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第18話 砂塵と旅人2
ジリジリと照りつける太陽。
その光の強さは昨日の光の強さの何倍にもなり、シンとリナに降り注ぐ。

「…何でこんなに暑いの?」

もはや意気消沈気味のリナがシンに尋ねる。

「昼近くまで寝てしまったんだから仕方がないんじゃない?
それに、昨日はこの時間にはもうオアシスに入ってたし。」

シンがリナの質問に冷静に答えた。

「それにしても…
シンはこんなに暑いのに、よくクーラードリンク無しで耐えれるわねぇ…。」

「僕は今そんなに暑いとは思わないけどな。

逆に、夜寒いのにホットドリンクを飲まないリナの方が凄いと思うよ。」

「そうかしら?
まぁ、私は寒いところで生まれ育ったから、寒さには元々強いんだけどね。」

リナは軽く胸を張って自慢げに話した。

「そっかぁ…。
なら僕は暑いところの出身なのかな?
暑さには強いけど、寒さには弱いから…」

「その可能性もあるとは思うわ。
まぁ、一概には言えないんでしょうけどね…」

リナは難しい顔をしながらシンに答えた。

その後も2人は話ながら、昨日ガレオスを見たポイントへと向かった。






「昨日はこの辺りにいたんだけどな…。」

シンは砂丘の上に立ち、辺りを見渡しながら呟いた。

「ガレオスは時間によって場所を移動するんじゃないの?」

シンの後ろについて砂丘を登り切ったリナがシンに尋ねる。

「そうみたいだね…。
なら、どっちの方にいると思う?」

「何でそんな事私に聞くのよ?」

「何となく、勘が強そうだなって思ったから。
イャンクックとかドスゲネポスだって、リナの言葉で見つけることが出来たんだし。」

リナはその言葉に溜息をつきながら、辺りを見渡す。

そして、なんの迷いもなく一つの方角を指さした。

「あっち…かな?」

「ちょっと待って。地図にメモするから。」

そう言いながらシンは地図を取り出し、リナが指した方角を書き込む。

「村に円を描くようなルートになりそうだね。」

シンは地図を折り畳んでポーチにしまい込むと、リナが指さした方角に向かって歩き始めた。








暫く歩くと、一面の砂漠から景色が一転して、ゴツゴツした岩が突出している場所となった。

その岩の間を縫うようにして、ガレオスと思われる生物が砂塵を巻き上げている。

「やっぱり、リナの勘は凄いなぁ。」

「まぁ、勘を誉められても何とも言いにくいんだけど…」

リナはそう言いながらも、満更でもない顔をしている。

「リナの勘は凄いんだけど…。
とりあえずここからどうする?」

シンは砂を泳ぐガレオスを目で追いながらリナに質問した。

「………さぁ?
地上への出し方がわかんないし…。」

リナが首を傾げながら答える。

「とりあえず、どれがドスガレオスかを調べる必要があるし、あいつらの近くまで行ってみようか?」

「そうね。
行かなきゃ戦うことも出来ないもんね。」

そう言いながら2人はさらにガレオスの群へと近づく。

すぐ側まで寄ると、ガレオスたちは砂から上空へ勢いよく飛び出し、2人を確認するとすぐに地中へと帰っていく。





「まるで曲芸でもやってるみたいね。」

地中から次々に飛び出すガレオスを眺めながら、リナが呟いた。

「確かに…
でも見るだけならともかく、あれをどうやって攻撃したらいいんだろう?」

「やっぱり、地上にジャンプしたときに合わせて叩けばいいんじゃないの?」

「それしかないよね…」

「とりあえず、やるだけやってみましょうよ。」

そう言ってリナはハンマーを構え、悠々と泳ぐガレオスに向かって走っていく。


「絶対当たらない気がするんだけどなぁ…」

ブツブツ言いながらもシンは片手剣を抜き、リナの後を追った。






「…もうダメ…。限界…。」

リナがハンマーを杖代わりにしてもたれ掛かり、ぜいぜいと息を切らしている。

それもそのはず、あれからリナは飛び回る目標物に向かってハンマーを延々と振り回し続けていたからだ。



そんな疲労困憊のリナに向かって、一匹のガレオスが音もなく近づく。

それに気付いたシンは、そのガレオスに対して武器を構えた。

すると、今まで見えていたガレオスのヒレがすーっと地面に沈み、地上からでは確認することが出来なくなった。

シンがガレオスがどこに行ったのか探していると、突然リナの背後の土が盛り上がり始める。

「危ない!」

そう叫んだものの、本当に危ないのかはシンにはわからない。

しかし、その光景にどこか異様なものを感じたシンは、リナに向かって走り出す。





リナは乱れた呼吸を整えながら、叫び声がした方向に振り向いた。

その直後、何かが飛び上がったのが視界の端に入って来る。

それに気付いたリナはその場から逃げようとするが、疲労が溜まった体で完全に下ろしてしまったハンマーを持ち上げることが出来ず、そのまま一歩も逃げることは出来なかった。

