー玉の様な透明の丸い水晶が付いている。

「この腕輪はロイレン帝国領内で採用されている物と基本は同じです。ただし、ここは魔物討伐の最前線基地という事もあり特別仕様となっており、他の地域では存在しない魔物の情報にも対応しています」

タロウはその腕輪を受け取ると、腕輪の「C」の形の開いている部分から右腕の手首にはめる。

「タダでくれるの?」

「ええ、タダです。とは言っても、あまりに装備が貧弱な場合には、お断りする事もありますが、貴方様は既に魔物を使役されているので、資格は十分だと判断させて頂きました」

「それはどうも。ちなみに、情報に無い新種が出た場合は?」

「その際には新種情報が記憶されますので、当所に来て下されば即座に魔物の能力を分析して、賞金額を決定してお支払い致します」

「新種を討伐しても損はしないと。そこまでしっかりしているなら、もしかして、この腕輪には魔物を識別する図鑑みたいな機能が付いているとか」

「いえ、残念ながらそういう機能はございません。魔物に関する書物は色々と出ているようですので、書物屋などで、お買い求めになられることをお勧めします。あ、でも基本的な魔物についての簡素な案内書なら、当所にもありますが要りますか?」

「是非とも下さい」

受付の若い男はカウンターの引き出しから、ペラペラに薄い案内書を取り出して手渡してくれる。

タロウはそれをパラパラとめくって中身を確認すると、絵書きが描いた魔物の絵と、魔物の能力に関する解説文、賞金額などが書いてあった。

「(お、半魔獣の事も書いてあるな)」

大物を狙っていないタロウにとっては、十分にこれだけで役に立ちそうな案内書だった。

「色々とありがとう。それじゃまた」

そう言って、タロウが立ち上がろうとすると、受付の若い男が慌てて呼び止める。

「あ、すいません。まだなんです」

「ん?」

「魔物使いの方は、使役している魔物が仕留めた魔物の討伐情報を、回収できる腕輪があるんです」

「とことん便利だね~」

「ええ、お偉い魔導士様の発明ですから」

受付の若い男は「ハハハ」と小さく笑いながら、再度カウンターの引き出しから、プス子でも付けられる大きな腕輪を取り出す。
形はタロウの物と一緒だった。
タロウはその腕輪を受け取るとプス子の右腕の手首にはめる。

「ちなみに魔物が付ける腕輪は情報収集用ではなく、主人である貴方の腕輪に討伐の追加情報を飛ばすだけです。なので、換金する時は貴方1人が賞金換金所に来て下さるだけで、全額をお支払いすることが可能です。つまり魔物の腕輪には討伐情報が蓄積されませんので、魔物の腕輪で換金することは出来ません。ご了承下さい」

「なるほど。よく分かりました。ご丁寧に色々とありがとう」

「いえいえ。ご健闘を祈っております」

受付の若い男は軽く一礼してくれるので、タロウも思わず軽く一礼する。
腕輪を手に入れるという目的を達成したタロウは、プス子を連れて賞金換金所を後にするのだった。
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