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異世界お好み焼きチェーン ~大阪のオバチャン、美少女剣士に転生して、お好み焼き布教!~【改題しました】 作者:森田季節

★8章 大阪のオバチャン、ドラゴンに味噌を教える

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34 味噌カツを作ろう

 かなりの上空を飛ぶので、ナタリアはドラゴンの背中になかばしがみついていた。
 一方、ハルナは「味噌なあ……どうなんかなあ……」とぶつぶつ言っていた。

 少なくとも怖くはないらしい。
「あなた、今回は安請け合いとかせずに少し慎重だったわね。そこまで味噌の味に自信がないの?」

 ナタリアはハルナの料理のクオリティは間違いなく信頼しているので、その態度が意外なようだ。
「ぶっちゃけ、それもある。うちが作ってたんは自家製の味噌や。本格的な味噌蔵のものと比べたら劣るんが当然。素人の努力だけではプロには勝てん。百年、二百年の伝統を持ってるところがごろごろある」

「たしかに、あなた、味噌は商品化もしてないわね」
「けど、もっと大きな問題がある」

 料理のことを考えているハルナは明らかに戦闘より真剣である。
「このドラゴンが求めてる味噌がどんな味噌かわからん。目的の味を知る方法がないんや」

「味噌っていろんな味があるってこと?」
「味も違うし、色も全然違う。うちのは茶色いやつやけど、京都では甘くて白い白味噌、名古屋やったら豆味噌っていう味の濃い黒っぽい味噌をよう使う」

 しかし、地域的な問題だけでもない。

「味噌はかつて家でごく普通に作ってたようなもんやから、さらに振れ幅が大きい。甘い味噌を作ってる地域でも塩からい味噌を好んで家で作ってても不思議はない。だいたい一昔前なら家庭でそれぞれ作ってたもんやしな。バリエーションが無限にあるわけや」

「つまり、正解がさっぱりわからないってことね……」
「そういうことや。それでも、ヒントぐらいはあるけどな」
 ドラゴンの背中をハルナはべたべた触る。

 大阪のオバチャンはとりあえずものを触ってみることが多い。
「味噌がほしくなったってことはおそらく前世の記憶と関わりがある。ということはうちのおった国から転生してる可能性が高い。なおかつ、ドラゴンに生まれたってことは――」

 そこで高度が急に下がった。
「小さき者たちよ、そろそろ着くぞ」
 ドラゴンの族長の声が響く。

「あまり町のそばに止めるとパニックになるから、少し手前にしよか。京都の観光の秘訣みたいなもんや。中心部まで車で突っこむと渋滞に巻きこまれるねん」
「あなた、けっこうキョウトって地名出すわね……」

「阪急の淡路あわじまで出ていったら、あとはけっこう簡単に行けたからな」
 地下鉄堺筋線は阪急に直通運転をしており、京都方面には割と楽に出られる。

 なお、淡路というのは阪急京都本線と千里せんり線が交差する大阪市内の駅で、淡路島とは全然場所が違う。大和市が奈良県じゃなくて神奈川県にあるようなものだ。

 ハルナたちは少し離れたところでドラゴンから降りたが、味噌を求めて町まで入ってきたため結局パニックになった。

「大丈夫やで! 噛んだりせえへんで! おとなしいから!」
「我はペットではないぞ……」
 しばらくすると、「ハルナちゃんならドラゴンぐらい連れてくるだろう」「だな」と解釈され、どうにか混乱は収まった。


 ハルナは早速事務所から味噌を持ってきた。
 ただし、全部食べられると作れなくなるので、一部を取り皿に盛って出てきた。

 なお、ドラゴンは建物には入れないので、町の広場にいる。
 見物客が集まってきて、けっこう混雑していた。

「ほう、この茶色いものが味噌か。あまり見た目は美しくないのう」
「あんたがほしいって言うたんやろ。少なくとも毒やないから大丈夫や。ほら、ベロ出し」
 ドラゴンが舌をべろんと出した。

 ハルナはスプーンで味噌をとると、それを舌に載せる。かなり異様な試食タイムである。
 ドラゴンはすぐに味噌を口の中で味わう。
「ふむ。塩からいが、さっぱりした塩からさだ。体をほんのり癒してくれそうというか」
「まさしく疲労回復効果があるからな。飛んできたあとには最適やろ」

