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第8話 大猪
朝日が窓から入り、寝ているシンの顔に優しく降り注ぐ。

暖かな陽射しで、シンは目を覚ました。

シンはベッドから飛び起き、伸びや屈伸を始めた。

…どうやら、体が痛む箇所はもう無いようだ。

「治ったー!!」

万歳しながらそう叫ぶと、シンは勢いよく外へと出て行った。






シンは酒場の前のクエストボードに来ていた。

キノコの納品、ハチミツの納品、生肉の納品…


依頼書を斜め読みしながら、めぼしい依頼を探すが、これと言ったものが見つからない。



シンが暫く掲示板の前で悩んでいると、家のある方角から一人の女性が歩いてくる。
その人は迷うことなくシンに向かって歩いてきた。

「おはよう、リナ。
今日は随分と早起きだけど、何かあったの?」

「おはようじゃないわよ。
あんたが朝から大きい声で“治ったー!”とか叫ぶから、起きちゃったのよ。」

大きな欠伸をしながら、不機嫌そうにリナは呟く。

「それで、何か良い依頼はあった?」

「いや、特にいつもと変わりない依頼しかないよ。」

「な〜んだ。
楽しくないの。」

リナはそう言いながら、再び欠伸をする。

「あら〜、お二人さん。朝から仲が良いことですねぇ。」

メリーがカウンターから抜け出し、シンたちに近づいてきた。

「まさか〜
お二人は付き合ってたり?」


「メリーさん、一体何を言ってるんですか。
今日、何の狩りに行くかを決めていただけですよ。」

シンは一つ大きな溜息をつき、メリーに言葉を返す。

「そっかぁ〜
それは残念ですね〜


ところで、
お二人さんは今から何かの狩りに行くんです〜?」

「いえ、めぼしい依頼がないので、今日は行きませんよ。」

「なら〜
二人でドスファンゴの討伐に行ってみない?
最近この辺りで出没するらしくて、近隣の村から苦情が来てるんですよ〜。」

そう言いながら、メリーはシンに一枚の依頼書を手渡す。


「ドスファンゴですか…
どんなモンスターなんですか?」

「狩り場でよく見かける、ブルファンゴってやつの親玉ですね〜。
ようするに、でっかい猪ってことです〜
見た目はただの猪なんだけど、時にはランポスを倒すより面倒な時があるらしいですよ〜」

「リナ、どうする?
ドスファンゴの依頼を受けてみる?」

「…。」


リナは地面を眺めた状態で、固まっている。

「…リナ?」

「…えっ?
あっ、良いわよ。私は別に何の狩りでも。」

「リナが考え込むなんて、珍しいなぁ。
それに、ちょっと顔も赤いし、風邪でもひいたんじゃない?」

「…うるさいわね!
ならドスファンゴの討伐に行くのね!
私、準備してるから行くときに声をかけてね。」

そう言って、リナは家へ小走り気味に帰って行った。

「…。どうしたんだろうなぁ?
何か、今日のリナは変ですね。」

シンがメリーの方を見ると、メリーは俯いて肩を震わせながら笑っている。

「メリーさんどうしたんですか?」

「いや〜何でもないですよ〜
ただ、ちょっと面白かっただけです〜。

なら、依頼書を貸して貰えます〜?」

シンは、持っていた依頼書をメリーに渡した。
メリーはカウンターに戻り、受注済みの印鑑を押してシンのところに帰ってきた。

「なら、ドスファンゴの討伐、頑張ってきてね〜。」

そう言いながらメリーは依頼書をシンに渡し、またカウンターへと帰って行った。

シンは、リナやメリーの様子が気になったが、自分も帰って狩りの準備をすることにした。



家に戻ると、壁の向こうのリナの部屋から、物音がする。
たぶん狩りに行く準備をしているのだろう。

「リナ、大丈夫?」

「別に大丈夫よ。」

リナの部屋の物音が止まり、壁の向こうから返事が返ってきた。

「もし体調が悪いんなら、明日とかに行くことにしても良いよ。」

「体調はバッチリよ。
それよりも、早く準備しないと置いていくからね。」

その言葉の後、ドアの開く音がし、リナが出て行くのがわかった。

「準備速すぎだろ!」

そう言いながらも、シンは急いで片手剣をひっつかみ、インナーのまま村の出口へと向かった。





村の出口にシンが到着すると、ジャンボ村と書かれた看板に凭れるリナの姿があった。

リナは俯いていて、また何かを考え込んでいるようだ。

シンが近づくと、足音に気づいたのか、リナが顔を上げる。

「シン、鎧はどうしたの?」

「あれはこの前壊れたから…
今は何もないなぁ。」

「ないなぁって…
無いんなら買えばいいじゃない。」

「…お金が足らなくて…」

シンは小さく縮こまっている。
そんなシンを見て、リナは大きく溜息をついた。

「仕方ないわねぇ。
なら、今回の狩りで稼ぐお金で、新しい鎧を買いましょうか。

だから…
今回はシンは一撃も食らったらダメだからね!」

そう言って、リナは踵を返して密林に向かって歩いていった。

シンもリナの後ろについて、密林へと入っていった。


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