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逆ハーレム100(旧) 作者:松宮星

勇者世界

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神様が賢者で託宣を 【シメオン】

 魔王が現れた。
 ので、アタシは旅立つこととなった。

 六つの年に、お師匠様にひきとられてから、はや十年。
 ようやく、山奥の修行ライフから、解放されるのね。
 今日で見習いは卒業。
 アタシは、百一代目勇者さまよ!

 お師匠様に憑依した神様のお告げによれば、百一代目魔王は『カネコ アリエ』。異世界人みたい。

 異世界からやって来た魔王は、多い。
『カネコ アリエ』で八十五人目。
 生まれ育った世界で不幸だった者が、心の闇に囚われ、この世界に落ちて来るらしい。非常に迷惑な話よね。

《彼氏いない歴(イコール)年齢な子なんだ。一方的にリアカレ認定してた子からガチ無理されて、魔王パワーに目覚めちゃったんだよね。この世界で、女を皆殺しにして、逆ハーレムをつくりたいみたい〜》

 神様は異世界の専門用語を使って、百一代目魔王をわかりやすく説明をした。

 なんというか……
 ナニな敵……
 歴代勇者が残してきた『勇者の書』を読んでるから、異世界の専門用語もわかる。
 アタシの宿敵は、かなりイタイ子のようだ。

 魔王同様、勇者も異世界人が多く、かれこれ七十人を超えている。 
『勇者の書』とは、ズバリ勇者の日記帳。勇者の生きざまの他に、出身世界の情報なんかも書き記されている。
 勇者の数だけ『勇者の書』はある。
 アタシは勇者見習いだったんで、ぜんぶに目を通してきた。かなりな異世界通なのだ。

《魔王と勇者の決戦は伝統通り、変更なーし。ジャンヌちゃん、おっけぇ?》

 お師匠様に降りている神様に、アタシは頷いた。

『勇者と魔王の定石』なら、頭に入っている。

 その一。
 勇者(となる予定の人間)が十五才を過ぎてから老衰で死ぬまでの間に、世界に魔王が現れる。

 その二。
 魔王は出現と同時に百日の眠りにつく。魔王としての力を溜める為と言われている。眠っている間は完全無敵だそうだ。
 だから、目覚める日、つまり百日目が、決戦日となる。
 その日を逃すと、世界は魔王のものになってしまうらしい。
 まあ、これまでの魔王はぜんぶ百日目に倒されてるんだけどね。

 その三。
 倒すと、ご褒美がもらえるらしい。望みを何でもかなえてもらえるって噂。
 それから、不老不死の賢者となってこの世界に留まるか、よその世界に転移するかを決める。
 不老不死って聞くと、ときめいちゃう。けど、永遠に不老不死なわけじゃない。賢者は唯一無二の職業。次の勇者が賢者を希望したら、前の賢者はただの人間に戻る。年をとり始めるんだ。
 アタシのお師匠様は、九十六代目勇者だった。賢者になった当時のまま、若くてハンサムだ。

《んじゃ、勇者の使命を教えるぞー おっけぇ?》

 お師匠様に憑依した神様に、アタシは頷いた。

 魔王が寝てる百日の間に、勇者は『勇者の使命』を果たす。
 神様から魔王を倒す方法を教わり、準備しておくのだ。
 神様の託宣通りに戦わないと、魔王は倒せないらしい。まあ、神様がそう言ってるだけだけど。

 神様から、それまでのにこやかな笑みがスッと消える。

《汝の愛が、魔王を滅ぼすであろう》

 アタシを見つめるスミレ色の瞳は穏やかだけど、強い意志の力がこめられている。

《愛しき伴侶を百人、十二の世界を巡り集めよ》

《各々が振るえる剣は一度。異なる生き方の者のみを求めるべし》

 へ?

 どーいう意味……?


《ぶっちゃけ、縛りプレイだよ〜》
 急にもとに戻んないでよ、ショタ神。 
《ジャンヌちゃん、キミは十二の世界を旅し、百人の男の子を仲間にするんだよ。ただし、ジョブの被りは駄目ってわけ〜》
「ジョブの被り……?」

《どっかの世界で戦士を仲間にしたら、もう戦士は仲間にできないってこと》

 え?

「それ、きつくない?」
《ん〜 どうだろ? 完全一致しなきゃいいんじゃない? 戦士が駄目でもナイトはおっけぇとか、魔法戦士や狂戦士ならイけるかも〜》
「でも」
《あ〜、あとね、誰でも仲間にできるってわけじゃないから〜。愛しき伴侶でなきゃ、ダ・メ》
「愛しき伴侶?」

《そう、愛しき伴侶。萌えた相手だけ。おっけぇ?》

 萌え……?

