挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異世界お好み焼きチェーン ~大阪のオバチャン、美少女剣士に転生して、お好み焼き布教!~【改題しました】 作者:森田季節

4章 大阪のオバチャン、タコ焼きとうどんを広める

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

19/46

19 うどんを作る

「ほんとにいろいろ作るわね」
「ナタリアも舐めてみるか?」

 ハルナは寝転がりながら、木の箱をナタリアのほうに差し出した。
「……いらないわ。それに関してはあまりおいしそうに感じない」

「発酵食品は子供の頃から慣れてないと変に感じるからなあ」
 たとえば納豆が苦手な外国人が多かったように、匂いなどに親しんでない発酵食品はハードルが高いのが通例だ。
 なので、ハルナも無理強いはしない。

「とにかく、味噌でも舐めとったら栄養素はある程度足りる。あとは休むだけやな」
 地下十三層は今日も平和だ。本来、平和なわけはないのだが、最近ではよほど頭の悪いモンスターでない限り、ここを襲ってはこない。

 店ということは無数に回復アイテムがあるわけで、モンスター側がジリ貧になるだけだ。もちろんナタリア含む店員たちも実力者揃いなので、簡単に返り討ちにできる。

「でも食欲もないなあ。こういう時はうどんが食べたい……」
 うどんは消化がよく、ハルナも小さい頃は風邪をひいた時など、よく母親が作ってくれた。
 大阪のうどんは讃岐うどんとはまた違ったものだ。

 少し甘い黄金色のダシにつかった、そこまで腰のないうどん。たいてい、甘い油揚げと刻みネギが載っている。あったかいダシを飲んで、ふうと一息ついたものだった。

 地名のイメージ上、どうしてもどぎつい印象を与える大阪だが、京都が近い土地柄なせいかダシはかなり上品だったりする。

 ふと、ハルナは考えた。
 異世界でも、うどんをやれないだろうか?

「でも、ダシをとるんが面倒やなあ……」
 カツオ節はタコ焼きの具ということで、魔法で取り出せる。

 昆布に関しては塩昆布がカバンから元々出せていたので、最悪これを使える。
 でも、まだ醤油が残っている。実はこれも裏技がなくはないのだが、どっちにしてもあまり量はない。

 あと、もう一つ大きな問題があった。
「この世界、箸がないんよなあ……」
 箸がなければ、あったかいダシになみなみとつかったうどんを食べるのは難しい。
 うどんだけではない。ラーメンも、かけそばも、フォーも、あったかいダシにつかったタイプの麺料理は食べづらい。

「フォークは貴族層の中にはあるし店でも用意はしてるけど、やっぱりそれやとスパゲティみたいなタイプでないと――――あ、そうか!」
 また、ハルナはひらめいた。

 ひらめいたら疲れもどこかに飛んでしまった。
「別に大阪のうどんのスタイルにこだわらんでええやん! ぶっかけうどんみたいなやつなら、やれるわ!」
 早速、うどんの麺作りにハルナは入った。

 小麦粉は店にたくさんある。ここに水と塩を入れて、よくこねる。
 延ばす棒だが、これは冒険者がダンジョンで拾って、店に置いていったものがある。
 木の棒は最も原始的な武器の一つで、ダンジョンでちょくちょく出てくる、一種のハズレアイテムだ。

「よし、この棒、ちょうどええわ」
 ボール状になった小麦粉をよく延ばすと、料理用ナイフで切っていく。
「やけに細長いものを作ってるのね……」
 麺料理になじみのないナタリアが不思議そうな顔をした。

 常連客もいったい何をするのか注視している。これまでも、ハルナは誰も考えないことをずっとやってきた実績がある。
「さてと、鍋にたっぷりの水を入れてと、うちの魔法で火を起こして、沸騰したらこの麺を入れてと……」

 その間に今度はタレ作りだ。
 麺にからまるようにとろみのついたもののほうがいい。

 醤油はないが、オリーブオイルや様々なハーブ、香辛料、調味料などもある。
 パスタソースみたいなものならこの土地の食材で作ることができる。

「冒険者が食べるんやから、塩っけはちょっと強めで。あとはハーブと野菜を刻んでオイルとからめて、あとはソーセージをブロック状にしたやつも入れてみよか」
 指を入れて味見をしてみる。

「うん、悪くはない! 瀬戸内海の風の変わりに地中海の風が吹いとる! 行ったことないけど!」
 この世界の人間がわからない地名を言うのも、みんな慣れっこになっている。

「ああ、そうや、この中で氷の魔法使える人おる?」
「私ならできるけど。氷も凍結させるのもどっちでも」

 ナタリアが手を挙げた。
「よっしゃ! じゃあ、氷水作っといて!」
 ナタリアはすぐに水の入った器の中に氷を流し入れた。

 うどんを沸騰した鍋から取り出す。
 さっと氷水に入れて熱を抜いて、最後に水気を取る。

 あとは皿に移して、特製のパスタソースならぬうどんソースを上から流しかければ――
「オールサック風うどんの完成や!」

 本来のうどんと比べるとかなりスパイシーな香りがするが、これが意外と合うはずだ。
「まずは私が試食やな」

 タレと麺をよくかき混ぜてから、フォークで少し巻いてから、口に運ぶ。
「うん! 暑い日にはとくに最適の味やな! 食べた瞬間、貴族になった気になる!」
 舌鼓を打つハルナを見ている面々の口に唾がたまってくる。

「あっ、みんな、試してみる?」
 常連のほうにハルナは使ったフォークを差し出した。
 ぶっちゃけ、味よりほかのところで色めき立った。

「あれはハルナちゃんが舐めたフォークだ!」
「俺がまず試食する!」
「ほんのちょっとでいい! その代わり、俺からだ!」

 男の冒険者にデリカシーなどないので、一触即発の空気になる。
 それを見ていたナタリアが、さっとフォークを取って、きれいに水で洗ってしまった。

 常連客が落胆したのは言うまでもない。
「あなたたち、ちゃんと味のことに興味持ちなさいよ!」

 ナタリアの言うとおりだった。常連たちも反省していた。
 あらためて、常連たちはそれぞれ一本ずつフォークを渡されて、あらためて、うどんの試食に移る。

 不思議と白く、細長い麺料理をつるつると口に入れる。
「これもまた初めて食べる食感と味だ!」
「なんてノドごしがいい食べ物なんだ! まるで飲み物みたいだ!」
「これは魔族でも喜んで食べるだろうな!」

 異世界に上陸した麺料理は好評で迎えられた。
「麺には変な魅力があるもんなあ。中毒みたいにラーメン食べる人もようけおったしなあ」
 試食分はすぐになくなった。

「メニューに加えたほうがええかな?」の声に、いの一番にナタリアが「入れるべきだわ」と進言した。
 こうして『ハルちゃん』に、うどんというメニューが加わったのだった。
関西在住だった時は圧倒的にうどんをそばより食べてました。東京に移ってからもたまに埼玉に武蔵野うどん食べ歩きなどをしております。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