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夏色少年期
作:三神 優


―――恋なんて知らなかった。恋なんかしないってずっと自分に言い聞かせてた。そんなんだから、こんなキモチには気づけなかったのかもしれない。


「こんにちわ〜・・・」
「あぁ、優子ちゃん、こんにちわ。とりあえずあそこで素振りしてて。」
「はい。」
私は先週、剣道部に入ったばかりの新人だ。先輩たちの剣道をみて、すっかりほれ込んでしまったのだ。そんな憧れの先輩がいるからとか、練習がラクそうだからじゃない。本当に先輩たちの剣道に惚れただけ。女子も男子も仲がいい部活で、最高だと思う。でも、うるさいのはいる・・・んだよね。
「うわー昨日休んだだけなのに、すごく懐かしい!!!」
「山下先輩うっさいです!!練習させてください!!」
「あぁ?新人にはいわれたくないよ!さっさと練習してろ!!」
「!!」
「こらこら・・・山下も優子ちゃんもやらないやらない。」
3年の女子部長さんが私たちを止める。静かだった剣道部も私が来たからってもりあがってる・・・・らしい。とくに山下先輩は入部初日からからかってくる。しかも私だけ。なんで他の子にはやらないんですかって聞いたら、「なんとなく。」って答える。本当に訳分からない先輩だと思っている私。新人(1年)は私のほかに、5人いる。その5人は、私と先輩をずっと変な目で眺めてる。そんな態度が気になってしょうがない。最初は素振りだけだから、そんなに疲れないんだろうけど、これからもっと疲れてくるんだなってかんじる。
「おーい岬!素振り終わったら腹筋100ねー。」
「ちょっ!山下先輩!なんで私だけ?!」
「みんなには言えないから〜んじゃ、よろしく」
そしてなんでヴイしてくるんですか?!このドS!!
「あ、優子ちゃん、やらなくていいからね!山下の言うことなんか聞かなくていいんだから!!」
言われなくても聞きませんよ。そんなうっさい先輩の言うことなんか!!
「優子ちゃんはいいね。先輩にからかってもらえて。しかも優子ちゃんだけ名前呼びだし。」
「樹乃ちゃん・・・山下先輩からは呼ばれてないし、ってかからかわれていいの?あんな先輩に・・・・」
「おい、だれがあんなだ!!岬!」
「なんなんですか!先輩は!女子の話ですよ!」
「そーゆー悪い話は聞こえてきちゃうんだよ。自然と。」
「もう練習戻ったらどうですか。」
「ヘイヘイ。」
武道館の入り口から顔を覗かせていた先輩は、ヒョイっと中へ戻っていった。へんな声をだしながら、。。。
「はぁ〜・・・樹乃ちゃん、アレのどこがいいの?ただうるさいだけだよ。」
「それが楽しそうなんだもん!いいなぁって女の子は思うよ!」
(そうかな・・・)
「じゃあ勝負してよ!どっちが山下先輩を手に入れられるか!!」
なんでそうなるの?!私はすきでもなんでもないのに!!樹乃ちゃん、勝手なこと言わないでよ!でも、勝負は受ける立ちだから・・・。まあ勝負として。。。。ということで。
「いいよ。そんな勝負できめることじゃないけど!!」
「期間は一ヶ月!それまでに落とせなかったら、5000!!」
「ご・・・・5000!!?」
お金がかかっちゃった!!ヤバイ!どうしよう・・・。
「一年、中入って面打ちしろ。」
『はーい。』
樹乃ちゃん・・・どうして?
武道館に入りながら、じっと樹乃ちゃんのことを見つめた。ものすごい瞳をしていたので、体全体に、痺れが通った。
「んじゃ、目の前にいる先輩に面打ちしてみろ。思いっきりだぞ。」
先生の合図によって面打ちしようとすると・・・・
「せんせー待って!俺の相手、岬に変えてください!!」
「やッ山下先輩!なんで!」
わざと山下先輩のところに行った樹乃ちゃんが私のほうをにらみつける。
「なんでですか!山下先輩!」
面をかぶっている山下先輩に手を口元に近づけ、小声で言った。
「なんかお前じゃないとやる気しないんだよな。」
先輩も小声で返した。
「はじめ!」
先生の声が武道館中に響き渡る声と竹刀が面を叩く音が重なり合う。私は思いっきり山下先輩に面を入れた。山下先輩の反応が薄い。きっとうまくいかなかった証拠だ。次は、次は・・・・と面を打ち続けていると、やめっと先生の声がする。そのあと先輩たちはドッと面打ちした一年にアドバイスをした。山下先輩は、こてをとり、親指を立てて笑うだけだった。その笑顔につられて、私も笑った。その様子を、樹乃ちゃんはどんなキモチで受け取ったのかな・・・?




