挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。

短期高校留学 刹那

作者:ジャットセンター
想像することと、実際に体験することでは大きく違うと思う。そして一人の少女が、オーストラリアの学校で留学して多くのことを学び、自分の将来について深く考えるようになっていく。
留学してもいいし、今いる学校に残ってもいい。

萌は中学3年の夏休みにオーストラリアのレイクヘブンガールズスクールに短期留学してから、ずっと悩んでいた。

悩む理由はある。萌には医者になるという夢がある。今通っている学校は幼稚園から高校まで一貫教育をしている学校で理系の大学への合格率の高い女子校として有名だ。当然、高校に進級したら学校内のプレミアムコースという理系のトップ大学を目指すコースに入学して受験に備える予定だった。しかし、英語力を伸ばすためと、海外での生活のあこがれや好奇心で海外の学校に短期留学したいという気持ちが強かった。受験に備えるためには、中学3年の夏休みが最後のチャンスだと思った。なので、お母さんにお願いして中学3年の夏休みにオーストラリアへの短期留学を決めた。しかし、萌のオーストラリアでの3週間の留学は、今まで定まっていた大きくて広くてまっすぐな道から外れて何もない草原に新しい道を作って歩んでいきたいと思うほど、日本とオーストラリアを比べることから得られる大きなものをおぼろげにつかんだような気がしていた。それをしっかりとつかむために冒険に出ることは、もしかしたら今までずっと思い続けていた夢を捨てることになるとも感じていた。

レイクヘブンガールズスクール(以下LHGS)は、1学年40人ほどの小さなアングリカンスクールで、日本の学年で中学1年生から高校3年生まで約250名の生徒が勉強している女子校。田舎にある学校だが伝統校で、入学を希望する生徒は多い。生まれた時にすでに入学願書を出しても入学できない場合もあるらしい。ほとんどの生徒はシドニーやメルボルンなどの都会から来て寮生活をしている。

7月の夏休みが始まって最初の土曜日にオーストラリアに向かった。成田からメルボルン空港に到着して、そこから国内線を乗り継いでモリセット空港まで1時間弱でモリセットという地方都市に着く。

萌はモリセット空港に着くと、ジュディーを見つけた。ジュディーはLHGSの事務員でオーストラリアに出発する数か月前にジュディーはプライベートで日本を旅行していて、萌の留学を斡旋した会社の担当者の有田さんに紹介された。ジュディーはAUSLANオーズランというオーストラリアの手話の先生でもあり、有田さんとはDeaf Societyという団体を通して知り合った。

How are you, Moe?

Yes. 萌は緊張しすぎて自分の英語の間違えに気づいていない。

How was your trip ?

Yes. 萌はまだ緊張している。

ツカレマシタカ? ジュディーは萌の緊張を察して日本語で問いかけた。

はい。萌はジュディーが日本語で語りかけてくれたおかげで緊張もほぐれたようだった。
I’m sleepy.. あっ、間違えた。No, I’m tired. 眠いはsleepyは使うなって有田さんに教えてもらったばかりだった。有田さんとは留学が決まってから英語や数学の勉強をLINEを通して週に2回1時間ずつ教えてもらっている。

ジュディーの車に乗ると、エドシーランのレゴハウスが流れていた。萌の大好きな曲だ。この歌が平らでずっと遠くまで見える地平線に馬や牛や羊がのどかにくつろいでいる景色にマッチしている。グーグルアースで何度も学校や学校のあるレイクヘブン、また空港のあるモリセットの街並みを何度も見たが、実際に車でその景色の中を走ると今まで感じたことのない、不思議な感覚になってしまう。

30分くらいしたら、学校に着いた。学校の中を車で入ると、10以上の建物がある。古い校舎とまだ建って間もないだろう新しい校舎が混ざり合っている。ジュディーが車を停めた前にはきれいな2階建ての建物があった。

Boarding house, Moe. ジュディーは萌に伝えた。やはり寮だった。学校のスクールカラーと同じグレイの建物で他の建物と比べてとても新しくきれいだった。

荷物を車のトランクから出して、寮の中に入ると、通路になっていて、今までの生徒の写真やスポーツの大会の写真などが飾ってある。通路を抜けるとリビングルームのような大きな部屋になっていて大きなテレビとソファがある。そこに4人生徒がいたが、私とジュディーを見つけると私たちの方に来てくれた。

コンニチハ。モエ。ワタシノナマエハ、シェイデス。ドウゾヨロシクオネガイシマス。

コンニチハ。モエ。ワタシノナマエハ、ダニエルです。

コンニチハ。モエ。ワタシノナマエハ、アリーシャです。

コンニチハ。モエ。ワタシノナマエハ、ジャンです。

こんにちは。

ジュディーが一人の生徒に話した。
Shay, show her to your room.(シェイ、萌を部屋に案内して)

シェイという少女が、萌のスーツケースの一つをジュディーに代わって運んでくれた。そして、おそらく私の部屋であろう前でシェイはとまった。

Our room.

部屋のドアには、year9 Shay JAMES, Moe KIROKU と書かれたボードがあった。

萌、私はシェイ。日本語も大丈夫。5年間日本に住んでいたから。わからないことがあったら遠慮なく聞いて。

えっ? 萌は一瞬何が起こっているのか理解できなかったが、隣にいる少女は普通に日本語で私に話している。

シェイは、ブロンドで青い目をした可愛い小柄な少女。

日本語上手ですね。 萌はそう切り出すのが精いっぱいだった。

ジュディーからは、できるだけ英語で話すように言われているので、この部屋の中ではかまわないけど、みんながいる前では英語でね。

萌ちゃんって呼んでいい?

うれしい。じゃ、私は普通にシェイでいい?

うん、萌ちゃんは日本のどこに住んでるの?

私、広島。と言っても、かなり山奥だけどね。三次って町。

そうなんだ。私も田舎にいたんだよ。私は静岡県。お父さんが、オーストラリアで日本のイチゴを品種改良して栽培するためのプロジェクトで5年間もいたんだよ。タカさん、知っているよね。有田さん。有田さんが私たちが住んでいるタスマニア州のホバートで仕事をしていた時に知り合ってからイチゴ栽培の関係でよく日本にいる時は一緒にいたから。今回も、有田さんから、萌ちゃんのことよろしくって言われてたから。私のこと聞いていなかったの?

ぜんぜん。聞いてないよ。全くそんな素振りもなかったのに。

タカさんらしいね。萌ちゃん、今日は日曜日だから今から6時までは自由時間で、6時から7時の間にダイニングルームで食事、7時からハウスミーティングって言って、寮の集会があって、終わると9時30分までスタディールームで自主勉強になってるよ。

この寮はね、私たちYEAR9までとそれ以上の学年で寮が分かれていて、集会も別々。高校生の寮生はシニアって呼ばれて、私たちはジュニアって言うんだけど、ジュニアはこの寮で100人くらい滞在してるの。あと、この寮には10人くらいモリセット大学の大学生も一緒に住んでいて、彼女たちが勉強を見てくれたり、相談に乗ってくれたりしてくれるよ。みんな中学や高校の教職免許を専攻していて、LHGSの伝統で、みんなこの学校のOGなんだよ。

そして、シャイは寮の説明を萌にする。

萌ちゃん、このLHGSのジュニアの寮はすべての部屋が二人ずつで住むことになっていて、それぞれの学期ごとにい部屋替えをするんだよ。ただ、原則としてルームメイトは同じ学年同士で、部屋割りはハウスシスターという寮長が決めるんだけど、おそらく食事の時にハウスマスターに会うのでその時に紹介するね。

シャワーとトイレは1階にも、2階にもあって自由に使っていいけど消灯時間に使うことは禁止、シャワーは消灯時間前が一番混むけどトイレも数は多いので困らないと思う。消灯時間は10時。大学生が10人ほどいるので、彼女たちが見回りをするから、電気もつけてはいけないから注意して。洗濯は週に2回月曜日と木曜日。洗濯物には必ず名前を記入しておくこと。洗濯屋さんが洗濯してそれぞれのロッカーに入れてくれるから月曜日に出したものは木曜日に仕上がって、木曜日に出したものは月曜日に仕上がるような感じです。

