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逆ハーレム100(旧) 作者:松宮星

勇者世界

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伝説の黄金弓    【ジュネ】

 今日はマルタンと合流する日。
 これからとずっと、あの僧侶と一緒なのかと思うと……憂鬱。

 お父さんに旅の許可を貰いに行ったリュカと、つきそいのドロ様。
 旅の支度を整えているルネさん。
 獣使い屋に泊まったお師匠様とサムソン。
 みんながオランジュ伯爵家に集まったら、お師匠様の移動魔法でマルタンのいるデュラフォア園に行く。そこで悪霊退治のお手伝いをしたら、この世界でアタシがやる事はとりあえず一段落する。
 だから、今日でオランジュ伯爵家もひきはらう。もともと、都で仲間探しをする間だけ滞在させてもらうって約束だったし。

 早ければ、明日、アタシ達は幻想世界へと旅立つのだ。

《汝の愛が、魔王を滅ぼすであろう。愛しき伴侶を百人、十二の世界を巡り集めよ》

 アタシは十二の世界で、百人の彼氏を仲間にする。
 この世界も、十二のうちの一つに含まれる。あと十一の世界を巡らなきゃいけない。

 魔王が目覚めるのは九十四日後。
 現在、仲間の数は九人。
 一見、非常に順調。でも、九人の中にはクロードもいる。いわゆるハズレ、ってヤツ。
 百人+アタシは、一回づつしか魔王に攻撃できない。
 それで、1億ダメージを出さなきゃ、負けちゃうのよ。

 百人の彼氏達にがんばってもらわないと、アタシは自爆魔法コースまっしぐらだ。
 チュドーンして、4999万9999の固定ダメージを出さなきゃならなくなる。

 ああ……
 どこかに、1億ダメ出せる人いないかなあ。
 ううん、いくらなんでも、欲ばりすぎね。
 ほんの、1000万ダメでいいわ。
 無理なら、100万で我慢する。
 というか、彼氏達のノルマ、一人あたり100万オーバーなのよね。全員がそんだけ出してくれないと、1億に届かない。
……異世界の超凄い人とかに期待しよ。

 100万ダメージも出せる人、そうそういるわけない。出会う事すら難しいわ。
 アタシなんか、クリティカル出しても6000程度だもん。

 って、思ってたのに……
 獣使い屋から戻って来たお師匠様が、こう言ったのだ。

「仲間候補を見つけた。今、獣使い屋で待たせている。99万9999ダメージは出せる人間だ。会ってみろ」

 え?
 嘘?
 ほんとに?
 99万9999ダメージ?
 ちょっと足りないけど、ほぼ100万!
 おおおお!

「ちなみに」
 と、お師匠様はそこで言葉を区切って、いつもの無表情な顔でアタシを見つめる。
「顔はいい」

 会う!
 会います!
 会わせてください、お師匠様!
 是非!


『賢者様のお見立てでしたら、優秀な方に決まっています。すぐに対面して問題ありません』
 と、テオが言ったので、事前チェック無しになった。
 ジョゼ兄さま、クロード、アラン、テオが見守る中、アタシは仲間候補と対面する事になった。

 お師匠様は移動魔法を駆使して、ドラゴンのきぐるみ姿のサムソンと、仲間候補の男性を伴って戻ってきた。

 見た途端、ドキンとした。

 男の人にこういう言い方、どうかと思うけど……美人だ。
 顔だちが綺麗だし、ほっそりしているから、女性みたいにも見える。

 頭に小さな羽根付き帽子、左手に大きな金色の弓、背には矢筒、腰に皮はぎ用のナイフを差している。
 狩人なんだ。
 で、森に紛れやすい薄緑色のチュニックと栗色の皮靴を身につけているんだけど……
 下が半ズボンなのよ! 股下がすっごく短いの!
 男のナマ足なんて、すね毛ボーボーでムサイ。それが、普通。
 でも、彼は美しいのだ。
 すべすべな、玉のような肌。
 そんでもって、すらりと長い。
 細いけどつくべきところにきちんと筋肉がついてるんで、形が格好いいし。
 カモシカみたいな足と讃えられるような……