「なるほど。たしかに翼がじんわり休まるようだ。悪くはない」
「どうや。これで満足か?」
 だが、族長の表情もあまりすぐれない。どうやら合格点には達しなかったようだ。

「ううむ……。悪くはないが、いまいちしっくりこんかもしれん……。あと、単純にこれだけ食べても満足はしづらいというか……。何か別の食べ物にたっぷりと載せて食べたいな」
 ダメ出しも申し訳ないのか、ドラゴンも言葉が弱い。

「ある程度予想はついてた。じゃあ、もうちょっと待っとき。一品作ってくるわ」
 ハルナはにやっと笑う。
「それまで子供らの相手でもしとり」



 ハルナは事務所奥にある台所に戻る――前に、まず市場に寄った。
「カツにするのにええ豚肉な。あと、パン粉も買っとこか」

 この世界でもカツにして肉を食べる風習はある。高温調理により古い肉でもある程度おいしく食べられるからか、そこそこ使われている手法らしい。
「あれ、ごく普通にカツなの?」

 ナタリアは荷物持ちの役でついてくる。
「せやな。というか、うちも正解がどういうものなんかわかってない。女の勘に頼る」
「それって女の勘って言わないような……」

「ああ、そうや、キャベツ買い忘れとった。先に戻って準備しとくから、買っといて」
「はいはい、わかったわ」
 ナタリアもキャベツは買い慣れている。お好み焼きのためにキャベツは必須だからだ。

「中身がぎっしり詰まってるやつを選ぶんやで」
「わかってるわよ。私ですらそれなりの目利きになってきてるんだから」
 ナタリアと別れ、ハルナは事務所の台所に戻ってきた。
 カツを作ること自体は比較的容易だ。いい肉を選んだし、油もそれなりにいいものを使う。

 問題は味噌だ。

「たしか、名古屋近辺の味噌は保存のためか味が濃い目やったと聞いたことがある。八丁味噌とかかなり色が濃かった。でも、味噌から作ることはできん」

 となると、今の味噌からそれっぽいものを作っていくしかない。
「ずいぶん前のことやけど、万博で愛知行った時に、味噌カツの駅弁を食べたことがあるはずや……。あれの味、あれの味を再現するんや。たしかかなり甘かった気がする」

 仮に味噌カツがはずれだとしても――
「あのドラゴンは味噌を載せて食いたいって言っとった。あと、思いつくんは味噌田楽ぐらいやな、どっちにしても味噌は甘めのはずや。からい味噌をそのまま載せたら料理にしづらい」

 甘くするだけなら、やりようはある。
 飴ちゃんをカバンから取り出す。
 「黄金糖」という琥珀色の飴だ。形も、どこか金の延べ棒のようだ。これを溶かして甘味にする。

 そして、味噌の中に相当量ぶち込む。
「おそらく甘さが勝つぐらいでちょうどええんや。ほかに何か隠し味があるんかもわからんけど、ひとまずはこれで勝負するしかない」

 さらにこうばしさを出すためにゴマを入れ、またオリーブ油も少量足す。
 だが、これではたんなるどろどろの味噌だ。味噌カツのタレはもっと一体感があった。
「おそらく、火は通してたやろ」

 鍋に入れて軽く火で熱する。
 水分が飛んだせいか、どろっとした感じが強くなる。いい香りとともにしっかりカツに載ってくれそうなものになってきた。

 少し舐めてみる。
「思ったよりも近いな。よし、これで行く!」

 あとはカツ作りだ。
 こちらは普通のカツの作り方でいいはずだ。小麦粉をロースの肉につける。さらに肉を溶き卵に入れる。これをかなり粗いパン粉にさっとつける。どうせならザクザク感を出したい。

 高温で一気に揚げる。カツが揚がったら、少し太く切り分けて、上にたっぷり味噌ソースをかける。
 それから付け合せのキャベツを添える。
「これで完成や!」
名古屋では日本語にすると山になる喫茶店とか、あんかけスパゲティとか味噌煮込みうどんとかけっこういろいろ食べてます。
そして!!! 表紙を活動報告で公開しました!!! 大阪のオバチャン、ハルナの美少女姿です!!! ぜひごらんください!!!
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