7時からのハウスミーティングは10分くらいで、ミーティングでは伝達事項や何か問題があったら話し合いをするときもある。私は寮のバイスキャプテン(副キャプテン)で、さっき会ったダニエルがジュニアのキャプテン。ミーティングが終わったら9時30分までは図書館で勉強時間。図書館は隣の建物にあるから後で案内するね。強制ではないけど、半分くらいの生徒はきます。ただ学期末のテストの前はほとんど全員がスタディールームにきます。(笑)勉強時間はモリセット大学の学生約10名が勉強を見てくれます。大学生はみんな教育免許の単位を取る生徒なので、それぞれ専門の教科の勉強を教えてくれます。

勉強に来ない生徒は、携帯でインターネットをする生徒が多いけど、他にも部屋で音楽を聴いているか、別の建物にあるジムを利用するか、映画を観ているか、それぞれ好きなことをしてるね。なので勉強じゃなくて好きなことをやっていてもいいよ。インターネットは使えるけど、ほとんどのサイトのロックがかけられているので、自分の携帯やWi-Fiを使うようになるね。

寮の中は本当に贅沢なくらいいろんなものが揃っていた。100人住んでいる寮に、大きなテレビが4台、自分で自炊できるキッチンが1階と2階にそれぞれひとつづつキッチンには電子レンジもあるし大きな冷蔵庫もそれぞれ2つある。図書館も自由に使えるし、ジムも自由に使える。テニスコートも6面ある。週に3回ダンスの先生が5時から6時まで教えてくれる。部屋もきれいにしてあるし、住み心地もよさそう。

萌、六時になったら食事に行くからそれまではゆっくりとしていて。

シェイ、シャワー浴びていい?

いいよ。タオルとシャンプーは持って行ってね。たぶんこの時間なら誰も使っていないと思うから。

分かった。ありがとう。

シャワー室は、トイレの隣にあって、10人分のシャワー室がある。シャワーの出るところは、固定されていて、日本で使うようなチューブになってはいない。水を出すと蛇口から広範囲に水が出るのでそれほど使いにくいものでもなかった。

シャワーを浴びて、部屋に戻ってきて、着替えてダイニングルームに向かった。ダイニングルームは寮とは別の建物にあり、全校生徒250人と先生すべてを収容できる大きな食堂だ。テーブルは20ほどあって、各学年3つのグループに分かれて座る。平日のランチは全員集まるが、今日は日曜日なので、私たちyear9は二つのグループに分かれて座ることになる。

寮の食事は、肉類かベジタリアンの食事のどちらかを選べて、デザートや果物などは、別のテーブルに置いてあるので好きなだけ食べることができる。サラダもスープもセルフサービスで取ることもでき、自分の希望する量で食べることができるのがいい。初めての寮の夕食はベジタリアンミールが寿司だったので、そちらにした。寿司自体はベジタリアンではないと思うが、そこもオーストラリアだと思って納得した。寿司と言っても太巻きで私はクラブスティック(カニのスティック)を取ったが、シャリがおいしくなかった。

みんな静かに食事を取っている。育ちのいい子たちが集まっているだけあって、品のある食べ方をしている。萌はみんなのテーブルマナーをちらっと見ながら緊張しながら食事を終えた。

シェイと一緒に寮の部屋に戻った。

萌、7時からハウスミーティングが始まるよ。それまではリラックスして。ハウスミーティングでみんなに紹介されるから挨拶の言葉考えておいて。

えっ?聞いてないよ。一瞬にして、気持ちが凍り付いた。本当にマジでやばい。この15分で何をすればいいの?すぐに有田さんにLINEを送った。

今からハウスミーティングで自己紹介しなければならないんですが、何か文章考えてください。

すぐに既読になって、2分ほどしたら返信が来た。

萌ちゃん、こんにちは。シェイには会えた?一緒の部屋だよね笑。文章はこんな感じでいいよ。またメールください。
Good evening , everyone.
My name is Moe, from Japan.
I like listening to music. My favorite singer is Justin Bieber.
I want to be good friends with you.
I am looking forward to talking to you all.
Thank you.

こういう時に有田さんは役に立つ。もらったメッセージを読み返して暗記してたらすぐに7時になってしまっていた。

萌、行くよ。とシェイは言った。

ハウスミーティングを行う場所は、寮の自習室になっている部屋で、学校の教室が2つくっついたくらいの大きな部屋に10人くらいが座れる丸テーブルが12ある。一つのテーブルに10くらいの椅子があり、決まった場所に座るようになっている。萌はシェイの隣で一番前のテーブルに座った。

寮長らしき女性が来て、ハウスミーティングが始まった。その女性は私を見て微笑んでくれた。ミセスピューという女性が寮長だ。おそらく40歳にもなっていないとてもきれいな女性だ。

Good evening, girls.
We have a new student from Japan.
Moe, right?
シェイに促されて、萌は立って
Hello .
と言った。これで終わり。いきなりで緊張も解けたが、あとは何を話していたのか覚えていない。この後に、同じ教室で勉強会があるが、今日は疲れていて、飛行機の中でも眠かったので部屋に戻ることにした。シェイも一緒に戻ってくれた。

萌ちゃん、疲れたでしょう。今日は寝て。明日から学校が始まるから。明日は7時起床で7時30分から朝食だからね。

ありがとう。じゃ、着替えて寝ます。明日は私、どうするの?

萌ちゃんは、滞在中はずっと私と同じ授業を受けてもらうので問題ないよ。

そうなんだ。助かった。ありがとう。

長いようで短いようで、あっという間に過ぎてしまった一日だった。この寮は心地よさそうな感じがした。生徒もみんなやさしそうで変に目立つ生徒もいない。部屋も想像したよりもずっときれいで清潔だし、ストレスなく3週間暮らせそうな気がする。萌は一日を振り返り、車で学校に向かっている景色を思い浮かべながら寝てしまった。



自然と目が覚めたら、まだ外は暗そうだった。携帯電話で時間を確認したら午前6時だった。起床時間まで1時間あるけど、携帯電話でLINEの返信や好きな音楽を聴いていたら、7時になった。部屋にあるスピーカーから音楽が流れた。きっとこれが起床時間の合図だと思う。すぐにシェイも起きた。

Good morning , Moe. How are you?

Good morning , Shay. I’m fine.

じゃ、朝食を食べに行こうか?平日の朝食は制服を着て食べるのが原則なので着替えてから行こうか?

うん。

日本の中学の制服に着替えてダイニングルームに着いたら、すでに多くの人が朝食を取っていた。今日の朝食はトーストと、スパゲティーか豆の缶詰のどちらかを選んで、それにシリアルだった。小さな缶詰だったので、スパゲティーと豆の缶詰両方を取った。スパゲティーはミートソース味を少しどろどろとさせたようなもので、豆の方はトマトソースを煮込んだものに豆が入っている、ベイクドビーンズというものだ。両方とも初体験で微妙の味だったが、ナイフとフォークでパンにつけて食べた。まずいというわけでもなく、しっかりと完食した。

食事がすんで、部屋に戻って授業の準備を始める。シェイから昨日聞いた通り、シェイの受ける授業をすべて隣で一緒に受ければいい。萌はシェイから予定表を渡された。予定表には1週間の時間割と、移動する教室が書いてある。その下にMrs.Pughのように書いてあるのが担当の先生の名前だろう。

萌ちゃん、パソコンのダウンロードは済んでいるからね。

ありがとう。昨日シェイからオーストラリアの授業は各自パソコンを持って授業を受けるので教科書などはないらしい。パソコンに資料などをダウンロードして授業を受けるそうだ。なので、昨日ジュディーが私のパソコンに授業で必要なものをダウンロードしてくれた。

オーストラリアの学校では、授業ごとに教室を移動する。なので自分のクラスもないので、自分の机もない。朝授業が始まる前に10人ほどのグループで集まって先生からいろいろなことを説明された。シェイから聞いたら、これはロールといって朝に集まって今日の伝達事項をグループに分けて確認連絡をするらしい。例えば、先生が出張だから今日の理科の授業は自習になるとか、数学の教室がいつもと違う教室になるとか、そのような感じだ。

1時間目は数学だった。初めてのオーストラリアの授業でちょっと緊張してる。

シェイが萌に話しかけた。
萌ちゃん、LHGSでは、学校の授業が始まる前に教室に入るドアから通路に沿って生徒は2列に整列して先生が来るのを待たなければならないんだよ。授業が始まる時間に先生が来て、生徒の身だしなみなどをしっかりとチェックして、先生がそれを確認して問題なければ順に生徒は教室に入ることができるんだよ。

先生が来たようだ。2人ずつ先生の前に立って入る許可をもらう。萌とシェイも無事教室に入ることができた。

席は自由に座れるようだけど、なんとなく決まっているようだ。萌はシェイと一緒に前の席に座った。先生が来ると挨拶も簡単に済ませて授業が始まる。みんなパソコンを開いて問題を解き始める。私もシェイに教えてもらって数学のテキストを開けた。

テキストの問題は、一次方程式の問題ですでに日本の学校でもやっているので難しくはない。画面に出ている問題を解き終わって周りを見回すとまだみんなは問題を解いているようだ。前を向きなおしたら先生と目が合った。

Moe, did you finish?