《女の子にもいるじゃん。好きな男性キャラを、『俺の嫁〜』って叫んで喜ぶ子。あんな感じ〜》

 俺の……
 嫁……?

《でさぁ、百人の伴侶に一回づつ攻撃してもらって〜、魔王倒すの。キミも攻撃できるから、百一回も攻撃できるぞ。おっけぇ?》

 攻撃の機会(チャンス)は百一回……も?

《魔王のHPは、従来通り1億ね。百人も居るんだもん、楽勝だよね〜。おっけぇ?》

「いやいやいやいや、それ、無理だから!」
 アタシは叫んだ。

 勇者として育てられたアタシの目は、勇者(アイ)だ。
『仲間&敵の、攻撃値と残りHPを見る』能力がある。

 だから、知っている。
 魔王戦想定の、魔法木偶人形に対し出したアタシのダメージを。

「アタシ、クリティカルを出しても、せいぜい6000ダメなんですけど……」

《へーき、へーき。彼氏達に、一人あたり100万ダメ出してもらえば勝てるから〜》

 あっけらかーんと、神様が答える。

《いろんな魔法や技術もあるし〜 攻撃力とかクリティカル率上げたり、魔王の防御力下げたりね〜。伝説の武器もってる子いるかもだし、異世界の神様とかゲットしちゃえば〜 1億なんて軽い、軽い》

 本当……?
 本当にそうなの……?

《この世界を救うのはね、キミの萌えだよ。ジョブが被らなきゃ強制的に伴侶枠入りだもん。百人なんて、すぐすぐ〜》

 そうか……
 相手の意志は、ガン無視なのね。
 アタシが萌えれば、伴侶にできるってことは……
 アタシの事を何とも思ってない相手でも、めちゃくちゃ嫌っている男でも、伴侶にできちゃうわけで……
 それなら……何とかなる……?
 百日で百人、集められるかも……?

《そうそう、できる、できる〜。かんたん、かんたん》

 神様はニコニコ笑う。
 何か……頭の隅でひっかかったけど……つられてアタシも気が大きくなってきた。何とかなるかもって気になってきた。

《いざとなったら、究極魔法つかえばいいし。大丈夫だよ〜、ジャンヌちゃん》

 究極魔法……?

 なに、それ……?

《え〜? 嘘ぉ! やだな〜、シメオン君、教えてないの?》

 神様は口元に手をあてた。が、今更言ったことはひっこめられない、良いや教えちゃえと言葉を続ける。

《勇者だけが使える魔法だよ。4999万9999の固定ダメなんだ》

 おおおお!
 魔王のHPの約半分をもってけるの!
 すごい、大技!
 さすが、勇者!

《今まで何人も、これ使って勝ってるし〜。単純な呪文さ、誰でも覚えられる。あ〜 でも、いま唱えちゃダメだよ、発動しちゃうから》

「おっけぇ! 何って呪文?」

《さらば、愛しき世界よ!》

 は?

《さらば、愛しき世界よ!》

 あ……
 いえ、繰り返さなくていいです。

「それって……もしかして……」
 アタシはツバをのみこんだ。
「……使ったら、死にます?」

《うん》
 神様は無慈悲にも頷いた。

《自爆魔法だもん。火の玉になって、魔王につっこんで、魔王ともどもチュドーンって魔法》

 神様はニコニコ笑っている。

《だいじょーぶ。優秀な男の子を百人伴侶にしとけば、そんな究極魔法を使わなくても、勝てるし》

《だいじょーぶ。勇者が魔王に負けちゃえば、この世界もキミも滅びるんだし。どーせ死ぬんだから、気にせず、チュドーンしちゃって》

《だいじょーぶ。キミがその魔法を唱え損ねても、シメオン君が代わりに使ってくれるから。シメオン君が『この世界の礎となってくれ、勇者よ!』って言ったら、キミはチュドーン。すぐ終わるから、痛みを感じる間もないさ〜。だいじょーぶだよ》

 と、全然、大丈夫じゃないお言葉を残し、神様は天界に戻って行った。





 神様が離れた後、お師匠様は苦笑を漏らし、白銀のローブをたなびかせ、白銀の髪をかきあげた。
「あと、百日で全てを終わらせよう」
 いつも通りの、人形みたいな顔。無表情。お師匠様のスミレ色の瞳が、アタシを映す。

「十二の世界には、この世界も含まれる。まずは、この世界で仲間を集めるのだ。その者らの協力を得つつ、十一の異世界も巡って百人の仲間を探そう。異世界へは私が案内する」
 そう言ったお師匠様の右手に『勇者の書』の百一冊目が現れる。物質転送の魔法だ。
「おまえの『勇者の書』だ。おまえはこれから、おまえ自身の『勇者の書』を(つづ)るのだ」
 無表情なお師匠様の口元に、微かな笑みが浮かんだような気がした。

「おまえは、私の跡を継いで賢者となるのだ。勇者を異界に導く法を覚えねば、な」

 それは……
 究極魔法でアタシを殺さないって事……?