避けることを諦め、目を瞑ったリナは肩にドンッという強い衝撃を受け、その場に尻餅をついた。





…何かがおかしい。
確かガレオスは自分の倍近い体長のはず。故に、体重も重いはずなのに、あんな衝撃だけで済むなんて事はないはず…


リナはそう考え、ゆっくり目を開ける。

辺りには大量の砂が舞っており、目を開けた瞬間には何も見ることは出来なかった。

しかし、だんだんと砂埃が収まってくるとともに、周囲の状態を確認することが出来た。

そこには、うずくまる人影が一つあるだけだった。
だが、それだけでリナは全ての状況を理解することが出来た。

「シン!」

自分の身代わりとなった者の名を叫びながら、リナはシンの元へと駆け寄る。

近づいてよく見ると、シンは右肩を押さえてうずくまっていた。

そこからは真っ赤な液体があふれ出し、砂を円形に染め上げている。

「…リナ、無事だったんだ。よかった…」

近づくリナに気付いたシンは、顔を上げて笑顔でそう言った。

「私は無事でも、シンが怪我してるじゃない!」

そう言いながらリナは自分のポーチから応急薬を取り出し、シンの傷口に振りかけた。


「つっ!!」

どうやら、応急薬は傷にしみるらしい。
シンに浮かんでいた笑顔は苦痛の表情へと変わり、再びシンはその場にうずくまった。

だが、シンはすぐに身を起こすと、右肩を押さえたまま立ち上がった。

「立っても大丈夫なの!?」

「僕の心配より、まずこの展開を変えないと!
このままだと2人で何も出来ずに殺されるだけだよ!」

シンは大声でそう言うと、怪我をしていない左手でリナの腕をつかみ、走り始めた。

「ちょっと!
どこに行く気なの?」

「一旦引くんだよ!
このまま引かずに殺されるより、引いて形勢を立て直す方が良いに決まってる!」

「そうは言っても…
一体どこに逃げるのよ!?」

シンは考えながらも走り続ける。

「…昨日のオアシスまで行こう!
たぶんやつらは地面が湿っている場所では地中を泳げないはずだ!」

「あそこまで逃げるの!?
そんなに逃げるんなら、シンの怪我の手当を…」



「伏せて!!!」

シンはリナの言葉を突如遮り、腕を引っ張ってリナの体勢を低くさせる。

リナが地面に膝をつけた刹那、2人がいるすぐ先の砂の中から何かが飛びだした。

それは、今まで見たガレオスより二回りは大きく、色もガレオスがクリーム色なのに対し茶褐色をしている。

そんな竜は、辺りに砂のブレスを吐き散らし、再び砂の中へと消えていった。

リナは体勢を低くしたため、ブレスに当たることはなかったが、それでも所々すり傷ができ、血がにじみ出ていた。



もし、あのまま走り続けていれば地中からガレオスに衝突されていた。

もし、止まっていたとしても、止まっていただけではあのブレスの餌食になっていて、無事では済まなかった。


そう考えたリナは身震いし、シンの顔を見る。



「…やっぱり、今は僕の傷より逃げる方が先だよ。」

シンはリナに微笑みかける。

そしてリナより先に立ち上がると、リナに手を差し伸べた。

リナはその手をつかみ、立ち上がる。

そして、2人は再度オアシスに向けて走り始めた。



「たぶん、さっきのあれがドスガレオスだね。」

リナの先を走るシンが、後ろを振り返らずにそう語りかける。

「そうね。
明らかに大きかったし、色も違ったし。」

「あれを討伐するのか…。
…かなり骨が折れそう。」

シンは走りながらも軽く溜息をついた。



その後も2人は縦横無尽に泳ぐガレオスを間一髪で避けながら、オアシスを目指した。

それを追うガレオスも諦めることをせず、ずっと追跡と攻撃を繰り返している。

さらに、茶褐色の背びれも時々見え隠れするのが確認できたことから、ドスガレオスもついてきているようだ。



「あと……少し…。」

シンはそう呟くと、飛んできたブレスをひょいとかわす。

「もうちょっとなんだから…。」

今度は地中から出ているヒレが横から突っ込んでくる。
それをシンはバックステップで避ける。





先頭に立って逃げるシンは、必然的にガレオスからの攻撃を多く受けていた。

そのせいか、シンの顔には疲労の色が浮かび、若干顔も青ざめて見える。



「あと少しでオアシスに着くって言うのに…。」

そう呟きながらシンは立ち止まり、膝に手をついて肩で荒く呼吸する。

そして、そのまま崩れるようにシンは倒れた。

「シン!」

そう叫びながら、リナはシンの状態を確認する。

呼吸はかなり荒いが、どうやらまだ意識があるようだ。だが、それでも早く安全なところへ移動させないとまずいことになるだろう。



「もう、二度と繰り返させないから…」

そんなシンの横にリナは立ち、そう呟やきながらハンマーを構える。

止まった2人の周りには、ガレオスの大群がうごめき、2人の隙を伺っていた。


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