Yes.

先生は私のところに来て答えがあっているか確認して、私に

Moe , I will send you another paper.

先生が別の問題を送ってくれたので、問題を開いて解いた。今度の問題は二次関数の二次式をtとして平方完成をして、tの変域を限定した上で最小値と最大値を求める問題だった。英語の単語はわからないが、式だけ見れば正直問題の主旨は普通にわかる。萌は、問題を解くのに3分くらいかかった。

先生は少しびっくりして萌の所に向かって解けているか確認した。

Well done.

先生はまた別の問題を送ってくれた。問題を開くと今度の問題は数列の階差数列で3,5,8,14,25,43の一般項を求める第二階差数列のようだった、これは日本では数学Bの範囲なので萌の中学では習ってなかったが、留学が決まってから有田さんから数学も教えてもらっていたので、簡単な第二階差数列なら解けるので解いた。

先生が萌が問題を解き終わると答えをチラッと見て、シェイに話しかけた。

シェイが先生の話を聞き終わると萌に話しかけた。

萌ちゃん、明日からは数学の授業だけはスペシャリストというyear12のクラスに行って勉強してほしいんだって。詳しいことは私が聞いて教えるね。

ありがとう。高校レベルの数学を英語で勉強出来ることに、萌はとても興奮していた。有田さんと積分の問題をやっている時に計算の複雑さが楽しくて、出発前に難しい数学をやらせてもらえたら萌ちゃんきっと数学がさらに好きになると思うよって言われていたので、明日からの授業が楽しみで仕方なかった。

2時間目は社会の授業だった。

大きなモニターがあって、そこにグレートバリアリーフの綺麗な海が映っていた。

授業が始まった。何を言ってるのかよくわからないが、bleaching coralという言葉が聞こえる。辞書で調べると、珊瑚の白化現象についての話のようだ。みんなが、それぞれ自分の意見を言ったり、調べたことを発表している。

環境破壊はこれからの大きな問題だと思う。水温の上昇や魚の乱獲、ゴミなどの投棄、一人ひとりが高い意識を持って取り組まなければいけない問題だ。オーストラリアではWWF世界自然保護基金の活動を学校の授業でしっかりと学ぶことを義務付けている。

身近な環境問題に対して自分たちは何をしなければならないか。環境問題はいろいろとあって、オーストラリアでは乾燥による山火事のブッシュファイアー、砂漠化、洪水問題、絶滅危惧種動物の保護、資源の有効利用など学校の授業で優先的に行われているそうだ。萌も知識をテスト形式で覚えて点数で競うより、テストではなく、このような問題を調べたり、それを発表したり、話し合うことがとても大切だと以前から考えていたので、すごくいい授業だと感じた。

社会の授業が終わるとモーニングティーになっていた。モーニングティーの時間は生徒全員がダイニングルームに集まり学年ごとのグループで自由に話す時間のようだ。私が座ったテーブルは私を含めて14人いて丸テーブルに座る。お菓子がおいてあって、飲み物は自分で用意したものでも、ダイニングルームにある、コーヒー、紅茶、オレンジジュース、水、なんでも自由に取ることができる。

お菓子がビスケットだったのだが、少し甘くて、昔ながらの素朴な味がした。シェイに聞いたらアーノッツというオーストラリアの昔からあるお菓子の会社が作っている有名なビスケットだそうだ。お土産に持って帰りたいなと思った。

3時間目の授業は理科だった。理科の教室は数学や歴史の授業の教室と違って特別な教室だった。いろんな理科の実験が出来るようになっていたり、資料などを先生が机に置いたり、パソコンページなどが大型スクリーンのテレビで映し出されるようにもなってる。生徒が座る席も列に3つのテーブルがあるが、両側は斜めになっていている。ガラス張りで、隣にも教室があって、そこは実験などをする教室になっていた。少し説明を先生がしてから実験室に移った。

実験室では白衣を着るように説明を受けた。そして、透明な手袋をはめて、マスクも着用された。先生が一人一人に大きな黒い箱から大きな眼球を生徒の前のシルバーの皿にのせている。私はびっくりして悲鳴をあげそうになったが、他の生徒があまりにも冷静にしているので気持ちを入れて我慢した。

眼球は牛のもので、正直動物の実物の眼球は初めて見た。オーストラリアの授業は知識だけでなく、実際に体験したり、生徒の想像力を膨らます授業の形式と聞いていたが、ここまでリアルにやるとは思わなかった。シェイに聞いたら、眼球だけでなく体の器官を実際に見せて授業をするのが普通だと言われた。

牛の眼球を直に見ながら、目がどのような仕組みになっているかを学ぶことはとても大切なことだと感じた。

理科の授業が終わるとランチタイム。自宅から通う生徒も含め250名の生徒が揃うと迫力がある。LHGSのランチは基本的に食べ放題のバッフェ形式で、ドリンクバー、サラダバー、デザートバー、肉、魚があり豪華だ。萌はサラダとパスタとライスプリンと書いてあるプリンを取った。萌は日本の英語学校に通っている時、同じクラスの男子生徒から足が太いと言われてからダイエットに集中している。どちらかと言えば痩せていてスタイルもいい方だと思うが、この時期の少女は異性の言葉に敏感になる時期なので仕方がない。

萌はパスタとサラダを食べてからライスプリンを食べようとしていた。ただ、萌はライスプリンなど聞いたことがない。普通のプリンよりも色は白く、中には粒のようなものもある。ちょっと匂いを嗅いだがあまり匂いはしなかった。不安を感じながら口に含むと今まで経験したことのない食感が襲った。少し味に違和感があったが吐くわけにはいかない。気合を入れて飲み込んだ。無理だ。ライスプリンは萌の友達にはなれなかった。シェイに食べれないことを伝えると、そのまま捨てればいいと言ってくれた。記念に携帯で写真を撮って、あとで日本の友達に報告しなければならないと思った。

萌ちゃん、月曜日の午後はスポーツデーと言って今から運動できる服に着替えてみんな選択したスポーツを行うことになっているんだよ。私は今学期はアルティメットというスポーツを選択しているので、萌ちゃんもアルティメットだからね。

アルティメットって何?聞いたことないけど。

アルティメットとは、バスケットボールとアメリカンフットボールを組み合わせたような競技でボールの代わりに、フライングディスク(フリスビーのようなもの)を使ってパスつないで相手の陣地にある得点ポイントに入れば得点になるスポーツ。基本的には1チーム7名で行うが、学校などではあまり人数も気にしないで行う場合も多く、フィールドも適当な場合が多い。フライングディスクの不規則な動きに合わせてジャンプして取ったりとレクレーションとしては面白い。体の接触もあまりないために男女ミックスで楽しめるのも特徴だが思っている以上に体力は消耗される。

萌は運動着に着替えて、シェイと一緒にグランドに向かった。私たちのハウスはWyeeだからね。赤だよ。

スポーツデーでは、ハウスの結束を強めるためにハウスごとにチームを作って試合を行う。LHGSでは、Woy Woyウォイウォイ青、Wyeeワイイー赤、Wyongワヨング黄色、Wallarahウォララー緑と4つのハウスに分かれている。すべてWから始まるアボリジニの言葉にちなんだ名前が付けられている。

LHGSでは、2月の水泳大会、3月の合唱大会、4月のクロスカントリー、6月のスポーツ大会、9月のアスレティック大会、10月のダンス大会とハウス対抗のイベントがたくさんあり、学年ではなく、ハウスでの戦いがとても熱く、この6つのイベントごとに得点があり、最高得点を取ったハウスは11月に行われる地域最大のイベントで世界的にも有名なカーレース、モリセット1000でレースクイーンやダンスの披露、大会のイベントでの行事に参加することができる。なので、各ハウスは優勝を目指して結束はとても強い。

最初、近くにダニエルがいたので、ダニエルと一緒にフライングディスクの投げ方を練習した。最初は短い距離でやった。20mほど離れて投げたが上手く相手に届いた。また、ダニエルが投げたディスクも曲線を描いてきれいに萌の胸の前にコントロールされて届いた。次にパスの練習で、ダニエルが私のいる場所から10mほど左に投げるのを走って取る練習をした。なかなか面白い。

Moe, you have talent for Ultimate.

