ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第2話 シンとジャンボ村
シンが部屋を出ると、目の前には平和な村の姿があった。
小さな村のようだが、活気に溢れ、とても良い村だとシンは思った。

そんな光景の中に、シンは村長を発見し、駆け足で村長の元へと向かった。

「やっと来たか。
なら今から村を案内するよ。」

村長はそう言いながら、目の前にある看板を指さした。

「これは、村の掲示板だよ。
何か伝えたいことがある時や、注意しなければいけないことが貼り出されるんだ。
時々見てみたらいいんじゃないかな。」

酒場の改装完了…
腕相撲相手募集…
そんな内容の紙が数枚貼ってあった。
シンはその中に1枚の真新しい紙を見つけた。

その紙には
「謎のハンターついに目覚める!」
と書いてあった。

「村長、これってまさか…」

「うん。君のことだよ。
君が来るまでの間にオイラが書いたんだ。
こういう風にいきなり書かれるから気をつけて見ときなよ。」

「見るようにはしますけど、謎のハンターって書き方は無…」

「さぁ、次を見に行くからついてきなよ。」

シンの言葉を軽く無視しながら、村長はスタスタと歩いていった。

シンも置いて行かれないように、村長の後をついていく。


しばらく歩くと、テーブルやイス、酒樽が並ぶ場所に着いた。

「誰かと思えば村長さんじゃぁないですか。
何かご用ですか?」

「この前密林に倒れていたハンターが目を覚ましてね。
この村に住むことになったから、案内してまわってるんだ。

彼女は酒場の切り盛りをしてるんだ。
狩りのクエストをギルドから引き受けるのも彼女の仕事だから、狩りに行くときは彼女に声をかけたらいいよ。
たぶんハンターにとって一番大事な場所じゃないかな。」

「酒場をやっていますメリーと言います。
これからよろしくね。」

「シンって言います。よろしくお願いします。」

「ハンターなら、僕のことを忘れちゃいけないにゃ!」

不意に横からアイルーが話しかけてきた。

「僕はこの村で道具屋をやってるにゃ。
一般生活に必要なものから、狩りに必要なものまで幅広く取り扱ってるにゃ。
今からよろしくにゃ。

それにしてもシンって言ったかにゃ?
君は良い職業を選んだにゃ〜。
ハンターっていうのはカッコいいからにぁ〜。
なによりハンターは良い金づる…
ゴホン、一番のお得意様だにゃ。

狩りに行く前に、僕の店で買い物をしていくと良いにゃ。

そうだにゃ。
初回限定サービスとして、回復薬をあげるにゃ。
以後、ご贔屓ににゃ〜。」

道具屋のアイルーは、そう言って酒場から出ていった。

「まぁ、そう言うわけだから、必要な物があったら彼の店に行けばいいよ。

さて、次は…」

「あれ、もう行っちゃうんですか?
何か食べていきませんか?」

その言葉を聞いた瞬間、今までにこやかだった村長の顔がひきつった。さらに額には冷や汗が浮き出ている。

「…いや、今回は遠慮しとくよ。まだシン君を案内しないといけないし。
それじゃあまた来るね。」

村長はその言葉を残して、逃げるようにその場を去っていった。

「いっつもご飯の話になると村長はどこかに行っちゃうんですよね。
やっぱり忙しいからかなぁ〜?
シン君は何か食べてく?」

シンは村長の反応から、何か食べてはいけない気配を感じた。

「いえ、村長を待たせるのは悪いので…
今日はこれで失礼します。」

「そっかぁ。
わからないことがあったら何でも聞いてね。
スリーサイズと体重以外なら答えてあげるから。」

その言葉にシンは笑みを漏らしながら、軽く会釈をして村長の元へ向かった。



「あの子、性格は良いんだけど、料理の方の腕がちょっとね…
この前食べて、おなか壊しちゃって。」
村長に追いつくと、村長は小声でシンにそう話かけた。

「なら次に…鍛冶屋に行こうか。
って言ってももう目の前にある訳なんだけど…」

シンの目の前には、大きな炉が設置されており、赤々とした炎が時折顔を覗かせていた。

「ほっ。
これはまた珍しい客が来たもんだね。
こっちの客は初顔だね。新入りかい?」

「はい。
シンって言います。」

「それよりも、あんたが腰にぶら下げている剣を見せてくれないかい?
その剣から変わった気配がするんでね。」

言われたとおりにシンは2本の剣を工房のおばちゃんに手渡した。

おばちゃんは鞘から剣を抜き、まじまじと見つめた。
白い剣と黒い剣とを見終えた後、剣を鞘に戻し、シンに渡した。

「両方ともこの辺りの製法じゃないね。
長いこと鍛冶師をやってきたが、こんな剣は見たことないよ。
黒い方は武器として使えるけど、白い方はあまり殺傷能力はないね。
狩りの時は黒い方を使うことだね!」

