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異世界転移女子~ハルカ、無双します!~ 作者:神崎 創

第二章 目指すはバルデシア大陸・先行の旅路 編

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32) 一方、その頃

 夜明けを待たず、ポームの入り口が見える位置まで進出していたウォリス、ゼイド、エミーの三人。
 門は固く閉じられたまま静まり返っている。周囲に人の気配はなく、静寂すぎるのがどこか不気味なほどであった。
 近くの茂みに身を潜めつつ、ウォリスは門への注意を怠らない。
 一人、ゼイドだけは離れた位置で背を木の幹に預けてじっと座っていた。愛用の永斬剣を抱くようにして落ち着いているその姿は、いかにも戦い慣れした玄人の剣士を思わせた。
 エミーはといえば、街に潜入していったハルカとランリィの安否が気にかかって仕方がない。二人を見送ってからというもの、すっかり落ち着きを欠いている。
 ここに来るまでの途中、何度も躓いたり道を踏み違えそうになっては、ウォリスをハラハラさせた。
 約した通りの定位置に着いてからも

「ウォリスの旦那、本当に、大丈夫かねぇ、あの子達」

 そういう問いを、もう何度口にしたかわかったものではない。
 都度、ウォリスは苦笑とともに

「そう心配なさんな。ハルカなら、大丈夫だ。あいつの強さは、一緒にアルセスに突撃した俺がよくわかっている。むしろ」呆れたように片眉を下げ「……ポームの街ごとぶっ壊さないか、俺はそっちの方が心配だよ」

 エミーを安心させるように言うのだった。

「だったら、いいのだけど……」

 彼女の目線は、入り口を閉ざしている門に釘付けになっている。
 柄塊を手放さないでいるのは、もし何かあればすぐに飛び出すつもりでいるからであろう。
 待つうち、宙天の濃紺が徐々に薄れ始めた。
 周囲にそびえる木々の梢や茂る葉の形がはっきりとわかるようになっていく。
 遠くで鳥のさえずる声が聞こえる。
 ――夜明けが近い。

「ウォリスの旦那、もう約束の夜明けだよ? それにしちゃ、一向に動きがないじゃないか」

 いよいよ気が気でないエミー、口調がウォリスを詰るようである。
 まあ待て、と彼女を宥めておいて、ウォリスは離れた場所にいるゼイドに声を掛けた。

「ゼイド! 頃合いはどうだ? ハルカ達、いくらなんでももう、ポームの街には入っただろう。ぼちぼち、こっちから助け船を出してやってもいいかと思うのだが」
「……」

 眠ったように目を瞑っていたゼイドだったが、ウォリスの呼びかけに、無言ですっくと立ち上がった。
 了承らしい。
 ウォリスはエミーに目線を移すと

「いい、とさ。――じゃあそろそろ、俺達も動くかね」
「やらいでかい! あたしゃもう、待ちくたびれてしまったよ」

 周囲に注意を配りつつ、三人は次々と茂みから飛び出した。
 素早く門へと駆け寄ると、左右に取り付く。左側にゼイド、右側にウォリス、エミー。
 間近でその造りを見確かめたウォリスは二人に 

「……やっぱり、かなり頑丈だな。こいつはエミー姉さん自慢の柄塊を叩きこんだとて、ぶち破るのはちょっと容易じゃねェ。向こう側から開けさせておいて、そこから滑り込むのが得策かと思うのだが」
「……よかろう」

 短く返事をしたゼイド。
 真っ先に斬り込もうというのか、すでに右手で剣を撫している。

「じゃあ、あたしがこいつで何度か叩いてやるよ。お行儀よく手で叩いたところで向こうさん、気付くかどうかわからなそうだしねぇ」

 エミーが柄塊を両手で握った。
 あわよくばこじ開けてしまおうというのか、思い切り叩きつけるべく斜め下に構えて力を溜めている。
 そうして、今まさしく一撃しようとした、そのときである。
 轟音とともに大きな扉が吹っ飛んだ。
 門扉は三人の鼻先を掠めて宙を流れ、はるか向こうの森の中へと沈んでいった。

「……!?」

 いきなりのことに、三人は度胆を抜かれたように、呆然としている。
 滅多に表情を表さないゼイドですら、大きく目を見開いたままである。

「あっれー? 力加減、間違っちゃったかなー? ぶっ壊しちゃダメだろって、またウォリスさんに怒られちゃうかもしんない……」

 ぶつぶつ言いながら、ぶち抜かれた門からのこのこと出てきた人影がある。

「お……? ハルカ、ハルカなのか?」
「ハルカ! 無事だったんだね!」

 それをハルカと認めた途端、ウォリスとエミーの相好が同時にほころんでいた。
 当の本人はといえば、

「……あ! ウォリスさんにエミーさん! ゼイドさんも一緒ですねー。わー、打ち合わせ通りだー。すごいすごーい」

 のんきなことを言ってのけた。
 状況がわかっていない三人は、各々さっと武器を構え

「ご苦労だったな、ハルカ! 今、どんな具合だ? 街の人々は無事か?」
「あたし達が来たからには安心おし! ドボス兵の二十や三十、ぺったらこにしてやるよ!」

 と、勝手に殺気立っている。
 なおも戦いが続いているものと思っているのだ。
 そうと気付いたハルカ、あはは、と笑って

「あ、大丈夫ですよー。残っていたドボス兵なら、あたしが全部ぶっ飛ばしておきましたから。――それよりも、ライケルさんとか街の人達が、メスティアの人に会ったらお礼を言いたいって言ってました! 会いに行ってあげてください」
「……!?」

 三度、ウォリスらは度胆を抜かれざるを得なかった。
 彼等の加勢を要するどころか、ハルカはたった一人で――ポームの街を奪還してしまったではないか。
 そのハルカ、ごしごしと目を擦って

「あー、すごく眠いと思ったら徹夜してたんだっけ。忘れてた。あたし、どっかで少し寝させてもらいますねー。――ええと、ランリィはどこ行ったかしら?」

 一晩中起きていたのがこたえているのか、ふらふらとした足取りで街の方へと戻って行った。
 完全に出番を失った三人は、呆然とその背中を見つめている。
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