ダニエルに褒めてもらった。

ゲームが始まる。最初はWoy WoyとWyongとの試合だ。ゲームを見ていると思っている以上に簡単なルールのようで、萌もすぐにやれると確信した。

次に萌のチームの番になった。赤のビブスを付けて出場した。ダニエルとシェイも同じゲームに出た。ダニエルは本当に上手だ。萌が空いたスペースに移動するとすぐに流れを感じ取って素晴らしいパスを投げてくれる。また、私がディスクを持つと、相手にフェイントをかけて裏を抜けていい場所にポジションを取って投げやすいところにいてくれる。

一方シェイは本当にスポーツは苦手のようだ。ディスクもまともに投げられなくて、取ることも上手にできない。その上身長が低いので相手に競り負けてしまう。でも、頑張っている姿がとてもかわいい。

何試合かやったが、萌はとても充実した時間を過ごしたようだった。日本にもアルティメットがあるといいなとも思った。

今日の授業はこれで終わり、時間も3時になりシェイと一緒に寮に戻った。寮に戻ると、ちょっとセクシーな光景を見てしまった。何名かの生徒が、バスタオル1枚のみを体に巻いて廊下を歩いているのだ。

シェイ、みんなどうしたの?

スポーツやったでしょう?汗をかいたのでみんなシャワーを浴びに行っているんだよ。寮のシャワーの場所には着替える場所がなかったでしょう?みんなタオルを巻いてシャンプーと石鹸を持ってシャワーを浴びに行くのが一般的なんだよ。時々、洗濯物を回収する男の人が入ってくることもあるから気を付けてね。

ちょっとびっくりしたが、これがLHGSの寮のルールであれば従うしかない。バスタオル1枚で廊下を歩くのは勇気が必要だったがシャワー室に行った。シャワー室に行くと何名かの生徒がいて、1つシャワーが空いているのに、他の生徒が待っている。待っている生徒に萌が、

Can I use this shower?

Of course.

空いていたので、遠慮なく使った。
あれっ?水の出が悪い。また、時間が経っているのにシャワーが十分に温かくならない。そう気づくと、萌はなぜこのシャワールームが空いているのか分かった。使えないことはないが、水の出が悪いからだ。オーストラリアでは、時々シャワーでも水の出がいいシャワーとそうでないシャワーがあって、ホテルでも悪いシャワーの部屋になると悲しい気持ちになると聞いたことがあった。

萌はシャワーを浴びて部屋に戻った。部屋にはシェイがいた。

萌ちゃん、明日の1時間目の数学は私たちと同じ授業ではなく、高校3年生と一緒に授業を行うから、その場所に案内するね。

ありがとう。

シェイが最後にうっすらと笑っていたのがとても気になった。

次の日の朝、シェイと一緒に萌はロールを受けて、シェイが萌をジュディーのところに連れて行った。

萌、楽しんでね。

シェイはとても楽しそうに萌を見送った。

事務所には、高校3年生らしき生徒が6名いた。ジュディーが萌のところに来て、

Will you follow the girls ?

Yes.

萌は6名の生徒の後ろについて行くと、学校のスクールバスに乗った。

数学の授業なのになぜ?

当然不思議だったが、仕方がない。

バスが出発すると、6名の生徒は一斉に鏡と化粧道具を取り出して入念にメイクなどを始めた。

何が起こっているの?数学の授業じゃないの?

6名の生徒たちはバスに乗っている間はメイクや鏡で髪型を整えたりずっとしている。萌は何もすることがなかったので、モリセットの景色を眺めて過ごしていた。

10分ほどするとバスはある学校に着いた。まだ授業が始まっていなかったようで、多くの男子生徒がいた。男子校のようだ。何が何だかわからなかったが、バスを降りて3年生の後ろについて、ある教室に入った。小学校から女子校育ちの萌にとっては男子校は日本の文化祭以外では入ったことはない。

教室に入ると、萌はどうしたらいいのかわからなかったが、ある一人の生徒が萌のところに来て話しかけてくれた。

萌ちゃん、こんにちは。僕はジョエルです。シェイから聞いてると思うけど、高校3年生の数学のスペシャリストはこのアボカボーイズグラマースクールで週に3回行うので、萌ちゃんがいる間は僕が面倒を見ることになっています。タカさんから聞いていたけど、中学2年生でこのスペマスの授業を受けるなんてすごいね。

????????

萌は、何が起こっているのかわからなかった。

えっ?これって完全にはめられているの???

萌は知らなかったが、この短期留学の間はすでに数学は男子校で授業が受けることが決まっていたようだった。タカさんも、シェイも知っていたのに一言も言ってくれなかったなんてひどい。と萌は思った。

萌ちゃん、知らなかったの?

知らなかったです。萌は泣きそうになった。

じゃ、今日は僕と一緒に授業を受けましょう。

はい。。。。

今日は複素数平面をやるから、三角関数の計算が複雑だけど頑張ってね。もう、タカさんと一緒に勉強してあると聞いているよ。萌ちゃん本当にすごいね。

ジョエルは、身長も高く本当にかっこいいい男性だった。日本には交換留学生として、1年間日本の高校で勉強したことがあるらしい。タカさんのこともよく知っていて、日本で何度か会ったことがあると話してくれた。数学の難しい用語も日本語で詳しく説明できているし、1年の滞在でこんなに日本語がうまく話せるものか。と感心した。

ジョエルの隣で勉強をしていたが、あまりの予期してなかった流れに完全に放心状態だった。授業が始まって10分くらい経った頃から放心状態も収まり、しっかりと授業を受けることができた。逆関数やz=x+iyなど数週間前に勉強しておいたので問題を解くのに問題はなかった。タカさんもそこまで計算に入れて私に数学を教えてくれていたと考えると、あのおじさんは一体何者?と考えてしまう。

萌は、それにしても、男子校はすごく独特な匂いがすると強く感じた。

授業が終わるとバスに乗るまで少し時間があったのでジョエルと話をした。3つ上の先輩で、かつオーストラリア人なので委縮してもおかしくないのだが、それよりもタカさんと、シェイの笑いの止まらない顔を想像するとジョエルに対して緊張するどころか、いろんなことを聞きたくて仕方がなかった。

ジョエル、私がこの学校に来ることを知っていたの?

もちろん。昨日もタカさんからLINEが来て、萌ちゃんをよろしく。って言ってたよ。

私、この学校にバスが到着して教室に入るまで全然このこと知らなかったから。

そうなんだ。シェイもタカさんも本当に意地悪だよね。でも久しぶりに日本人と話せて本当に楽しかったよ。明日も来るんだよね。

それも全然わからない。でも、そうだと思う。

じゃ、今週末の日曜日のことも知らないよね?

何?

