SF奇兵隊 伝法斑の狗(29/34)PDFで表示縦書き表示RDF


SF奇兵隊 伝法斑の狗
作:隆伊



米軍捜査


2.米司令官暗殺事件の捜査
 米軍の捜査は、初めて斑の狗が現れた村の生き残りの証人の尋問から始まった。この時、かの二人組みは村人から噂の天狗様でしょう?と問われ、始めて斑の天狗を名乗っている。ここで重要な事は、既に天狗の噂があったことである。村々の間に近頃山から降りて来た天狗がいるという噂が広がっていたことである。捜査の手は広がり、やがて農兵隊の嫌疑で捉えられていた吾野郷の生き残りの若者が獄中から引き出された。若者はなかなか口を割らなかったが、己が家族の命を保障することと引き換えに証言した。ある夜、村を訪れた鮎沢伊予乃介という水戸藩士とその家来を襲撃したが、二十人以上いた仲間の半数以上が家来の男に返り討ちにされたことを。その噂が広がりいつしか天狗の化身と呼ばれるようになったことを。
 米軍は現在井伊直弼暗殺の罪で捉えられている鮎沢伊予乃介こそ、斑の狗の片割れであり、米司令官暗殺者であると断定し、その身柄引き渡しを萩の幕軍に要請した。

3.ロザリオ
 千鶴は香枝に伴われて伊予乃介に面会を求めた。既に豊永志功からの下命で、水戸藩に照会しても身分の明らかでない者、暗殺の首謀者五名は氏名身分共に不詳の者として、極めて惨い拷問にかけられることが決まっている。つまり士分としては扱われず、士農工商外の罪人として扱われる。今はまだ屋敷預かりとなっているが。
 許されるとは思っていなかったが、面会は叶った。少し憔悴した様子で伊予乃介は現れた。頬に額にあざがある。黙りこくっている二人に彼はことさら明るく振舞ってみせた。まもなく米軍に引き渡されるであろう事も告げた。小一郎にくれぐれも宜しくと、つまり姿を消すよう暗に促した。
 別れ際、千鶴は宝物のロザリオを伊予乃介に渡した。伊予乃介は大切に受け取った。
「千鶴・・・。ありがとう」
 千鶴はにっこり微笑み、懸命に何かを発音しようとしたが叶わなかった。












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