契りの夜 六
小吉の必死の看病でりんは一命を取り留めた。りんを小吉は優しく介抱した。
もう片手が動かぬ身体では復讐は意味がない。刺客のりんは死んだのだ。小吉自身も慶次郎の仕置きの沙汰を待っていた。
許されるわけがない。
しかし慶次郎はそんなことを忘れたように上杉家の家老、直江兼続や安田能元の京都屋敷に出入りし、茶会、歌会にうつつを抜かしていた。そうと思うと馬場に行って松風に乗って槍を振り回し、狩り場に行って矢で兎や雉を撃つ。納屋では干し肉がふんだんに作られ、行商に売るほどだ。
そうして何日も日が過ぎていた。いつもと変わりなく小吉は慶次郎の世話をする。そしてりんの看病に飛んで自分の部屋に行く。
慶次郎と小吉は衆道であったのではない。お互いに孤独の心を許しあい、共に生死を分け合う『絆』で結ばれていた。慶次郎は小吉のことを終生の友と考えていた。だから例え、小吉に刃を向けられようと、怒ることはない。そこで死ぬのならそれでよい。
そして小吉のりんへの想いを理解していた。小吉が最後に言ったあの世でも臣従を誓った言葉。だが、このままでは二人とも殺される。それよりは二人とも生きるに如くはない。だから慶次郎は小吉を殴り飛ばした。
時が流れ、りんは右手は動かぬものの、体を起こすことが出来るようになった。だが、自分に手を触れようとしない小吉が不思議だった。
俺に惚れたんじゃなかったのか。
「小吉さん・・・小吉さんと前田様は契りあっているのか・・・?」
「な・・・なんじゃ?やぶからぼうに」
りんは小吉の目をじっと見ている。
「はは・・・儂と前田様がか?・・・そうじゃな・・・儂は前田様の押しかけ女房のようなものじゃ」
りんは小首を傾げた。そんなら俺はなんじゃ?浮気をしたのか?
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