もうバスが出発するようなので、バスに乗らなきゃ。また明日話すよ。じゃね。

はい。

萌はタカさんはいったいいくつ私にトラップを仕掛けてくるんだろう。ただ、騙されながらも本当にいい経験をしてもらっているとも感じていた。

バスでまたLHGSに戻った。モーニングティーの時間で移動しているようだったので萌もダイニングルームに向かった。いつもの席に行くとシェイが笑顔で出迎えてくれた。

萌ちゃん、楽しかったでしょう?ジョエルかっこいいよね。みんな羨ましがってるよ。

シェイ、本当に楽しかったよ。知っているのに何も教えてくれなくてありがとう(怒)ジョエルとめちゃめちゃ話せて本当に楽しかった(笑)

ジョエルのファンはこのLHGSには結構いるから、ジョエルのことはあまり話さない方がいいよ。もう、萌ちゃんがジョエルと仲良く話していたのをyear12の生徒が言いふらしていると思うので気を付けてね。LHGSにはジョエルと仲良くなるためのきっかけにしたくて日本語を選択した子もいるし、ジョエルがホワイトロックのマクドナルドでバイトしているので、ジャンも週末マクドナルドのバイトを始めたし。

なるほど。。。

どの国でも同じだな。と萌は感じた。

それより、今日は火曜日だから学校が終わったらモリセットのホワイトロックショッピングセンターに行けるよ。この地域では一番大きなショッピングセンターなので行こうね。ダイソーも最近入ったし、萌ちゃんが好きなトミーヒルフィガーもあるし、ビクトリアズシークレットもあるよ。

おいおいおい。そこまで私を調査済みかいっ!

学校が終わると多くの生徒がすぐに寮に戻った。ショッピングセンターに行くバスの出発は3時40分なのでシャワーを浴びている時間はない。私服でもいいと聞いていたので、シェイにみんなは私服なのか、制服なのか聞いたら、平日は制服の生徒が多いと言われた。萌はLHGSの制服を持っていないので、私服にすることに決めた。バスが4台待っていて、2番目のバスに乗った。中を見ると私服の生徒も何名書いたので安心した。

萌ちゃん、ショッピングセンターには6時前まで約2時間いられるよ。ショッピングセンター内の単独行動は絶対にダメ。YEAR9の生徒はジュニアだから、必ず3名以上で行動しなければならないことになっているの。私とダニエルとジャンとアリーシャと行動することになるからね。

バスがショッピングセンターに到着して、みんな一斉にショップに向かった。ホワイトロックショッピングセンターは、この地域最大のショッピングモールで300店以上の店がある。アウトレットショップもあり、他の店よりファッションブランドの服や化粧品などが安く購入できるのでみんなショッピングセンターに行くのが楽しみらしい。

田舎のショッピングセンターだけど、新しいショッピングセンターで高級ブランドもたくさん入っていて、レストランやカフェもおしゃれな店が多い。

いろんなショップがあるが、ちょっとだけ日本とは違うかな。と、感じた。元気で可愛い女性をさらに際立たせるVALLEYGIRLはシェイ向き、すごく大人っぽいダニエルはベージュがとてもシックなFOREVER NEW、アリーシャはSportsgirlが今日も似合っていて、ジャンはSUPRE愛好者。萌も、SUPREのタンクトップのセクシーさに惹かれて、タンクトップとBABY TEEを購入してしまった。ちょっとはまりそうな予感。合わせて32ドル。お母さんに怒られそう。とちょっとだけ思った。

次にお目当ての、ビクトリアズシークレットに直行。萌はどうしてもボディークリームを購入したかった。そのために、50ドルの予算はすでに確保してある。ショップ内は本当に多くの人がいる。一つ一つの商品が本当に安い。さすがアウトレットショップだ。ボディークリーム20ドルを購入。

その後にトミーヒルフィガーによった。メンズと一緒だったので、それほど品数があったわけではなかったので、すでにSUPREでもお金を使ったので見るだけであきらめた。

萌ちゃん、パンケーキ好き?

うん、好きだけど。なんで?

今日、みんなでパンケーキ食べる予定だけど、いい?

もちろん。

フードコートから少し離れたところに女子中高生で溢れかえっているレストランがあった。ELEPHANT PANCAKEというパンケーキ屋さんだ。さっそく案内されて席に座る。周りにもLHGSの生徒がたくさんいた。メニューはとてもシンプルで、トッピングを選ぶだけ。オリジナルを全員注文。基本的にこの店の注文は95%以上はオリジナル。というメニューを注文するようだ。

2枚の焼きたてのパンケーキに、生のブルーベリーとラズベリーがふんだんにかけてあって、2枚のパンケーキの上にバニラアイスクリームがちょこっと乗っている。見るだけでも可愛くて満足する。さっそく写真を撮った。生のラズベリーもブルーベリーもとても新鮮で、アイスクリームもちょっと甘いかな?と感じるが舌触りも最高でとてもおいしい。パンケーキとラズベリー、ブルーベリー、アイスクリームを混ぜて一緒に食べるとパンケーキのふわふわ感とブドウのちょっとした甘酸っぱさ、そしてアイスクリームの甘さがきれいに調和して今まで食べたことのない不思議な食感だった。LHGSの生徒が毎週この店に通うのがわかる。

楽しいショッピングセンターでの時間も終わり、再びバスに乗って学校に戻り、本来なら夕食の時間だが、パンケーキでおなかいっぱいになっているので、今日の夕食は取らないことにした。多くの生徒が寮に残っていた。


水曜日、LHGSの生活も4日目に入り、環境にも慣れてきた。休み時間に話しかけてくれる人もいるし、寮でもいつものシェイの友達だけでなくいろんな人が声をかけてくれる。日本語を習っている生徒から日本語で話しかけられたり、日本の質問をされることもある。

水曜日の午後は選択教科になっていて、日本語の選択、シェイは日本語を選択していないので、代わりにジャンが一緒にいてくれる。ランチタイムが終わってジャンと一緒に日本語の教室の前に整列していた。

萌はジャンに英語で質問した。

How long have you been learning Japanese?

Since I was in year5.

Have you been to Japan?

No. but I plan on going to Japan with my family this summer.

Do you? I hope to see you then.

Really ? That would be great !

ジャンは本当におしゃれな女の子。背は私よりも少し高い程度だからオーストラリアでは普通くらい。でもスタイルがとても良くて、どんな服を着ても似合いそう。

日本語の先生はミセスコートニー、オーストラリアでは先生の名前は敬称を付けて苗字で呼ぶのが普通。

萌さん、こんにちは。LHGSの生活はどう?タカさんからいろいろと聞いているわ。3週間だけだけど楽しく生活してね。モリセットは田舎だけど、都心とは違うオーストラリアの良さがあると思うからきっと楽しくなると思うわ。授業でもせっかくだからいろいろと手伝ってもらうからよろしくね。

デタ~。また、ミセスコートニーもタカさんのことを知っている。何なの?この手回しは?

ミセスコートニーは、水曜日と木曜日がLHGSで日本語を教えて、月曜日と火曜日がアボカボーイズグラマースクールで教えているそうだ。実はミセスコートニーはタカさんの高校の同級生らしい。

日本語の授業はすごく興味があった。オーストラリアでは、どれだけ日本に関心を持っているか、どんな教え方をしているのか、どのくらい話せるのか。

LHGSには日本語教室がある。教室の黒板の左側にはひらがなの50音が書いてある大きな表があり、右側には簡単な挨拶と数字の読み方が書いてある。後ろには日本のお菓子のパッケージや人形、アイドル歌手のポスター、富士山の写真など飾ってある。生徒が教室の中でも日本と雰囲気を感じ取ってほしいようにミセスコートニーがいろいろと工夫して教室をデコレートしたそうだ。

生徒は全部で15人。多くの生徒がこの学校の日本語の授業が始まる小学5年生から日本語を始めている。

教室の隅の机に座っていた先生が教壇に立つと、15名の生徒は一斉に立ち上がった。

みなさん、こんにちは。

コートニー先生、こんにちは。

ジャン、週末は何をしましたか?

ワタシハ、ドヨウビニMcDonalds’ でアルバイトをしました。コートニー先生がオコサンたちを連れてキテクレマシタ。とてもビックリしました。

毎週、水曜日の日本語の授業の最初に、週末にあった出来事を一人一人日本語で話すことが習慣になっている。日本語と同じ単語の時だけみんな英語の発音になるところが聞いていてとても面白かった。

みんな毎週日本語で出来事を説明するので、日本語がとても上手に聞こえた。

今日から日本人のモエさんがいます。みなさん、モエさんにいろいろとモエさんのことについて質問してください。

And send me her personal details together in the report until next week.

