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異世界転移女子~ハルカ、無双します!~ 作者:神崎 創

第二章 目指すはバルデシア大陸・先行の旅路 編

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36) 困難と、ハルカのポリシーと

 次に目指すはキーゼ島である。
 が、やはりここでも船が傷んでいた。
 ライケルらポームの船があるとはいえ、彼らの務めはロバルド島までである。ここから先はダッツ達ロバルドの船乗りに代わってもらわねばならない。
 ポームもドボスから解放されて間もないゆえ、ライケル達はすぐにでも戻って復旧を急ぎたかったであろう。しかし、そこは船乗り仲間同士助け合うようにできている。数日というものロバルドに残り、船の修復を手伝った。おかげで、キーゼ島へ渡る便船は何とか確保された。

「身体には気を付けるんだよ、二人とも。――危ないときは無茶しちゃ駄目。逃げるんだ。命さえあれば、あとは何とでもなるんだから。ね?」

 ポームへの便船が折り返して行く日、ハルカやランリィとの別れを惜しんだエミー。
 アルセスを出てからここまで同行してくれた彼女だが、ライケルらと一緒にポームへと戻らねばならない。
 涙で顔をくしゃくしゃにしている彼女に、ハルカもついうるっときた。

「ここまで本当にありがと、エミーさん。心配しないで。あたし達、エミーさんの言いつけ、ちゃんと守るから!」

 こっくりと頷いたランリィも、その目を真っ赤にしている。
 エミーはがばっと二人を抱きしめ

「ああ! 本当にいい子達だよ! ――エティシア、どうか、この子達を守っておくれ! お願いだから!」

 彼女なりの祈りを捧げてくれた。
 そのあと、ウォリスやゼイドに向かって

「この子達のこと、頼んだよ? それに、あんた達も、十分に気を付けておくれ。いい男がガルザッグにやられるなんざ、見られたものじゃないからね」

 言い添えた。
 この二人についても、彼女は何かと上手くやっていた。

「ああ、きっと、任されたぜ。エミー姉さんも達者でな。もし姫様達に会ったら、俺達は元気でいると伝えておいてくれ」

 ゼイドだけは相変わらず不愛想な面つきのままだったが、それでも短く

「……世話に、なった」

 礼を述べたのであった。エミーの快活な性格は、彼としても悪くはなかったのであろう。
 ライケルらの出港を見送ったあと、ハルカ達はダッツとキーゼに向かう手筈を話し合った。

「聞いているとは思うが、キーゼはここより北西だ。西へ真っ直ぐ行けばバルデシア東岸へ最短だが、海流が速くて突っ切ることは到底不可能だからな。――そのキーゼなんだが」

 今どうなっているのかは正直わからない、とダッツは告げた。ポームにおいてロバルドの実情がわからなかったのと同様の事情による。この一年近く、キーゼとロバルド間の交易も絶たれていたのだ。
 ただ、と彼は続けて

「オルロスの野郎が魔族兵を呼んだときにキーゼを通ったことだけはわかっている。そしてそのときに、抵抗した連中がいたこともな。……ここまで言えば、想像がつくだろ?」
「島の人達は、殺されてしまっているかもしれない、と……」

 ポームのライケルにせよロバルドのダッツにせよ、魔族に征服されながら上手く生き延び得たのは船乗り達の迂闊な抵抗を戒めたからにほかならない。屈辱も多かったであろう。しかし、結果として彼らは自由を勝ち取ることに成功した。
 ところが、キーゼ島においては、進駐してきた魔族兵に対して抵抗を試みたという。
 のちにその魔族兵がアルセス島まで送られてきたことを合わせて考えれば、キーゼ島ではどうなったのか、言い当てることができよう。
 そして――もしその通りだったならば、一つの困難が予想される。
 運よくキーゼ島を奪還できたとして、果たしてそこからバルデシア東岸へ渡る便船が残されているのかどうか。
 船がない、もしくは船乗りがいないとなると、大陸へ渡る術はないのだ。

