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花葬
作:淡屋林檎



2.幸福


[コーディ]
ウィリアムがアタシの部屋に来てくれた。
アタシの名前を呼んでくれた。
そして、アタシの頭を撫でてくれた。

アタシはすごく幸せな気持ちになったの。


ウィリアムはクロルドのことをあまり良く思ってないみたい。
クロルドもきっと、アタシがウィリアムと逢ったことを知ったら良い顔をしないだろうな。
だから、ウィリアムとアタシの秘密にしたの。

ウィリアムはクロルドが正午の面会に来て、また夕方来るまでの間、アタシと一緒に過ごしてくれると言った。だからジニーに約束して、正午から夕方までの時間をアタシのものにしてもらったの。

アタシは嬉しくて…そして不安でいっぱい。
…何も上手く伝えられないアタシは、いつかウィリアムに飽きられてしまうだろう。

でもいいの。

本当は永遠なんてないのだから。
いつか別れることを前提に出会ったのだから。


約束通り、次の日からウィリアムはアタシの部屋に来てくれた。
何をするわけでもなく、ただ一緒に過ごすの。

時々、ウィリアムはあの寂しそうな表情で、遠く…窓の外へ目をやるの。
アタシはいつかウィリアムがそこから飛び去ってしまうような気がして、彼の服の裾を引っ張るの。
そのたびにウィリアムは苦笑して『どこにもいかないよ』と頭を撫でてくれる。

とても
とても
幸せな時間。



[ジニー]
コーディはウィリアムを愛しているの?

ねぇコーディ。
アタシ達、二人でひとつよね?

アタシはコーディを愛している。
コーディもアタシを愛していると言ってくれた。

でも今、コーディはウィリアムを愛している。

ねぇコーディ。
アタシを見て。
アタシに触れて。

…愛の重さが違うなら、神様、どうか天秤をアタシの方に傾けて!


アタシを独りにしないで。





ある日。食欲のないアタシにクロルドが『これなら食べれるでしょ?』と、フルーツのいっぱい入ったゼリーを持って来てくれた。
それはアタシの数少ない、好きな食べ物のひとつで、それだけは喉を通った。全部食べきってしまうと、クロルドは笑顔で『もう一個持ってきてあげようか?』と聞いてくれた。
本当はもう欲しくなかったけど、コーディにあげようと思い付いて、頷いた。
クロルドはすぐに冷えたゼリーを持ってきてくれた。

「友達がね、送ってくれたんだ。ジニーだけ特別だよ…他のみんなには内緒だからね?」


このゼリーだけじゃなく、クロルドはアタシに色々なものをくれる。
『特別だよ』と言って。


「じゃあまた夕方来るからね」


いつものようにキスをして出て行った。

でもアタシは知っているのよ。『挨拶だよ』と言ったこのキスも特別だって。
クロルドは愛されないアタシに、いっぱい『特別』というものをくれる。理由は分からないけれど。

クロルドはアタシの先生だから…。ただ甘えることを許してくれるの。

愛されてるわけじゃない。



[コーディ]
ジニーと交代して、ふとテーブルを見ると、ゼリーが置いてあった。
そういえば口の中が甘い。

きっとクロルドが持ってきてくれたんだわ。


しばらくして、ウィリアムが来てくれた。ウィリアムは部屋に入ると、いつものように鍵をかける。もし誰かに見られたりして、クロルドの耳に入ったら、二度とウィリアムに会えなくなるかもしれないから。

ウィリアムはアタシの隣に座ると、アタシの顔に手をやり、唇を舐めた。

「コーディの口…甘いな」

アタシがびっくりしているのにも構わずに、キョトンとした顔で言う。
アタシは思い出して、テーブルの上からゼリーを取ってウィリアムに渡した。

「俺にくれんの?」

コクコクと頷くと、ウィリアムは子供みたいな笑顔で『ありがとうな』と頭を撫でてくれた。
そして一口運んでから『コーディの口と同じ味』と笑った。

アタシは胸が苦しくなるほどの幸せを感じていた。

そして、この幸せがずっと続くことを願った。



[ジニー]
夢を見たの。

コーディがどんどんアタシから離れていく。
アタシは必死に追い掛けるのだけれども、コーディになかなか追い付けなくて。

やっとコーディの腕を掴んだと思ったら、コーディはアタシの方を振り向いて、砂になり消えていくの。


コーディ。
アタシのコーディ。

アタシは貴女の幸せを願うべきなの?
でアタシの幸福には、貴女が必要なの。



愛がほしい。
天秤を壊してしまいたい!


神様、こんなアタシを許してくださいますか?




【可哀相なジニー】

【現実に気付いていない】

【本当はコーディなんて存在は…】




【現実と虚構】












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