SF奇兵隊 伝法斑の狗(27/34)PDFで表示縦書き表示RDF


SF奇兵隊 伝法斑の狗
作:隆伊



策略


11.策略
 小一郎は手傷を負い伊予乃介に肩を支えられながら茶店へ戻ってきた。深夜である。香枝に気付かれぬよう黒衣を脱ぎ、傷の手当てにかかった。後ろから切りつけられた。さほど深くはないが大きな刀傷である。極力物音を立てぬ様にしていたのに、気が付くと香枝が後ろに居た。二人は慌てて散らばった武器や何やを隠そうとする。しかし彼女は一言も問うことはせず、傷の手当てに加勢した。目にうっすらと涙を浮かべている。
 今宵彼らは萩城でたんまり賄賂を受け取ったはずの米軍総督を郊外で待ちうけ襲った。護衛には米兵の姿はなく幕兵のみだった。豊永志功が馬上にいた。襲撃と同時に姿を消したが。幕兵をあらかた倒し、籠の中の米軍総督に「その金渡して頂こう」そう声をかけた時だった。手負いの幕兵に背後からばっさり切られた。伊予乃介が即座に倒したが、小一郎の血は止まらない。二人は金をあきらめその場を急ぎ立ち去った。その後起こったことを二人は知る由も無かったが、物陰に身を潜めていた豊永志功が戻ってきた。驚愕さめやらぬ様子で「今のがマダラノイヌという噂のニンジャか?」そう問いかける米軍総督を、豊永は答えず無言で撃ち殺した。それから自身の左腕を自分で撃つとその場に倒れこんだ・・・。

「危のうございます・・・」傷の手当てをしながら聞き取れぬほどの声で香枝が言う。
「すまぬ」小一郎はそう答える。他に言葉は見つからない。香枝にも。言いたいこと、聞きたいことは山ほどある。だが、言えない。
「危のうございます・・・」そう繰り返すのが精一杯だった。

 翌朝、萩は米軍司令官の殺害事件の話で持ちきりだった。たった一人生き残った豊永志功の話が情報源の全てだった。それによれば、一隊は斑の狗により皆殺しにされた。彼自身も腕を撃たれ気を失っていたが、気付いたとき斑の狗が米軍総督の乗った籠を襲っていた。彼は背後から切りつけたが、時既に遅く総督は賊の手にかかり殺められていた。傷を負った狗は金を残して逃げ去った。以上が、昨夜の事件の一部始終であるとして、話は広がった。
 小一郎は憤慨した。奸佞!許せぬ!如何な教育を受ければあのような人間となるのか!臥したまま力なく罵る。その口に香枝が粥を運ぶ。香枝は茶店を作蔵まかせにして、小一郎の傍を片時も離れない。
 その様子を伊予乃介、暫く眺めていたが、微笑み、
「そろそろ刻限ゆえ、行かねばならぬ。・・・小一郎よ、義賊というもの、なかなかに楽しかったぞ」そういい残すと席を立ち出て行った。それが伊予乃介と語った最後となった。
          












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