 彼が体の向きを変え、足を絡め合わせる。
 その仕草も足も、とってもセクシー。
 ドキドキしちゃう。

「キミが勇者様? ジュネです、よろしく」 
 ややトーンの高い、ぞくぞくするような声だった……


 胸がキュンキュンした。


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと九十〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


「やはり、顔か。顔さえ良ければ仲間にできるな」
 と、ドラゴンのきぐるみにまとわりつかれたまま、お師匠様がつぶやく。
 あの……顔じゃないんです、今回は。
 いや、でも、待って。
 男の人の足でときめいちゃったなんて、さすがに……口にできないわ。
 顔って事にしとこ。

「仲間にしてくれて。ありがと、勇者様」
 足ばっかじゃなくて、ちゃんと顔も見よ。
 さらさらの髪も、細くて形のいい眉も、目尻のあがったライトブラウンの瞳も、高い鼻も、薄い唇も……
 女性って言われても信じちゃいそうなほど、綺麗。でも、なよなよした感じはない。鋭利な刃物に似ているというか、近寄りがたい鋭さがある。
 一流の弓使いだからだわ。
 彼は、伝説級の魔法弓の所持者なのだ。

 その昔、二十三代目勇者の仲間が、魔王戦でこの弓を使用し、99万9999ダメージを出したといわれている。
 そして、六十五代目勇者その人が、魔王戦でこの弓を使用し、99万9999ダメージを出したんだそうだ。
 更には、九十八代目勇者の仲間も、魔王戦でこの弓を使用し、99万9999ダメージを出したらしい……
 どうあっても1足りないのね……

 九十八代目勇者の事は、当時も賢者だったお師匠様が直に目撃している。
 99万9999ダメージ固定の弓なのかもしれない。
 まあ、運が良くて6000程度のアタシよりは、よっぽど戦力。

「星の巡り合わせだよね」
 ジュネさんが、アタシにニッと笑いかける。猫みたいな顔。
「今日、獣使い屋に遊びに行かなければ、賢者様に出会えなかった。勇者の仲間となる事もなかった。勇者の仲間になれて、ホント良かった」
「一流の弓使いに仲間になっていただき、光栄に思います」
 美人さんだし。
 握手をしようと右手をあげかけた。けど、それよりも前にジュネさんは動いていた。

「これからは、ずっと一緒だね、サムソン」
 ジュネさんが抱きつく前に、サムソンがパッと動く。横にずれ、お師匠様の前方へ回りこむ。

「僕も勇者の仲間になったんだもん、頼ってくれていいよ。ガラスのハートのくせに、異世界に行こうとか……ほ〜んと、キミは無茶なんだから」

 ジュネさんが右回りすると、サムソンも右回りをする。
 ジュネさんが左回りすると、サムソンも左回りをする。
 お師匠様を間にはさんで、ぐるぐると。
 えっと……
 何してるの?
 妙に息が合ってるけど?

 二人に周囲をぐるぐる回られながら、お師匠様が、アタシ達に簡単に説明をする。
「この二人、幼馴染なのだ」

 幼馴染……
 そう聞いて、親しげな様子にも納得がいった。
 アタシはクロードをチラッと見た。向こうもアタシを見てたみたいで視線が合ったものの、すぐに目をそらしやがった。

 幼馴染が魔王と戦うんだもん。
 力になってやりたいって思って当たり前。
 ましてや、サムソンは、とてもとても特殊な人。人間と話せないし。
 無事やっていけるかって心配しちゃうわよね、幼馴染なら。

「おバカさん。一流の狩人からは、逃げられないよ」
 ニッと笑いながら、ジュネさんが一気に距離を縮め、サムソンに横から抱きついた。
 抱きつかれてびっくりしたのか、サムソンもお師匠様に抱きつく。