おばちゃんはここまでを一気に言い上げた。

「そうなんですか…ありがとうございます。」

「何か作りたい物があるんなら、材料と金を持っていつでもおいで。」

そう言ったおばちゃんは、手に持った金槌で真っ赤に焼けた鉄を打ち始めた。

「なら…終わったみたいだから次に行こうか。
最後に行くところは造船所だ。」

「造船所…?
この村は船も造ってるんですか?」

「あぁ。
竜人族の男が親方をやってる。
まだまだ完成しそうにはないけど、完成したらかなり立派な船になりそうだよ。」

2人は話しながら造船所へと向かった。


カーン…
カーン…

辺りに鎚を打つ音が辺りに響きわたる。

「親方ーー!!」

村長が声を張り上げて誰かを呼ぶ。

「うるさいわ!
そんな叫ばんでも聞こえとるわい!!」

村長以上に大きい声で、そこにいる誰かが叫び返した。

「ちょっと話があるから出てきてくれないか?」

村長も負けず劣らずの大声で言い返す。

「まったく…
坊主、今日はどうした?」

おなかの出ている竜人族の男が、材木の奥から姿を現した。

「密林に倒れていたハンターが目を覚ましたんだ。
この村に住むことになったから、案内してまわってるんだ。」

「シンです。
よろしくお願いします。」

「やっと目が覚めたか。
俺はここで船を造ってるんだ。
親方と呼んでくれりゃいい。」

「えーと…
今はお取り込み中ですかね?」

横から大きな袋を持った男が話しに割って入った。

「おぉ!
マーカーじゃないか!
そう言えば紹介しておかないとな。
彼は、この村の村つきハンターだ。
君を密林から連れてきた人だよ。」

「リブス・マーカーです。どうぞよろしく。
いやぁ、生きていて良かった。」

「シン・カージスです。その節はどうもありがとうございました。」


「さて…
挨拶も済んだところで…。
シン君はどれくらいのモンスターなら狩ることができる?

…いや、この質問はだめだな。…ごめん。
密林には行ったことがある?」

「いや…行ったことはないと思います。」

「なんだ小僧。何でそういうあやふやな…」

村長は、そう言いかけた親方の前に手を出して、最後まで言わせないようにした。

「彼には彼の事情があってね。
…そうだ、マーカー。君が暇な時で良いから、シン君を密林に案内してあげてもらえないか?
いきなりハントに行くより、その方が安全だと思うんだ。」

「別に構いませんが…
腕試しに、ドスランポスくらいがちょうど良いですかね?」

「まぁそうだろうね。ならよろしく頼むよ。」

そういいながら村長は、別の方向に歩き始めた。

「じゃあシン君。
あの部屋は勝手に使って良いからね。
活躍を期待してるよ。」

そういって村長は家の陰へと消えていった。

「酒場にドスランポスの狩猟クエストが貼ってあったから…
明日の早朝に出発したんで良いかな?」

「あっ………はい。」

あまりにとんとん拍子に話が進むので、半ば話についていけてなかったが、思わず返事をしてしまった。

「ならそういうことで。
ところで親方、船底に使うガノトトスの素材はこれで揃いましたよね?」

マーカーが手に持っていた大きな袋を差し出しながら話す。
袋を渡された親方は、渡された袋の中身を確認しているようだ。
その途端まるで子供のように明るい笑顔になった。
よほどその材料を心待ちにしていたのだろう。

「確かにこれで材料は揃った。
ご苦労だったな。」

「いえいえ。
また何かいる物があったら言って下さい。
それでは、ガノトトスを狩るのに疲れたので、すみませんが今日はもう寝ます。」

「ワシも材料が手には入ったことだし、船造りを再開するか。」

そう言って、2人は別々の方向に歩いていった。

そして、シンは一人ポツンと取り残された。

「……帰って寝るか…。」

シンは一人で寂しく家路についた。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。