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第4話 青き狩猟者と謎の姫君2
密林…それはいつでも植物が鬱蒼と生い茂り、多種多様な生物が分布している。
環境が年季を通して安定しており、ハンターが狩り場として選ぶ場所でもある。

今、この瞬間にも
2人のハンターが並んで歩いていた。

「ごめんね。
竜車を使わずに歩くことになって。」

「いえ。
いろんな物が見れて面白いです。」

「そうかぁ。
僕から見たら、もう見飽きた風景なんだけどなぁ。」

「まぁマーカーさんはいつも来てるんでしょうから。

そう言えば、その防具って何のモンスターから作った物なんですか?」

シンはマーカーの銀色の防具を眺めながら聞いてみた。

「これはリオレイアから作った防具だよ。
この辺りにも出るんだけど…
まぁその内狩ることになると思うよ。」

「リオレイア…ですか…。
なんだか強そうですね…。」

「まぁ、弱くはないね……。」


そんなことを話してる内に、シンとマーカーは洞窟の前に到着した。

大きく聳える岩盤質の山に大きく開いた入り口。
その先に立ち入らせないかの如く、洞窟の奥はなにも見えない闇に覆われていた。

「この中にドスランポスがいるんですか?」

「うん。そのはずだよ。
ここは奴らの寝床なんだ。だから、今の時間に行けば会えると思うよ。」

「なら…入りますか?」

「いや、入る前にお客さんが来たみたいだ。
簡単には入らせてくれないみたいだね。」

マーカーがそう言った直後、洞窟の中から何かが出てきた。

「来るよ!!
横に避けて!!」

その言葉が耳に入り、脳が理解した刹那、暗闇から何かが飛びかかってきた。

飛びかかられる前に来ることがわかっていたからか、シンは余裕を持ってそれを避けることが出来た。

「ほら、武器を出して。
戦いの始まりだよ!」

すでにその時には、マーカーは武器を構えていた。

すらりと伸びた細い刃。
その切っ先を敵に向けつつ、シンを戦いに誘導する。

シンは言われるがままに、片手剣を抜刀した。

「こいつがドスランポスですか!?」

「いや、こいつは普通のランポスだ。ドスランポスはもっと大きいよ。

ん〜
やっぱり最初から独学で倒すのは難しいだろうから、こいつでやり方だけを説明するよ。」

しかし、マーカーの言葉とは裏腹に、ランポスはシンに向かって短く雄叫びをあげた。
野生の勘か、シンの方が弱いと判断したのだろう。

ランポスは、シンに飛びかかろうと体勢を低く構える。

しかし、それは後ろからの衝撃によって阻止された。

ランポスの死角に立っていたマーカーが、後ろから思いっきり蹴りを入れたのだ。
不意を突かれたランポスは、そのまま前のめりに倒れ込んだ。
だが蹴り程度では大したダメージを与えられるわけではなく、すぐにランポスは立ち上がった。