今日の授業は、萌のことについてみんなが質問をして、それをまとめて来週までに日本語で提出しなければならない授業のようだ。ちょっと恥ずかしい気もするが、みんなの日本語の勉強になるならやるしかないと思った。

カゾクハ?
キョウダイハイマスカ?
ウマレタヒハ?
どこにスンデイマスカ?
スキナタベモノハ?
スキナキョウカハナンデスカ?
ボーイフレンドはイマスカ?
エイゴハイツカラベンキョウシテイマスカ?
シュミハナンデスカ?

いろんな質問が出てきた。萌は一つ一つ丁寧に答えた。聞き取れない時は、わかる人が他の生徒に教えてくれたのでとても助かったようだった。

みんながどんな風に書いてくれるかすごく楽しみだった。ジャンは絵が上手いのか、私の似顔絵を描いていた。思わず似てると思うほどの出来だった。いろんな意味で、自分が何かの役に立っているのがうれしくてたまらなかった。

ジャンから声をかけられ、これからもいろいろと日本語を教えてほしい。と、言われた。とてもうれしかった。他の生徒や他の学年の生徒からも日本語を教えてほしいと言われた、一人の生徒は、NARUTOのクリアファイルを持っていて、それを見せてくれた。すごく好きなようだが、萌はNARUTOが何かよくわからなかった。

また、何名かの生徒から

See you on Sunday!

と、言われた。日曜日に何かあるのだろうか。萌は少し気になった。


留学生活も4日が過ぎた。最初の頃は何をしたらいいのかわからなかったが、少しずつ学校の雰囲気にも慣れて、いろんな人と話をするようにもなった。

Year9の生徒だけでなく、いろんな学年の生徒が萌に声をかけてくれる。日本語の授業を受けている生徒が多いからということもあるが、モリセットはメルボルンから遠く離れているので日本人に会う機会もとても少ないからだと思う。

今日も日本語の授業がある。ただ、今日の日本語の授業は、スケジュールにはJapanese(immersion)と書いてある。

シェイ、今日の1時間目の日本語のイマージョンって何?

イマージョンというのは、授業を日本語だけで行う日本語の授業だよ。昨日の日本語の授業は、ミセスコートニーは説明をほとんど英語でしていたでしょう?日本の学校で行う英語の授業と同じように、普通は日本の英語の授業も昨日の私たちの日本語の授業も母国語で行うよね。イマージョンは基本的には授業中は先生も生徒も全員が日本語で話さなければならない授業なの。私は日本語の授業を受けたことがないのでよくわからないけど、みんなが言うには、一般の日本語は文法構造などが主体で、イマージョンはとにかくみんな日本語でバンバン話そうよ。のような感じみたい。

じゃ、私がこの学校で受けている授業はすべて私にとってはイマージョンクラスということになるの?

まあ、確かにそうなるね(笑)

1時間目ジャンと一緒に教室の外で並んで待っているとミセスコートニーが来た。彼女が私に向かって話しかけた。

萌、今日はイマージョンだからいろいろと協力してね。

はい。

教室に入り着席した。ミセスコートニーが話し始める。

起立。

オハヨウゴザイマス、コートニーセンセイ。

みなさん、おはようございます。

ジャンさん、あなたの行きたい場所はどこですか。

ワタシハフジサンニイキタイデス。

ミセスコートニーが、他の生徒にも好きな食べ物や、新幹線の話、アニメの話、歌手の話などをすべての生徒と話した後で萌に話しかけた。

萌、今日は残りの授業も私の授業を手伝ってくれる?

はい。

そういうと、ミセスコートニーはみんなの方を向いて話しかけた。

今から、私と萌さんが話します。話終えた後で質問します。

萌、私の質問に答えて、同じ質問を私にもして。

はい。

萌さんは、うどんとそばどちらが好きですか。

私はうどんが好きです。コートニー先生はどちらが好きですか。

私はそばが好きです。うどんはいくらくらいですか。

300円くらいです。とても安いです。

そうですか、だれと一緒に食べに行きますか。

友達と食べに行きます。

わかりました。ありがとう。

ミセスコートニーは、まずジャンに質問をする。

ジャンさん、萌はうどんとそばどちらが好きですか。

カノジョハ、ウドンガスキデス。

うどんはいくらくらいですか。

300エンくらいです。

誰と食べに行きますか。

カゾクトタベニイキマス。

よくできました。

ジャンも日本語をしっかりと理解している。正直すごいと思った。

他の生徒の会話も聞いたが、本当に日本語の上手な生徒が多かった。

萌も楽しく授業ができたし、みんなが日本語の授業を真剣に受けている姿に感動してしまった。

萌、次の授業もよろしくね。次はyear8よ。

はい、わかりました。

みんな頑張っているでしょう。

はい。とてもうれしいです。

アメリアって子が萌に会いたがっていたから、話しかけてくると思うわ。イマージョンのクラスが終わったらモーニングティーの時間になるけど、その時にアメリアといろいろとお話をしてあげて。場所は学校に頼んで図書館のカウンセリングルームを借りてあるから。欅坂46ってグループがあるの?私は知らないけど、そのグループのことがとても好きで、萌も好きだとタカさんから聞いていたので興奮状態で会うのを楽しみにしているようよ。一緒の寮にいるけど、会うまでは普通に話しかけないようにしてビックリさせた方がいいとシェイが言っていたので声をかけないでいたようだけど。すごくいい子だからいろいろと教えてあげてね。

わかりました。アメリアってどんな子だろう?そう考える前に、シェイとタカさんはどれだけ仲良く話してるんだろう?萌はLHGSでの生活にはとても満足しているが、シェイとタカさんの手のひらで転がされながら喜んでいる自分を思うと納得できない気持ちも少しはあった。

萌、始まるわよ。

萌は教室を出て、year8のイマージョンのクラスの列に並ぼうとした。ツインテールのとても顔の小さい可愛い子が萌に向かってきた。

モエサン、ワタシハ、アメリアです。ヨロシクオネガイシマス。I think you have already heard from Mrs. Courtney I am a big fan of the Keyakizaka 46.

Yes. I am looking forward to talking with you about it after this class.

Me, too.

アメリアは本当にかわいい、萌は自分の日本の学校の制服をアメリアに着させたらぜったに似合うと確信した。この時間はアメリアの隣で授業を受けた。内容は、year9のクラスの授業と同じだった。

Year8の授業も終わり、アメリアと一緒に図書館に向かった。シェイも通訳も兼ねて一緒にいてくれるらしい。シェイは当然欅坂46には興味がない。ただ、シェイは、今はそうでもないが以前アニメのFreeという水泳の漫画にドはまりしたようだ。オーストラリアに水泳留学をした松岡凛にはまり、シドニーに家族で旅行した時に、アニメの舞台となった場所を訪問して、ついでに凛が通っていたとされる学校のホームブッシュベイボーイズの校門で記念写真を撮ったという筋金入りのファンだ。Free のファンが聖地巡礼するためのガイドを紹介したりして、日本のファンと交流をしているようだ。

I have been excited about your coming to the LHGS and talking to you about the Keyakizaka 46.

萌がタカさんと初めて会った時に、たまたま現在タカさんのエージェントを通して留学している生徒で、欅坂46のあるメンバーと同じある都内23区から少し離れた女子校に通っている生徒がいる話をしたことがきっかけで、お互いに欅坂46のファンであることで、すごく話が盛り上がったことが萌が留学するきっかけになったことの一つだと萌は感じている。

ちなみに萌の箱押しはゆいぽんで、タカさんはベリサらしい。ただ、生徒で面倒見るならあかねんらしい。萌は有田さんとはまだ何度も会っているわけではないが、タカさんがあかねん好きなことはだいたい理解できていたので、聞いた時は内心大笑いしていた。

アメリアが欅坂46の魅力をノンストップで語り始めた。情報は英語のサイトもあったり、youtubeのsubtitleが英語になっているものを見つけてみているらしい。
アメリアはやはりてちが大好きで、サイレントマジョリティーから不協和音までてちのパートは完全にコピーできるようだ。

アメリアは今度マッドマンが主催するコスプレのメルボルン予選に出たいと考えていて、その衣装を日本の制服で髪の毛を黒に染めて、ショートボムにして不協和音を踊りたいそうだ。で、萌にどの制服がいいか一緒に考えてもらいたいようだ。

アメリアならどれでも絶対にお似合いだと感じたが、できるだけ彼女が気に入る制服を選びたいと思ったので、シェイに

今度いくつかの購入できそうな制服の写真を送るので、その中で選ぶ感じでどう?

