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クラスに異世界の王子達がいるんだけど 作者:奏多

第二部 恋する筋肉のトゥイスベルク

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2-14

 ディナン公子は騎士を下がらせると、大変楽しそうな笑みを浮かべながら私に近づく。

「ようやく招待に応じてくれたな小幡(おばた)沙桐(さぎり)
「招待された覚えなんて……」

 言いかけたところで、遮るように牧野君が言った。

「僕が言った通りでしたね。事件が解決した直後じゃだめ。数日大人しくしてこちらの世界らしい日常に馴染んでから、日本らしい事件に巻き込めば動転して引っかかるって」
「全くだな牧野。お前には約束の褒美を与えよう。玻璃ネズミで良かったんだよな?」
「はいそうです。ありがとうございます」

 ディナン公子に牧野君が頭を下げる。
 ……てことは、この牧野君がディナン公子に策をささやいて、実行させたってこと? あの当たり屋みたいな男達も、ディナン公子が雇ったサクラだったと。む……むかつく。

 しかも玻璃ネズミっていう異世界の動物を、融通してもらうためらしい。写真で見たことがあるけれど、ガラスで出来たように美しいネズミだった。
 引っかかった自分が、悔しいったらない。
 ディナン公子は余裕の笑みで、私の前に立った。

「お前には聞きたいことが山ほどある。さぁ吐け! どんな秘密を握ってヴィラマイン様に取り入った!」

 やっぱりそこか。

「取り入ってないわ、普通にお友達になっただけですもの!」
「ふん、たかが異世界人が留学している王女達の多くと交流を持っているのが、おかしいのだ。どんな手を使った? それにヴィラマイン様が筋肉が好きなどというのは嘘だろう!」

「ヴィラマインは元から筋肉大好きな子なのよ! 彼女は本気で筋肉だらけの映像とか写真を沢山コレクションしているんだから。嘘だと思うなら見せてくれるよう頼んでみなさいよ、筋肉男の写真に埋もれさせてくれるわよきっと! ついでに恍惚とした表情で筋肉について語り続けるわよヴィラマインは」

 嘘じゃないと主張すると、ディナン公子がぐ……と言葉に詰まる。
 筋肉評価会で、うっとりしていたヴィラマインの姿を思い出したのだろう。

 そりゃ否定したいだろうけどね。可愛い王女様が筋肉を見て頬を染めてる姿なんて。
 でもそれひっくるめて好きになれなかったら、ヴィラマインと結婚したってどっちも幸せになれないと思うのだけど……。
 やがてディナン公子が「くそっ」と悪態をつく。

「こうなったら、お前をネタに結婚を承知させるしかあるまい! そして私は憧れの飛獣天国を――」
「……飛獣うるさくて邪魔だったけどなぁ」

 あのうるさい飛獣が欲しいとは……。元から飛獣目当てだとはわかっていたけれど、実物を見た後では同意しかねる。
 しかしディナン公子は、堂々と言い放つ。

「飛獣はとても貴重なのだぞ! 我が国ではあれを所有もしくは服従させているというだけで、国防に参加するのと引き換えに多大な年金が支払われるのだ」
「異世界じゃまぁ必要なんでしょうけどね」

 日本じゃ飛獣なんていらないし、飼えないし。

「ふん。しかしお前も強情な。その年頃の娘ならば、縛り上げられただけで泣いて許しを請うたものだが」

 しみじみと言うディナン公子に、私は「え?」と思う。

「そんなことを言うってことは、今までにも女の子を泣かせてきたのね! やだ最低!」

 異世界が身分制度がっちりだって知ってたし、貴族の特権が強いから平民が何か訴えるのは難しいのも知ってた。けどこんなに堂々と、誰かをいじめた経験を話す人と会ったのは初めてで、ものすごく嫌な気分になる。

「当たり前だろう。僕は公子だ。……ふん。思えばお前は別に貴族でも何でもないわけだ。異世界人と言っても秘密裏に連れ出してしまえば、協定に引っかかるものでもない。いつまで吠え続けられるものか、試してみるのも一興か」

 そう言ってディナン公子が手を差し出すと、先ほどの騎士がトンでもない物を差し出した。どう見たって鞭。
 ちょっ、動物扱い禁止! 拷問だめ絶対!

「やだ! あんたの顔見て暮らすのなんてどういう拷問!? そもそもあんたみたいなのは玩具にすぐ飽きるでしょうが! 異世界に放り出す気でしょ!」
「なぜ僕が捨てた後のことまで考えなければならない? 異世界人を躾けるというのも、なかなか面白そうだな。ヴィラマイン様に交渉に応じさせるためにも、先にお前を母国へ送ってしまおう。交渉するにも、あちらで話した方がヴィラマイン様も色々と理解してくれるだろう」

 そうしてディナン公子は、騎士に手配をするよう指示する。
 騎士はひょいと私を抱えた……大きな鮭みたいに。

「うそ……!」

 思わず体が震えそうになる。
 怯えているなんて知られたくない、弱いだなんて思われたくない。どうにかして蹴ってやりたかったけれど、縄で巻かれて逃げられないのに、攻撃をしたら酷いことをされそうだ。

「ほう、お前は怯えた顔をしている方がまだ見れるな」

 ディナン公子が騎士に抱えられた私に顔を近づける。

「大人しくしていれば、珍獣として大事にしてやってもいいぞ?」

 笑いながらディナン公子が顔に触れてくる。私が怯えているから、いじめたいだけなんだろう。
 噛みつきたいけど、逃げられない状態で抵抗したら、後で酷い目にあわされそうだ。痛いのも怖いのも御免こうむりたい。
 せめてもの抵抗に顔を横に背けたら、耳に触れられて「ひゃっ!」と声を上げてしまう。
 でも手に持っている鞭が怖くて、動けない。

 ディナン公子が笑い声を上げた。
 しかし次の瞬間、私は不可抗力でディナン公子に頭突きしながら、ふっ飛ばされた。
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