「良かったわね、サムソン。幼馴染が一緒なら心強いでしょ?」
 と、アタシは獣使いに声をかけた。
 が、無視された。サムソンはお師匠様の肩に顔を埋めたまま、顔をあげようとしない。
 しまった。今のアタシ、『ロバさん』じゃないし、『スネちゃん』も付けていない。
 会話が成り立つわけがなかった。

「いい事言ってくれるね、勇者様」
 ジュネさんが、アタシにニッと微笑みかける。
「魔王戦では、期待の分だけ、しっかり働いてあげるよ。それに、他の面からもキミの旅を手伝えると思う」
「他の面?」
「仲間集めさ」

 ジュネさんの目が、きらりと輝く。
「僕は狩人だ。狙った獲物は逃がさないんだよ。必ず堕としてきた」
 堕とす……?

「キミのおかげで、サムソンとはこれから毎日、一緒にいられる……お礼に、男をひっかけてきてあげるよ」
「男をひっかける?」
「綺麗な子、かわいい子、イカす子、イケメン、それなり、ムキムキ、しぶいおじさん、素敵なおじさま……よりどりみどりだよ。僕、守備範囲広いから」
「は?」
「どんな男も堕として、あ・げ・る。この愛の狩人ジュネ様が、ね」

 へ?

 戸惑うアタシに『リクエストがあったら聞くよ』と、言ってからジュネさんはサムソンの背に頬ずりをする。よく見れば、手もさわさわとサムソンを撫でまわしている……
「勇者様も僕達の仲を認めてくれたよ。これからは、ずっと、一緒だよ、サ・ム・ソ・ン♪」
 かたくなに顔を伏せるサムソン。
 ジュネさんが、ちゅっちゅときぐるみに口づけする。頬を染めて、色っぽく微笑みながら。
「これから、お風呂も一緒、お部屋も一緒、寝るのも一緒だよ……愛してる、サムソン。僕のかわいいベベちゃん(赤ちゃん)……キミの全てを可愛がってあげるね……」
 サムソンが必死にお師匠様に抱きつく。後ろなんか絶対に振り返るもんか! って感じに。

 あ?

 あれ?

「もしかして、あなた……」
 逃げ腰になりながら、テオが尋ねる。
「……サムソンさんがお好きなんですか? その……友情的な意味ではなくて、恋愛的な意味合いで……」

「この子は僕の一番のかわい子ちゃん。心から、愛しているよ……子供のころから、ずっとね……」

 う。

 うわ〜。
 本物だ、この人!
 初めて見た!

 いやん、ドキドキしちゃう。

 ジュネは綺麗だし、サムソンは古代の神像みたいな美形。
 絵になるわよね……
 サムソンがドラゴンのきぐるみを脱げばだけど。

「でも」
 ジュネが、テオ達を見つめ、何とも言えない色気過剰な顔となる。
「かわいい子も逞しい子も綺麗な子も、み〜んな好きだよ。僕、どっちもイケルから、誰とでも楽しめるし」

 リバか!

 ジョゼ兄さまとクロードとテオが、潮が引くようにササーッ! と下がり、ジュネから距離をとる。

 アランだけが、そのままの位置に立っている。ジュネと視線が合うと、
「アランだ。よろしく」と、ふつーに挨拶するし。
 ホモな人が眼の前にいるのに冷静。ほぼ裸な、腰布姿のくせに。
 ジュネが猫のようにニッと笑い、舐めるようにアランを見つめる。
「よろしく、戦士さん。ステキな格好だね」
 と、言われると、さすがにアランの顔に赤みが差した。
「厄除けスタイルなんだ。見苦しいかもしれないが、我慢してくれ」
「見苦しくなんかない。魅力的だよ」
 ジュネが楽しそうに笑う。
「……僕達、仲良くやってけそうだね」
「ああ。仲間としてな」
 不必要には怖がらないけど、一線を越える気はない。はっきりと宣言したアランに、ジュネは肩をすくめてみせた。