それを聞いたアメリアも大喜びだった。

アリガトウ、モエ。

Amelia, try on my school uniform if you like.

You have got to be kidding me.

萌の制服を着てみる?の提案にアメリアは興奮状態だった。

シェイも私も着たい(笑)シェイも実は着たかったようだ。ちょっと受けた。

木曜日はレイトナイトと言ってオーストラリアのショッピングセンターは9時過ぎまでオープンしている。で、希望者は事前に届ければ夜9時までショッピングセンターで滞在してもいい。その場合は必ず2名以上で行動を共にしないといけないルールになっている。ランチの時にアリーシャから一緒にショッピングセンターに行けるか誘われて、萌も行きたかったので一緒に行くことになった。4時過ぎにはショッピングセンターに着くので5時間弱は滞在できる。

シェイも寮で勉強すると言っていたし、ダニエルもジャンも寮に残るので二人でいろいろと英語で話せると思うと、ドキドキすることもあるが、英語の勉強にもなるのですごく楽しみだった。

シェイから聞いていたが、アリーシャは学年で成績が一番で萌と同じ医学部希望らしい。なので、日本語も選択してないし、スポーツデーの時もサイエンスエクセレンスと言って、理科の実験などを行う授業とは違がった視点で勉強する特別クラスを選択している。

ショッピングセンターに着いて、服や靴や雑貨の店をいくつか見た。その途中でアリーシャはHMVによりたかったらしく、GLEEのファイナルシーズンのDVDとテイラースウィフトの初期の頃のスタジオアルバム、フィアレスを購入した。オーストラリアの場合は時期が過ぎると価格は落ちるので、日本で購入するよりも安く購入できるようだ。

実は萌はGleeは6巻すべてDVDを購入しているほどGLEEのファンでレイチェルが本当に大好きだった。ファイナルシーズンが特に好きで何度も何度も自宅で見ているし、GLEEから覚えた曲も本当に多い。

また、萌は歌手ではテイラースウィフト、ケイティペリー、アリアナグランデが大好きで、アリーシャが購入したフィアーズはもちろん購入していて、特にその中の収録曲のYou belong with me.のミュージックビデオのスケッチブックでの会話のやり取りのシーンが、萌の最大のお気に入りで、高校生になって彼ができたら、あのパターンをやってみたいとよく妄想している。

Are you a fan of Taylor ?

Yes. I truly like her a lot.

Me , too. I have got the CD. I like “ You belong with me.” the most.

Really ? You know exchanging messages by using sketch books. I love it.

Yeah !

なんか、アリーシャとは話が合う。つたない英語だったがアリーシャも根気よく聞いてくれて本当にいろいろな話をすることができた。全く生まれたところも違うのに、同じ年で同じ方向を向いている同級生の友達ができたことは喜びだった。

一緒にイタリアンレストランに入り、萌はリゾットを注文して、アリーシャはトマトソースのシーフードスパゲティを注文した。

LHGSでの生活も1週間が経ち、土曜日になった。田舎ということもあり、寮生活も思っていたよりも快適で規則もそれほど厳しくない。週末は、それぞれ好きなことをしている。ジャンはホワイトロックのショッピングセンターのマクドナルドでアルバイト。ジョエルと一緒だ。ダニエルは友達と映画の美女と野獣を見に行ったようだ。シェイは部屋でネットをしたりして過ごしている。

萌は、タカさんと数学の勉強をすることになっていた。また、いろいろとこの1週間あった詳細を伝えるつもりだったが、結局すべてタカさんが仕組んだことなので言っても無駄なこともわかっているし、そのことについて不満を言うつもりもない。それよりも萌は自分のことを思っていろいろと滞在を楽しくするためにいろいろと動いてくれたことに感謝している。

約束の時間になるとLINEの電話が鳴った。

Hello ? 嫌味なのに気づいてくれない。

萌ちゃん、元気?滞在はどう?

おかげさまで。

お互いの出方をけん制しながら会話は進むが、お互いに牽制の仕方が激しく本音を全く言わないまま10分以上が経過した。

どんなところ数学のスペシャリストでやってる?

z-planeです。

そうなんだ。Determinantは?

まだやってません。思っていたよりも英語ができなくても単語を辞書で調べればそれほど難しくなく解けますよ。

だろうね。

じゃ、少し勉強しよう。

そうして自然に勉強を始めた。勉強が終わるとタカさんから

萌ちゃん、明日はジャパンフェアだよね。

なんかよくわからないけど、そんな雰囲気でした。

折り紙持ってるよね。それできるだけたくさん持って行って。前に言ったように、カメラやかえるなどが人気だと思うから。

すみません。ぜんぜん意味不明なんですが。。。。

じゃね。


オーストラリアに到着して1週間が過ぎた。今日はジャパンフェアがあるようで、シェイやジャン、アメリアなどの関係者はすごく緊張しているようだった。今日まで詳しい話は聞いてないが、このモリセットは郊外に立派な日本庭園がある。これは、昔モリセットが第二次世界大戦の時に日本人の捕虜の収容所があったことで、日本との結びつきが強い。日本人が多く住んでいるわけではないが、このモリセット日本庭園では、いろいろな日本関連のイベントが開かれ、7月の最終日曜日にはジャパンフェアが開かれる。

シェイ、どんな出し物をやるの?

今回は、日本の文化をクイズ形式で教える劇をやることになったの。

そうなんだ。どんな感じ?

例えば、オーストラリアの回転ずしで家族で20皿食べたら、会計で70ドルくらい支払いをしました。同じように、私が日本に行った設定で東京にある回転ずしに行って同じようなものを20皿食べて、会計をしようとして請求書を見たらびっくりしました。さて、請求書の金額はいくらだったでしょうか?それを劇にしてやるんだよ。

面白そうだね。木曜日にショッピングセンターの回転ずしを見たら、1皿3ドルとか4ドルの皿しかなかったのでびっくりした。この値段じゃ私は行けないね。

他にもどんなものやるの?

そうだね。学校生活の中で、オーストラリアでは行われていませんが、以下のようなことは日本では行われているでしょうか、いないでしょうか。のようなクイズで、

生徒が掃除をする。
夜9時過ぎまで学校のグランドで生徒が運動をしている。
ランチは教室で食べる。
これを演劇仕立てにしてやるの。

面白そうだね。

本当に一生懸命練習したからね。萌ちゃんは言ってなかったけど、ジュディーと一緒に折り紙教室をやってほしいの。タカさんから聞いているでしょう。

うん、昨日聞いた。(だったら最初から言ってくれよ。)

参加者は、ジャパンフェアが終わった後に、ショッピングセンターにある日本食レストラン おいしいストーリーで日本食食べ放題ができるよ。

そうなんだ。と、萌もちょっとテンションが上がった。それほど日本食に惹かれるわけではないが、日本人以外の人が経営するオーストラリアの日本食レストランとはどんな感じか体験したかった。

ジュディーの車でモリセット日本庭園に向かった。郊外にあるので時間はかかるが、到着した瞬間、施設の美しさに魅了された。大きな敷地一面が緑でおおわれていて、真ん中に小川があり、小川のずっと先には池がある。池の周りはまだ咲いてない桜の木で囲まれて、池の真ん中には木製の橋が架かっている。あと2か月もしないうちに桜フェスティバルがここで開催され、その時はいろんな催しが行われるらしい。

萌は、到着してすぐに携帯を取り出し写真を撮った。ジュディーと私はみんなと分かれて、折り紙チャレンジのブースに行った。

折り紙のブースは、長テーブルがあって、そこでみんなが折り紙を私たちが教えながら折ることになる。萌は日本からいろんな模様の折り紙を2000枚くらい持ってきた。有名なアニメのキャラクターの折り紙、カラフルな模様の折り紙、日本語の書いてある折り紙などいろんな折り紙があって、余ったらほしい人にあげられればと考えていた。