「……と、いうことだ。前にも言ったが、あんたらが大陸へ渡りたいっていうなら、できる限り手は貸す。そういう約束だからな。だが、キーゼから先へと船を動かすのは別だ。できる限り、という条件には入らねェからな。そこをどうするのかは、メスティアの武人さん達で相談してみてくれや」

 メスティア勢の四人は、内陸にある旅宿をあてがわれている。
 引き上げてきてから、メスティア軍としての軍議を開くことにした。
 が。
 四人とも、海のことに関してはまるっきりの素人である。船乗りのダッツからどうしようもないと言われた以上、彼らに別の思案があろう筈もなかった。
 ウォリスは

「ここまできて、手詰まりかよ。まあ、まだそうと決まったわけじゃねェがな……」

 諦めてはいけないと思ったか、気を取り直すように言い直した。が、どうにも不安を拭い去れないらしい。
 うーんと考えていたハルカは、ふと思いついて

「ダッツさん達に頼んで、キーゼ島を回って大陸まで船を出してもらえないものでしょうかね? その、西の海流は通れなくても、大回りすれば大陸へ着けるんでしょ?」
「……そいつは不可能だ。ここらの海流の激しさは中途半端じゃない。航路の潮をよく知る船乗りでなければ流されるか難破してそれまでだ。船があれば済むということではない。だからあの男はキーゼまで、と念を押したのだ」

 ゼイドに、あっさり却下されてしまった。
 しゅんとしているハルカ。
 が、すぐに顔を上げると

「だったら、とりあえず行けるところまで行ってみるしかないんじゃないでしょうか? キーゼ島へ渡ってみて、この目で現状を確認して、それからのことはそれから決めましょう。そうすれば、何か別の方法が見つかるかも知れないじゃないですか!」

 提案してやった。
 どうせ、この場の誰もが、有効なアイデアを持ち合わせているわけではないのだ。
 ぐずぐずと考えていないで、やれるところまでやってみる。
 それがハルカのポリシーでもある。
 気持ちが伝わったのか、難しい顔をしていたウォリスも苦笑いを浮かべつつ

「ハルカの言う通りかも知れんな。皆殺しに遭ったのか生き残っている者がいるのか、まずはそれを確かめるのが先決だ。仮に駄目だったとしても、もしかしたらティガーラからやってくる船があるかも知れん。大陸からこっちに渡るには、必ずキーゼ島には寄らにゃならんからな。諦めるにはまだ早いってモンだ」
「……その船が、ガルザッグの軍船ならどうする?」

 ゼイドが尋ねると、ウォリスはニヤニヤしながら

「そんときゃ、お前さんの出番だろう。自慢のその剣で、好きなだけぶった切ってやればいいさ。――ああ、ただし、魔族だろうと船乗りだけは斬るなよ? ティガーラまでは使い道があるからな」
「……違いない」

 決まったようで、何も決まっていないのかも知れなかった。
 が、これでいいとハルカは思う。
 今までは何かしら幸運に恵まれて、順調にやってくることができた。
 しかしながら順調というのはそうそう続くものでなし、むしろ困難のほうが出会う回数は多いに決まっている。
 だからこそ、皆で知恵を出し合い、力と心を合わせることが大切だという気がする。
 アルセア村で決起と決まったとき、彼女は皆の前で言った。
 誰か一人だけ優秀でもダメなんです。みんなが一丸になって『絶対勝ってやる』って思って協力し合ってこそ、はじめて勝てるんだって思います――。
 心が合わさったとき、ダメだと思われたことであっても、予想だにしない方向に動き出すかもしれないではないか。

「――って、思うんだけど、どうかしら? ランリィ」

 寝床に潜り込んでから、ハルカはそう訊いてみた。
 彼女に抱きしめられているランリィ、もぞもぞと顔を上げてにこっと微笑み

「はい! 私も、そう思います。力を合わせれば、乗り越えられない困難はないに違いありません」
「ありがと、ランリィ! 大好きよ!」

 小柄な身体をぎゅっと抱き、さらさらの髪に頬を寄せた。
 されるがままのランリィも、まんざらではなさそうにしている。こうしてハルカに抱きしめられると、果てしない幸福感を感じてしまう。
 この二人、寝台で眠るときはいつも一緒に眠るのが習慣になりつつある。
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