りんと小吉の物語 一 契りの夜 〜「前田慶次郎異聞」より(5/11)PDFで表示縦書き表示RDF


りんと小吉の物語 一 契りの夜 〜「前田慶次郎異聞」より
作:泊瀬光延



五 死との闘い


 ・・・どのくらい気を失っていたのだろう。

 夢うつつに死んだ人々が去来した。愛した留蔵が笑い、哀しげな顔で去っていく。

 留あにい!
 行かないで!
 俺を一人にしないで!

 俺は地獄に堕ちる。でもあにいとなら耐えられる!
 ・・・地獄はそれも許してくれないのか・・・

 目の焦点があうと誰のでもない笑い顔があった。でも懐かしい・・・小吉の笑い顔はとぼけて頼りないような・・・普段おっかない顔をしてるのに・・・留あにいもそんなだった・・・
 激痛が戻った。死んでいた方が楽だ!これが小吉の俺への罰か!

「あうっ!」
「動くな!りん!動くと傷が開いて死ぬぞ!」
「・・・小吉さん・・・俺は小吉さんを裏切った・・・殺して下さい・・・こんなお仕置きなんて・・・酷い」
「りん!生きるんじゃ!それが留蔵の望みじゃ・・・」

 何を言っているのか?・・・留あにいが俺が生きることを望んだ・・・?

「儂はどうなる!お前のために前田様を裏切って、儂はどうする!儂と暮らしてくれるんじゃなかったのか!」

 そうか・・・そう・・・約束だよね。でも小吉さんも慶次に許して貰えるのかい・・・?
「あれは嘘か!」

 いいや・・・嘘じゃなかった・・・俺が掟に殺されるまで一緒にいてやろうと思ってたんだ・・・うまく慶次を仕留められれば。りんの目から涙が流れた。
 もう全てはご破算だろ・・・

「小吉さん・・・ご免・・・」
 りんはまた気を失った。












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