挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異世界転移女子~ハルカ、無双します!~ 作者:神崎 創

第二章 目指すはバルデシア大陸・先行の旅路 編

25/41

25) 新たなる絆・それはかけがえがないもの

 職人達の心からの贈り物にすっかり気をよくしたハルカだったが、もう一つ、彼女を喜ばせる出来事があった。
 翌日の深夜。
 寝台の上で眠っていたハルカがふと目を覚ますと、傍に跪いて静かに控えている人影がある。

「……お休みを妨げてしまいましたか。申し訳ありません」

 ランリィであった。
 痛々しかった無数のあざや傷はすっかり癒え、ほのかな光に照らされた彼女の肌は白々と美しい。胸と腰の周りを動きやすそうな軽装の衣装で身を包んでいる。日本でいう忍びの者、くのいちに似ているようだとハルカはふと思った。ほどよく伸びた髪を後で束ね、前髪を垂らしているのも、それっぽいではないか。
 こうしてみると気品があり、とても年下の少女には見えない。
 森で出会った時の荒んだ印象が、まるで嘘のようである。
 ハルカは驚いて跳ね起き

「ランリィ、身体はもういいの? 明日あたり、様子を見に行こうと思っていたのに」

 ずっと気にかかってはいた。
 が、城から出ようとすると何かとうるさく止められるので、会いに行けないままだったのである。

「ありがとうございます。この通り、もう大丈夫です」

 小さく、身体や手足を動かして見せた。

「――すっかり治りましたので、あらためてハルカ様にお誓いしに参りました。お目覚めまで傍でお待ちしようと思っていたのですが」
「誓い?」

 はい、とランリィは頷いてから、

「私は今日より先、ハルカ様の忠実なしもべとなります。ハルカ様のためにはこの命、いつでも投げ出してご覧にいれます。ご命令とあらば、火の中であろうと水の中であろうと飛び込みます。自由に使える手足が四本、新たに生えてきたものとお思い下さい」

 と言ってから、ランリィはにっこりと微笑んだ。
 出会ってから見せた中で一番嬉しそうな、最高の笑顔がそこにはあった。
 しかし、ハルカはちょっと怒った顔をして

「ランリィ? そういうの、やめなさいって言ったでしょう?」
「はあ?」
「あたしは、あなたのことが大好きなの。一緒にいたいの。だから、命を投げ出すとか身代わりになるとか、そういうのはやめて頂戴。あたしのためだっていうなら『自分の身の安全を第一にします』 って言って欲しいな」

 腕をとってぐいと引き寄せつつ、抱きしめた。
 痛いくらいに力がこもっている。
 一瞬、きょとんとしたランリィだったが、言われている意味がわかったのか、

「あ、ありがとうございます、ハルカ様……。私のような者を、いつもそのように気遣ってくださって……」

 たちまちその両眼に涙を浮かべた。
 すぐに拳でごしごしと拭い去り

「お言葉、しかと胸に刻みました! 今後、自分の身を粗末にするようなことはいたしませんから、どうかご安心ください! ハルカ様をお守りしつつ、あわせて自分の身も守ります!」

 素直な娘である。
 ようやく、ハルカはきゃっと笑って

「はい、よくできました! それでいいのよ、それで。いい子いい子……!」

 子犬でも可愛がるようにして、頭を何度も撫でてやった。
 ランリィは逆らわず、されるがままになっている。
 ハルカの愛撫が落ち着くと、

「夜も更けております。お休みのところ、申し訳ありませんでした。どうか、ごゆっくりお休みください。私が朝までお側についておりますゆえ、ご安心ください」

 寝ずの番をする、ということらしい。
 いかにも忠実な従者らしいが、ハルカとしてはそういうのは好まない。

「一晩中、寝ないで守ってもらうっていうのも、なんか落ち着かないよ」

 あなたも眠って、と言いかけたところでふとひらめいた。

「――じゃあ、あたしは眠るけど……ランリィ、一つ、いいかしら?」
「はい、なんなりと!」
「一緒に寝よ? このベッド、すごく大きすぎて落ち着かないの」

 えっ? と、一瞬困った顔をしたランリィ。
 主と一緒に眠る従者がいたものだろうか。
 が、ハルカの他愛もない笑顔を見ていると、強いて辞退する気にもなれず

「はあ。ご指示とあらば、そのようにいたしましょう」

 そう言っておいて、すぐにするりと身を寄せた。どちらかといえば、まんざらでもない。
 ハルカはランリィの小柄な肉体を、まるで抱き枕のようにぎゅっと抱き締め

「命令じゃないよ。これはお願いかな。大好きな妹に、一緒に眠ってほしいって……」

 消え入りそうな声は、すぐに寝息へと変わっていた。
 気持ちよさそうに眠るハルカの寝顔を、ランリィはじっと見つめている。
 その相好がいつしか、嬉しそうにほころんでいた。

(この日をずっと、夢見て参りました。素晴らしい人物にお仕えすることができる日を。ずっとあなたのお側においてくださいませ、わが主よ)

 胸中で呟いたが、そっと訂正を加えた。

(いえ……お姉様)

 ハルカの大きくて柔らかい胸に頬を寄せたランリィ。
 彼女もまた、すぐに安らかな寝息をたて始めた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