「秋と言えば!」
昼休み後ろの席に振り向き様そう言った私の顔を、後藤くんは呆れ半分興味無し半分で返してくる。
「悪いけど、焼き芋はやらないからな」
「ちょ、なんで分かったの!?」
焦る私に後藤くんは指を指す。その視線の先には私の鞄。
「さっき弁当出すときにチラッと見えたんだ。軍手に棒、おまけにご丁寧にアルミホイルまであるじゃないか。
焼き芋をするための道具が全部揃っている女子高生の鞄の中ってどうなのさ」
ズバリ全て言い当てられた。なにくそ、後藤のくせに。
「秋になって色あせた枯葉が落ちて最近いよいよ冬に近づいてくるんだなぁ……。そうだ、落ち葉がいっぱいあって昨日おばあちゃんからイモいっぱい貰ったし、う〜ん食欲の秋って言うし焼き芋とかしよぉ。あ、どうせなら後藤くん誘って、落ち葉拾い任せちゃおー。どうせ暇でしょアイツ。ま、苗字が前田の私にとって、後藤なんて後ろっぽい名前の奴なんだから、私に従えばいいのよ……なんて思ってないわよ別に!?」
「なに丁寧に悪口まで大いに喋ってんの?!」
いけない、つい思ったことを全部口に出しちゃうクセが。
このままじゃ、一人で寂しく焼きイモする女子高生の図が完成しちゃう。ダメ、私みたいな可愛い子が一人で焼き芋とか。
「べ、別に……後藤くんなんていなくてもいいんだけどなんか暇でしょ? だから、し、仕方なく誘ってあげているんだからぁ、大人しく誘いに乗りなさいよ〜!」
逃がさないように首を絞めてやろうかと飛びついた私を、ひょいっと後藤くんは避けてしまった。
あれ、いつもならこれで私がブイブイ言わせて後藤くんは分かったって渋りながら……。
「悪いけど前田。ちょっと付き合えないんだわ」
「な、なんでよ」
「いや、ちょっとな放課後……」
「おーい、後藤ぉー女が呼んでるぞー」
「え、あ〜。……ってなことで、悪いな前田」
後藤くんはちょっと気まずそうに私の前から去っていった。あれ、なんでそうなるの?
ちょっと放心気味に教室のドアの付近を見れば、可愛い(私ほどじゃないけど)女の子と楽しそうに喋ってどこかに行った。
オカシイ。いつも私たちは一緒にいて楽しく遊んで、それなのに……オカシイよそれは。
一人ぼっちで枯葉を集めて、火をつけて、アルミホイルに包んだイモをパチパチと音がする火の中に埋めた。
ゆれる橙色の火は沈んでいきそうな夕陽とよく似ていて、なんだかセンチメンタルな気分になった。
膝を抱えて座り込んで、組んだ腕に首をうずめる。マフラーは去年買った奴をどこかにやってしまって最近首元が寒い。
「ついでに心も寒いデース……バカごとぉー」
あの女の子は彼女なのかな。……なんだよ、言えばいいじゃないか。なんか、バカみたいだ私が。
なんで惨めな気分で焼き芋しなきゃいけないの。え、なんで。うっわスッゴイなんか腹立ってきたー。
「っく、後藤のバカやろーー!」
「ぶふぉ!」
立ち上がって大きく伸ばした腕に、何かが当たった。後ろを振り返ってみると後藤くんがダイノジに倒れていた。
「カウントとろうか?」
「なんでぇ?! ったぁ〜……アゴに入ったよ」
後藤くんはアゴをさすりながら、制服を叩いて立ち上がる。
「ふんっ、自業自得よ! 私の誘いを断ってイチャイチャ女の子にうつつを抜かしているからよ!」
「ったく、そういうこと言う? ほら、これ見てから言えよ」
そっぽを向いていたのに、その視線の中になんか紙袋を突き出された。
「なによこれ?」
「開けてみろよ、ったく苦労したのにアッパーかよ」
何かゴチャゴチャうるさい後藤くんはシカトしといて私はその紙袋を受け取って中を覗いた。
「ちょ、なによこれ」
「お前見てて寒そうなんだよ。だから、手芸部の奴にちょっと教えてもらってよ、
って勘違いするなよ!? べ、別にな、そういうなんか意味じゃなくて。ほら、前田今月誕生日じゃん? いや、だからってこれが誕生日プレゼントとかそんな恥ずかしっ……ぶふぁっ!!」
紙袋から取り出したブサイクなマフラーを握って、あたふたしてる後藤の頬を全力で殴った。
「ちょ、え、なんで俺殴られ」
「はいっ」
痛がり驚く後藤の鼻先に、焼き芋を差し出してやる。
「あ、あんただけなのよ! こうやって、焼き芋一緒にしてあげるの……そこんとこ分かってなさいよね!」
言い放った私に、後藤はなぜか満面の笑顔で焼き芋を受け取った。
「バカやろぉ。俺だって、ワガママ付き合ってやるのはお前くらいだよ」
まだ夕陽は沈まない。これで私の顔が赤いのは誤魔化せるはず。でも、後藤くんの頬が赤いのが私には分かるから……。
背後で焚き火の破裂音が響いた。私は座っている後藤に手を貸してやる。彼の手はとても暖かいものだった。
「あ、スゲー焦げてる」
「……後藤くん、イモ新しく買ってきて」
「結局それか!?」
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