今度はマーカーを先に殺すことに決めたようだ。

「そうだ。
僕が君の相手だ。」

言葉を理解したのかは定かではないが、ランポスはマーカーに飛びかかった。

それに対し、マーカーは一歩だけ横に避けた。
それだけなのに、ランポスはマーカーにかすることもなく、ただ横を通り過ぎていく。

それに合わせてマーカーが剣を横に振る。するとランポスの横腹に赤い線が入った。
だがその傷は相手に致命傷を与えるには浅すぎたようだ。

「大体今の感じだよ。相手の攻撃を避けながら、隙をみて攻撃する。」

マーカーがシンに説明する間、ランポスが待ってくれているはずもなく、
話し終わるときにはすでに、ランポスはマーカーに向かって走り出していた。

そして、そのままの勢いで相手に噛みついた…はずだった。
しかしランポスの攻撃は、再び空を切る結果となる。

恐るべき速さで相手の攻撃を避けながら、マーカーは剣を振り降ろし、相手の前足を切断する。

「こうやって、段々相手の体力を削っていくんだ。
そしていけるって思ったときに…」

ここでマーカーは言葉を切った。

そしてそのままドスランポスに向かって歩いていく。

ゆっくりとランポスとマーカーとの距離が短くなっていく。

先に動いたのはランポスだった。
最初と同じように、マーカーに向かって飛びかかった。



――避ける。
シンは、今までのことから予想して、そうすると思っていた。

しかし、マーカーは避けない。それどころか、すごい勢いで近づく相手を凝視している。



“危ない!!”
シンは心の中でそう叫んだ。
否、実際に叫ぶ時間は無く、心で叫ぶことしかできなかった。



マーカーは、ぐんぐんと近づく相手に向かって一振り、剣を振り抜いた。

それは、正確に相手の頭部に当たり、それを両断する。

意志を無くしたその塊は、マーカーの上を通過し、地面に力無く落ちた。


「………いけると思ったら、とどめを刺す。
コツは、躊躇をしないことかな?」

マーカーは、話しながら剣に付いた血を振り落とし、納刀した。



……すごい。
今、この目の前にいる人は、とんでもない技術を持っている。

シンは関心のあまり、言葉すら出てこなかった。

そんなシンを、マーカーは不思議そうな顔で見つめていた。

「もう武器をしまって良いよ。
敵がいなくなったからね。

あぁ、そうだ。
僕の今回の武器の説明をしておこう。
これは太刀って言って、大剣を派生させた物なんだ。
ガードは出来ないけど、切れ味と高い攻撃力が特徴だね。

ほかの武器においては、追々説明するよ。
なら…中に入ろうか。」

そう言って、マーカーは洞窟の中に入っていった。
置いて行かれても大変なので、シンは急いで納刀し、マーカーの後についていった。



洞窟の中は、温度が低く、あちこちにキノコや小さな草が生い茂っていた。

その中に、ランポスの姿が2匹あった。

「ならさっき教えたことの実践をしてみようか。シン君は右側の奴を、僕は左側の奴を狩るからね。」

そう言いながら、マーカーはランポスに向かって走り出した。

ランポスたちがこちらに気付く。
そして2匹が同時に雄叫びをあげた。

それを聞きながらシンは一呼吸し、ランポスに向かって走り出した。

最初に走っていったマーカーが2匹のランポスの中間に入って戦っている。

それを利用して、シンは右側のランポスの背後につくことが出来た。

シンは、勢いをつけて抜刀しながら、思いっきりランポスを切りつける。
しかし、刃はランポスの肉に深くは入らず、大きいダメージは与えることが出来なかった。

切りつけたランポスがこっちを向いた。

決して敵は大きくない。
だが、その大きさに見合わない緊張感が辺りには立ちこめていた。

―狩るか、狩られるか―

そんな空気がとても懐かしく思えた。
自分が唯一生きている空間とさえ思った。

シンはランポスの側面に回り込み、再度切りつけた。
しかし、またしても決定的なダメージを与えることは出来ない。

その直後、ランポスはシンを噛み付こうとするが、シンは前転して、紙一重でその攻撃を避ける。

空を噛む相手の喉元に、シンは全力で突きを放った。

今度の攻撃は手応えがあった。
相手の首から流れる血の量がそれを物語っている。

それをみて油断したのか、シンは自らの動きを止めてしまった。

敵がそれを見逃すはずもなく、
シンは自分が突いたばかりのランポスに、かなり離れた洞窟の壁まで蹴り飛ばされた。

一応起きあがったが、シンの全身を強い痛みが襲う。
ふらつきながらも相手を確認すると、とどめを刺さんとばかりにこちらに走ってくるのが見えた。


…もう、死ぬのかなぁ…?
…結局なにも出来なかったなぁ…。

「目を閉じて!」

半ば諦めていたシンに、怒声が飛ぶ。

現実に引き戻されたシンは、言われたとおりに目を閉じた。

目を閉じていてもわかるほどの強い光が目の前で発生した。
恐る恐る目を開けると、そこには今の光で視力を奪われたランポスの姿があった。
どうやら目を回しているようだ。

「危なかったね。
もしかしたら死んでたかもよ。」

「すみません…。」

「まぁ、生きてるから問題はないんだけど…
例え、どんな攻撃を受けても、諦めずに行動をしないと駄目だよ。
諦めたら、すぐに死んじゃうからね。

さて、…なら今の内にとどめを刺しなさい。」

「…。」

シンはためらった。
自分を殺そうとしたとは言え、目の前にあるのは生きている命。
自分勝手に取れるものではないのではないか…

そんなシンの気持ちを読んだのか、マーカーがシンに話しかける。


「もし、ここで殺せないなら、今すぐ山を下りて、ハンターを止めなさい。

私たちが命を懸けて戦ってるのと同じように、彼らも命を懸けて戦ってるんだ。
それを踏みにじって、相手を弱めるだけ弱めて、とどめは可哀想だから刺せないというなら、ハンターをやる資格はない。
ほかにも職業は沢山あるわけだし、無理にこの職業にこだわる必要はないよ。」


深い静寂が辺りを包み込む。


「…そうですね。
…僕が…甘かったです。


…とどめを刺します。」

そう言って、シンはランポスに近づいた。

ランポスは、視力は回復しているようだったが血を流しすぎているらしく、その場に倒れたままシンを目だけで追った。

ランポスの喉元に剣を当てる。
片手剣を握る手に、力がこもる。

「…ごめん…。」

その一言と同時に、シンはランポスの首を切った。
ランポスは静かに目を閉じ、そのまま動かなくなった。

シンは、片手剣を鞘に収め、マーカーの元へと戻る。

「…これがハンターって奴だよ。

失望した?」

「…いいえ。
確かにつらい仕事ですが…生きることを学んだ気がします。」

「…良い学習になったね…。」

その時、洞窟内に聞き慣れない音が響きわたった。

「これは…悲鳴?」

「まずいな…
人の悲鳴に混ざって、ドスランポスの声が聞こえた。
急ごう!」

その言葉が合い言葉だったかのように、2人は音の源に向かって走り出した。


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