 それとも……
 ヤバくなったら、アタシを、やっぱ殺すの……?

 この世界を救う為に……

 お師匠様の顔には、何の表情もない。
 何を考えてるのかさっぱりわからない。

 昔から、そうだ。

 六つのアタシをさらうようにこの館に連れて来た時から、全然、変わらない。いつも、ほぼ、無表情。感情的になる事もない。

 だけど……

 冷酷な人間じゃない。

 一緒に暮らしてきたアタシは知っている。

 アタシが熱を出した時は、つきっきりで看病してくれたし……
 課題をこなせた時は『よくやった』と頭を撫でてくれたし……
 誕生日には必ずアタシの好物を作ってくれたし……
 家に帰りたいと泣きわめいた子供を、一晩中、抱きしめてくれた。

 感情表現が下手なだけ。

 火の玉にして殺す為に、育てたんじゃない。
 アタシを死なせないよう、育ててくれたんだ……

 そう信じよう。

「移動する。荷物を持って来い。私は、おまえの家族や、要所の顧問たちに心話(テレパシー)で連絡をとっておく」
「アタシの家族?」
 家に帰れるの?
「おまえの義兄(あに)に会いに行く」
 ジョゼ兄さまに……?

「おまえの義兄は、義妹(いもうと)の力になりたいと、この十年、修行をつんでいた。萌えられるようなら、仲間にしてやれ」
 十年間、山ン中のこの館だけで過ごしてきたアタシとは違い、お師匠様は移動魔法であっちこっちに行っている。
 だけど、ジョゼ兄さまにも会ってたとは、知らなかった。
 ジョゼ兄さまも、もう……十八かぁ。格好よくなったんだろうなあ……

「二、三日中に、王城や魔術師協会も訪れる。魔王の出現はこの世の大事だ。この世界を救う勇者の為に、各機関が、戦力となる男性を集めてくださるだろう」

 それで、何人、仲間にできるんだろう?
 アタシ好みの男性じゃなきゃ仲間にできないし、ジョブが被る人も仲間にできない。

 本当に『だいじょーぶ』なのかなあ……?

「ああ……そうだ……」

 お師匠様が、アタシの背に声をかける。

「なるべく戦闘力のありそうな人間を選んで、萌えろ。おまえが萌えた瞬間、相手は仲間枠に入るのだ。その後、もっと強そうな相手に会ってもジョブが被っていたら、仲間にできん」

 う。

「それに、仲間にできる相手に条件はない。腰の曲がった老人でも、なよなよしたオカマでも、赤ん坊でも、おまえが萌えたら仲間だ。戦えぬ者ばかりを集めるなよ」

 ぐ。

 そうか……

 萌えた瞬間、相手は仲間入り……

 仲間枠は百。
 不用意に萌え続けたら、戦闘力の低い仲間ばかりが増えてゆき……

 魔王の1億のHPを無くす為に、アタシは究極魔法を使わざるをえなくなるのだ……

 ヤバ……

 改めて事態の深刻さを意識しつつ、アタシは扉を閉め、自分用の部屋へと戻って行った。


* * * * *


『勇者の書 101――ジャンヌ』 覚え書き

●男性プロフィール(№000)

名前 シメオン
所属世界   勇者世界
種族     人間
職業     賢者(魔王を倒した者がなるジョブ)
特徴     お師匠様・無口・無表情・ハンサム
       勇者の教育係。協力者。現在、不老不死。
       神降ろしができ、憑依体となって
       神様の意志を伝える。
       異世界を自由に行き来できるらしい。 
       移動魔法・物質転送・心話などの魔法を
       使える。
       アタシを強制自爆させられる。
戦闘方法   戦闘はしない(賢者は勇者の助言者って立場)
年齢     五代前の勇者だったから、百歳ぐらい。
容姿     腰までの白銀の髪、すみれ色の瞳。
       色白。白銀の賢者のローブ姿。
口癖    『おまえは、私の跡を継いで賢者となるのだ』
好きなもの  不明
嫌いなもの  不明
勇者に一言 『あと、百日で全てを終わらせるのだ……』
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