 そうよね。本命がすぐそばに居るんだし、見境なく男を襲うわけないか。

 ジュネの視線が、チラリとアタシへと向く。
「キミ、女だけど、男の趣味はいいし……協力してあげるよ。100人逆ハーレム、完成させようね♪」





 逞しいサムソンと細身のジュネじゃ、大人と子供ほど体格が違う。
 でも、ジュネはサムソンをベベちゃんとか呼んでるし、可愛がる発言もしてるし……
 どっちが、どうかというと……
 う〜む。
 妄想が暴走しそう……

 そいや、ドロ様が言ってたな。
 サムソンはもともと人間より獣が好きだったけど、幼時からの体験というか人間関係のせいで、極度の対人恐怖症になったって。
 もしかして……ジュネのラブラブアタックが原因……?


 昼前にルネさんが、アタシ達と合流した。空からフル・ロボットアーマーが降りて来たもんで、オランジュ伯爵家の家人がパニックとなって大騒ぎとなった。でも、まあ、それはいいとして……

 昼過ぎに、ドロ様とリュカもやって来た。リュカのお父さんから、旅の許可はもらえたそうだ。
 ついでに、大盗賊のお父さんから幾つかの遺跡の情報も貰っていた。『オヤジが、役立つお宝が眠ってるんじゃないかって。盗掘、手伝ってよ。分け前は七三で、オレが三ね』と、リュカ。
 まあ、そういう約束だったし、分けられるもんなら構わない。

 使徒マルタンの待つデュラフォア園に旅立つアタシらの前に、女伯爵のおばあさんが現れた。
 滞在のお礼は、既に伝えてある。だけど、改めて、お世話になりましたと挨拶をしておいた。
「勇者様、ご立派に使命をお果たしなさいませ」
 おばあさんはアタシに対してそう言ってから、ジョゼ兄さまを呼びつけた。
「常に、当家の家名に恥じない行動を心がけなさい。周囲がどうであれ、あなたはオランジュ伯爵家の跡取りです。品格を落としたら許しませんよ」
 これから危険な旅に出る孫への言葉が、それなの?
「お言葉のままに、おばあ様」
 兄さまが恭しく、おばあさんに頭を下げる。だけど、眉は不機嫌そう。
 服従の態度はとるけど、心までは従ってないって感じ。
 兄さまとおばあさん、ずっとこんな関係だったのかしら? 八年も一緒に暮らしてたのに。

 おばあさんは、お師匠様とアタシ、テオとクロードには挨拶をした。
 だけど、占い師、盗賊、狩人……身分の低い三人は露骨に無視した。
 更に……
 ロボットアーマーの人と、ドラゴンきぐるみの人と、蛮族戦士に、侮蔑の視線をくれていた。

……変な格好してるもんね、三人とも。
 わからなくもないけど、やっぱカチンとくるわ。
 確かにいろいろあるけど、みんな、アタシの仲間よ。
 大切な伴侶なんだから。

 魔王が目覚めるのは、九十四日後だ。
 アタシは伴侶達と一緒に、魔王に勝ってみせるわ!


* * * * *


『勇者の書 101――ジャンヌ』 覚え書き

●男性プロフィール(№010)

名前 ジュネ
所属世界   勇者世界
種族     人間
職業     狩人
属性     自称『愛の狩人』。狙った獲物は逃がさない。
       男好き。バリリバ。
       誰とでも楽しめるんだそうで……
       サムソンの幼馴染というか、
       本命はサムソン。サムソンにはタチ?
       サムソンの方は愛を受け入れたくないっぽい。
戦闘方法   魔法弓
年齢     二十
容姿     美形。アッシュ(灰色)ブロンドの髪。
       目尻のあがったライトブラウンの瞳、
       高い鼻、薄い唇。
       チュニックの下は股下の短い半ズボン。
       毛深くない下半身だからこそ許される
       格好ね。足はすらりとして綺麗。
       男性としては、小柄な方。
口癖    『愛してる……』『ベベちゃん』
好きなもの  男(子供でもおじいさんでもOk)
嫌いなもの  女
勇者に一言 『100人逆ハーレム、完成させようね♪』
+注意+
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