6時50分、完全下校の時間。私は母の車に乗り、同小の友達に手を振った。そして母に、
「今日も山下先輩うるさかった〜・・・」
とぐちっぽく言うと、にっこりして、
「好きな子以外にそんなちょっかいださないわ。母さんの経験よ。」
――好きな子?――
私が山下先輩の好きな人?!いや、ありえない、ありえない・・・・。あんなに言ってくるのはきっとムカつくからだよ!!
「そんなんじゃないよ。あんなうるさい先輩が!」
「まぁ見てなさいって。」
そんなことを話している隙に、家についてしまった。自分の部屋に戻り、今日貰った、クラスの男子のラブレターらしき手紙を読もうとかばんを開けると、
「?!あれ?ない!!ないないないないないないないない!!」
あれ?部室に置いてきちゃったのかな?!大変!明日返事しなきゃいけないのに!取りに行かなきゃ!!」
そう言って、征服の夏服のまま家を飛び出した。母は風呂荒い中でドアを開ける音に気づかず、私が家を出たことにも気づかなかった。
「ハァハァハァ・・・。」
学校まで10分。走って5分。私は走り続け、学校へ向かった。
もう人はいないかなと思いながらも、武道館を目指した。すると、電気がついている。なんとなく聞こえる素振りの音をたどり、中をのぞいてみると、
「山下先輩!なんで?」
「あ、岬、、、どうしたの?」
「え・・あ・・・てが・・・・って!」
山下先輩の手には、見覚えのある手紙の封筒が握られていた。
高木クラスメイトくんからの手紙・・・・
「それ、取りに来たんです。読んでませんよね?」
「読んだよ。」
すっごい黒い笑顔・・・。
先輩は、すぐ横に手紙を置き、素振りを再開した。私が先輩のとなりに座り、手紙を読もうとすうと、
「その告白、受けんの?」
「え・・・高木くんいい人だし。」
「もし、変なことされたら?」
「え・・・・・それは・・・・どうしましょう・・・。」
「んじゃ、明日の土曜日の試合で俺が優勝できなかったらそいつと付き合う、優勝したら、俺と(・・)付き合え!!」
「え?なんで?」
「・・・・。」
こちらを向く先輩の顔は真っ赤だ。
「あ・・・もしかして・・・告白ですか?」
「そうだよ。なんか悪いか!?」
「いや・・・会って何ヶ月もしてないのにと思って。」
「もう帰れ。てか送るよ。」
・・・・・。あれ?私おかしい!なんか山下先輩にどきどきしてる・・・・。すごく・・・・。
そして私と山下先輩は、横にならんで無言で歩き始めた。
なんか話さないと〜・・・そもそも男の子と二人きりってなれてないからな・・・・。
「岬、俺、明日、絶対優勝するから。優子のために。」
「優子?!いま、名前で・・・。」
「なんとなく。そっちのほうが呼びやすい。」
うそだ。絶対照れ隠し!先輩うそへたくそ。
私がクスっと笑うと、なんだよとばかりに顔をフイっと向いた。
でも、、、、樹乃ちゃん・・・・。
そんな不安だけが私の頭の中だけを回った。



大会当日。
私は征服で来てしまった。なんとなく征服がよかったのだ。
「山下先輩・・・・。」
手を合わせて祈っていると、
「やっぱりきてたんだ。私今日、先輩に告白する。」
「樹乃ちゃん・・・・。」
そんな樹乃ちゃんに告白された、なんて言えなかった。

そして先輩は、決勝まで進み続けた。
―決勝―
「緑川中学2年、山下恭平、対して青葉中学2年、今川洋介。試合開始!!」
高い笛の音とともに、竹刀の激しいぶつかり合いが始まる。
「山下ーーー!行けーーー!!」
「洋介ーーーー!!」
同じ位の背丈で不利はない。本物の試合を見てるより、すごく緊張する。試合してるのは自分じゃないのに、緊張する。あ・・・・きっと願ってるんだ。山下先輩が勝つことを―――・・・
「面ーーー!」
一本山下先輩が入れた・・・・。
「うりゃあーーー」
うっ相手に一本取られた!!
これで決まりですよ。山下先輩。勝つならさっさと勝ってきてください!!
きっと樹乃ちゃんとは違う思いを持ってる。立場からして違うけど。樹乃ちゃんとは違う。私はちがうよ先輩。。。。。ちゃんと思ってるよ。先輩のこと。
「残り10秒・・・。」
9、8、7、6、5・・・・
先輩・・・・疲れてる!!
4、3、
「先輩なにやってるんですか!!早く帰ってきてください!!」
2、
「面ーーーーー!!」
1、
ピピーーーーーーーーーーーーーーーー!
判定は・・・・
白!!
「先輩・・・・・優勝しちゃったよ。」
先輩はこっちにお決まりのブイをすると、にっこりしてタオルを振った。私も手を振り替えした。
表彰前に、一旦休憩が入る。その休憩中に先輩に会いに行くと、
「どうだった?」
「断ります。」
「え?」
「高木くんの告白。手紙に書いてありました。俺が守るからって。でも、すぐそばに守ってくれるひとがいるんです。今気づきました。私先輩が・・・」
先輩は私の手を引っ張り、会場の裏に連れ込んだ。
「なんだよ・・・・それ。」
「なんだよって返事です。」
「ちがう。俺、馬鹿みたいじゃん。一人で・・・あ。」
先輩は、自分の口を押さえた。
「なんですか?言いかけはイヤなんですよ!」
「あ〜・・・もう!」
そういって先輩は、自分の胸に私を抱き寄せた。
「一人でなんで一目ぼれしなきゃならないんだよっていってんだよ!」
「そんな、だって面白がってからかってるのかもって思ってたから・・・。」
「好きなヤツ以外はからかわない主義なんです。」
「変な主義。」
「なんだよ。でも俺、ちゃんと守れる自身あんよ?」
「じゃあお願いします。多分先輩じゃないといけませんから。」
「んじゃ約束な。」
「うん。」
せみがなき、やさしい風が吹き、夏色少年の口は、優しく私に触れた。先輩は表彰式には出ないで、ずっと私のところにいてくれた。
そのとき、風にあおられた夏色少年の香りは、本当に夏を感じさせる香りだった――――














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