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異世界お好み焼きチェーン ~大阪のオバチャン、美少女剣士に転生して、お好み焼き布教!~【改題しました】 作者:森田季節

1章 大阪のオバチャン、美少女になる

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3 飴ちゃんを配る、武具屋で値切る

 ギルドの受付嬢ルーファに紹介されたのは、おかみさんが一人できりもりしている宿だった。女性目線が入るためか、こぎれいで女性でも泊まりやすいのだ。

「あら、女の子の冒険者かい? 大変だったんじゃないかい?」
 おかみさんのマーサは声がデカいことでこの町で有名だ。
「せやろ。かよわい乙女には大変やわ~!」

 だが、ハルナはもっと声がデカかった。
「何言ってんだい! 獅子の顔の服着てる乙女なんているわけないよ!」

 マーサが笑い声をあげる。ギャグがウケた気がして、ハルナのテンションも上がった。出身が違うとはいえ、オバチャンは基本的に似た種族なのだ。

「このライオンはな~、威嚇用やねん。乙女を狙う男がおるかもしれへんからな~」
「あんた、陽気だね~。話が合いそうだ! 何泊でも泊まっていきな!」

「ありがとうな! あ、そうや」
 ハルナはカバンをあさった。出てきたのは飴だ。
「お近づきのしるしに飴ちゃんあげるわ。演歌歌手がCMやってるやつ」

「うわっ! これはおいしい飴だねえ!」
 この世界にはまだ甘いものがそんなに普及していない。なにせ砂糖がほとんど流通せず、甘味と言えば貴重なハチミツぐらいなのだ。だからマーサが驚くのも無理はない。

「あと、黒飴もあるで~」
「うれしいけど、これ、きっと貴重なお菓子だろう? あんまり私にタダでくれちゃもったいないよ!」

「ええんやって。普段から一円でも節約できるように努力してるんやから、もらってや~」
「こんな上客はめったにいないよ。うれしいねえ」
 飴ちゃんを配る慣習で、おかみさんの覚えがよくなったハルナだった。


 翌日、ハルナは剣を一本だけ購入した。

 もちろん、値切った。

「なあなあ、かわいい女の子やと思って、まけてや~」
「わかった! 金貨一枚と端数はサービスだ!」

 ハルナの見た目は本当に美少女だったので、武具屋の店主は本当にまけてくれた。どの世界だろうと、美少女は得ができるようになっているのだ。

 そよ風でもなびく金色の髪に、引き締まっていて決して太くはない二の腕。湖や森に住む精霊もかくやという容色なのに、庶民的な部分が垣間見える愛嬌のある笑みがともなっているともなれば、店主もあっさり従ってしまう。

「お前さん、何やってんだい!」
 店主はあとで奥さんに怒られていた。

「ありがとうな。じゃあ、残りは飴ちゃんで払うわ」
 ハルナは武具屋のカウンターに飴をひとつかみ置いた。

「うわっ、あんた、どんだけ飴持ってるんだい!?」
「どんだけって言われると難しいけど、ようけあるよ。あっ、そうや。道教えて。ダンジョン行きたいんやけど」

「ああ、冒険者さんだもんね」
 奥さんも職業上、もちろんダンジョンの場所はよく知っている。すぐに丁寧に教えてくれた。

「でも、気をつけるんだよ。ほんとは、あんたみたいなべっぴんさんが剣をとることないんだけどね……」

 実際、言動を除けば、ハルナの容姿は貴族じみている。肌も白くて、とても土や泥で汚れる冒険者のそれではない。まだほとんど戦闘をしてないので汚れてないのは当たり前なのだが。

 最強扱いのステータスは戦闘能力だけじゃなく、容姿のほうにも発揮されているのだ。
「もしかして騎士の家で冒険することを義務付けられてるとかそういう事情かい?」
「そんなんないわ。旅行以外は大坂から出たこともないぐらいやし。ま~、ぼちぼちやるわ」



 町の郊外にあるダンジョンにハルナはやってきた。ここでお金を稼げとギルドのルーファに言われたからだ。

 なんでも、モンスターを殺すと魔石というものが生まれるのだという。これはかつて魔王が石からモンスターを作った証拠なのだそうだ。今でもモンスターはダンジョンなどにある特殊な石から自然発生するという。

 魔石には宝石や鉱物としての価値があるので、売り物になる。なので、冒険者はモンスター狩りをすることでお金を稼いでいるらしい。
 ダンジョンの内部は古代の魔法によるもののせいか、そこそこ明るく、カンテラやたいまつは必要ない。かがまなくても、歩くこともできた。

「なんや、この地下街、案内板ないやん」
 落ちていた石で壁に「こちら出口」などと彫ったりしながら歩いていく。
 途中、スライムやスケルトンなどのモンスターが出てきたが――

「っていっ! っていっ!」

 剣を振り回して、すべて瞬殺した。
 出現した魔石はしっかりカバンに入れた。

「タダのもんはもらっとかんとな。もったいない、もったいない」
 ハルナはタダという概念に弱い。大阪でも、ポケットティッシュ配りの前を往復して複数ゲットしたり、時には「もう一つちょうだい」と直接要求したりしていた。ティッシュ配りのバイトも早く仕事を終えたいので、意外とウィンウィンの関係だった。


 それを見ていたほかの冒険者は口をぽかんと空けて立ち尽くしていた。
「なあ、今、素手で鎧サソリをかち割ったよな……?」「どんな攻撃力してるんだ? 武道家でもほぼ無理だぞ……」「一生冒険者やってもあんなの無理よ……」

 今度はハルナの目の前に岩石でできた小型ゴーレムが現れた。
「なんや、道ふさがんといてや。ていっ!」

 さすがにゴーレムは殴ったぐらいで倒せたりはしない。逆に見物していた冒険者たちはほっとした。小型とはいえゴーレムは一人では苦戦するだろうし、ここは加勢してやろうかと近づこうとした時――

 ゴーレムのブロックでできた体にひびが入っていき、粉々に崩れていった。

「なんや、六甲山の岩みたいにぽろぽろ壊れていってるわ。もろいな~」
 六甲山は兵庫県神戸市や芦屋市、西宮市、宝塚市あたりにかけて連なる山のことである。あの六甲おろしの「六甲」だ。都市部の北側に山が連なってるので、ここから風が吹き下りてくるのだ。

 大阪市内には本格的な山はないので、ビルなどから見える六甲山の山並みは大阪に住む者にとってもなかなかなじみ深いものである。

「あれ、岩のゴーレムが壊れた……」「誰かに幻覚の魔法でもかけられてるんじゃないか?」「何が起きたんだ……」

 いくつかのパーティーが自信を喪失して、その日の仕事を切り上げたりしていたが、ハルナはそんなこと全然知らなかった。少なくとも、彼らからハルナのほうに話しかけてくることはない。単純に怖い。
本当に値切るのかと思われるかもしれませんが、大学時代、大阪出身の友人と大阪の家電量販店行ったらマジでナチュラルに値切ってました。
次回もよろしくお願いします!
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