私たちを含めた折り紙グループは5人。小学校で日本語を教えるドナ、モリセット大学で日本語を専攻しているエマ、そして、かつて日本に留学経験のある、サマンサとジュディーと私だ。

10時に開園すると、一瞬で折り紙ブースは人でいっぱいになり、順番を待っている人がいる。ジュディーの提案で、事前に 鶴、カメラ、蛙、ハート、リボンの5つに絞って、それぞれ希望のものを伝えてそれを一緒に折るやり方にした。

いきなり私は、まだ小学校に入ったばかりであろう、男の子とお母さんのペアを受け持った。男の子はまだ十分に折れないので、ポケモンの折り紙を渡して自由に折り紙で遊んでもらって、お母さんと一緒にカメラを折った。カメラなら、折った後に男の子が楽しめると思って萌から提案した。折り終わった後に男の子はとても喜んでくれた。

次に担当したのは、50歳前後の男性。ムーブンと名乗ってくれた。彼は鶴が希望だった。男性だったが手先が器用でキレイに折ってくれた。折り紙を折るのは人生で初めてだと伝えてくれた。萌はムーブンからお礼を言われた時にちょっとうれしかった。

食事休憩をしてもよかったが、3時に終了することと、その後に日本食レストランでの打ち上げで食べ放題を注文してあるので、食事休憩を我慢することは問題なかった。

萌は合計50人ほどの人に折り紙を教えたようだ。忙しくて他のブースのことは全く分からなかったが、多くの人たちがこのジャパンフェアをすごく楽しんでくれたように感じた。

折り紙をしている時にも、いろいろな質問をしてくれた。それは、日本のどこに住んでいるのか。今モリセットで何をしているのか。この服可愛いけど、学校の制服?それとも私服?ドラゴンボールを知ってる?多くの人がとても日本に関心を持っていて短い時間だが楽しい時間を過ごせたと心から感じた。

3時が過ぎ、すでに入場者はすべていなくなり、関係者だけが残った。設営などは専門の業者に委託しているので、萌たちが特にすることはない。折り紙もすべて来場者に渡してしまったので自分のバッグしか持っていない。ジュディーと2人で駐車場に戻ると、すでにシェイ、ジャン、アメリアはいた。

シェイ、劇の方はどうだった?

めちゃ、楽しかったよ。多くの人が見てる中で何かやるって快感だよね。アメリアもジャンもジョエルもみんな上手にやってくれたし、劇の休憩時間にはいろんな人から声をかけられたし、いろいろと日本のことも教えたりしたよ。萌はどうだった?

私たちのブースも休みなしに5時間ひたすら折り紙だけをしてた。(笑)こんな経験今までになかったので、本当に楽しかった。

入場者も出演者もみんな満足したようで、このようなイベントを行っているモリセットの町は田舎ではあるが、とてもいい場所だと感じた。

みんなジュディーの車に乗って、ホワイトロックショッピングセンターに向かった。5時前に到着したので、店も閉店していて、大きなスーパーとレストラン街のみが営業している状態だった。

そのレストラン街の一番外れにあるのが、日本食レストラン、おいしいストーリーだ。店の入り口にはラーメンと書いた大きなのれんがあって、日本を意識した店構えだ。今日はジャパンフェアのスタッフや出演者のための貸し切りだが、すでに多くの人が食事を始めていた。

ジュディーが私たち5名分の招待状を入り口で見せて店に入った。5人は奥の席についた。店内は中央に、たくさんの寿司が食べ放題になっている寿司バーと日本茶を含むお茶の飲み放題があった。

それ以外のメニューはオーダーすることになる。萌はせっかくだからラーメンを食べてみようと思ったのでメニューからラーメンを探した。しかし、いくらメニューを見てもラーメンはない。シェイに

シェイ、私ラーメン食べたいんだけど、メニューにラーメンないよね?

そうなんだよね。私もラーメンののれんがあったのでラーメンがあると思って入店した時があったけど、メニューにはラーメンがないので、ラーメンののれんがあったのでラーメンがあると思ったけど、メニューを見ても見つからないんですが。と、尋ねたら、

あれは、なんか日本らしいので、日本に行った時に購入したと言われたの。

その代わりにうどんがあります。言われちゃった。たいして変わらないと思ってるんじゃない?

そうだね。じゃ、うどんを注文しようかな。UDON Japanese noodles, please.

萌はうどんを注文した。15分くらいして届いた。

出てきたうどんよりも、まず容器に驚いた。日本の普通のラーメンの倍近くある器、こんな食べられない。そして、たくさんの人参と鶏肉。麺が人参と鶏肉で見えない。その上スープの色が変。

ただ、残すこともできないと思い、仕方なく食べ始めた。食べるとそれほどまずいわけでもなく、人参もうどんにあっている。スープもすごくおいしいとは言わないが、まずくはない。と、言いながら完食してしまった。

とにかくオーストラリアの場合は、注文するメニューの量が多い。別にシェアを前提とするものではないのだが、日本人にとっては多い。なので、萌は本当は寿司や餃子、お好み焼きなども食べたかったのだが食べることはできなかった。

私たちのテーブルにジョエルが来てくれた。ジョエルも劇に参加したためにジャパンフェアでは会うこともできなかった。

萌ちゃん、ジャパンフェアどうだった?

とても楽しかったです。折り紙やったんですが、みんな一生懸命になって折ってくれて、出来上がった時に喜んでくれる姿がとてもうれしかったです。

本当にこういう機会を大切にして交流を図るのは大切だと思うよ。こんな立派な日本庭園があるのはオーストラリアではモリセットだけだし、都心部からかなり離れている地域なので日本文化が十分に浸透してないけど自分たちがいろいろな活動をしていかなければならないと思う。

明日も数学で学校来るよね。

はい。

今回のジャパンフェアは萌にとってはいろんな意味で海外で生活をすることの大事なことを学んだと思う。タカさんが言っていた、

留学は英語を学ぶことだけではないんだよ。3週間であってもそれ以上のものが必ず見つかるから。

と言ってくれた意味がだんだん分かり始めてきた。


オーストラリアに到着してから1週間が過ぎた。萌にとって今まで生きてきた中で一番濃い1週間だったかもしれない。オーストラリアに中学生や高校生が留学するというのは、英語力を伸ばしながら、これからの国際社会の中で生活していくために本当に必要なものをしっかりと学びながら成長していくのだと感じる。

萌は今回の滞在の中で、英語は相手に言いたいことが通じればいいというわけではない。ということを学んだ。

日本で英語の授業に英語にはあまり敬語がない。I はI であり、my fatherはmy fatherであり、日本のように目上の人に話す場合は父であっても、友達同士ならパパでもお父さんでも大丈夫なようにフランクだと教わる場合もある。

しかし、オーストラリアの学校の授業を受けていると、先生に対する生徒の話し方は変わる。細かな点はまだ1週間滞在しただけの萌にはわからないかもしれないが、しっかりとした伝え方があることは理解できた。

また、ダニエルの姉が結婚することになった時に、Is your sister married?と言ったら、シェイが細かく違いを説明してくれた。She marries の時とShe is married とShe gets married の違いをしっかりと教えてもらって本当に参考になった。他にもwillの使い方とか、今まで考えている使い方とは違うこともシェイから学んだ。

萌が今まで夢見ていた海外留学。見知らぬ国で、出会う人すべてが今まで会ったことのない人たち。出発前に予想していたものとは大きく違ったが、何もわからないで妄想していたことよりも、実際に生活をして体験したもののインパクトは強烈だった。

教室の入り方、食事のとり方、授業の進め方、授業の内容、先生との接し方、選択教科の取り方、いろんなことが日本とは違う。これは、説明して理解できるものではない。実際に学校生活を体験しなければできないものだと思った。

萌は今中学を卒業してオーストラリアの高校に留学するか、今の学校に残って大学受験を目指すか本当に迷っている。

留学してもいいし、今いる学校に残ってもいい。
作者より
この作品を通して、オーストラリアの学校について、寮について、生活についての一部でもわかっていただければとてもうれしいです。

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