もしも、さいごの人ならば
私はいつもの様に朝は鳥の声で目を覚ます。
そして朝ごはんを食べて、着替えて、家を出る。
これは私の普通の日常です。
「おはよう、ヒメちゃん」
「おはようございます」
家を出て、どことも決めずに歩き始める。
そんな平和な日常。
いつものように獣人の皆さんに挨拶される日々。
「ヒメ、おはよう。今日は潜らない?」
「この前、潜ったばかりじゃないですか」
「まあ、そうだけどさ~」
「ふふっ、また今度お願いします」
「はいはい~。あ、今日は波高めだから、海沿い歩くときは気をつけなよ」
「ありがとうございます」
海の近くを歩けば、こうして魚人の皆さんが声をかけてくれる。
人間の私にはエラや、水の中で呼吸する方法がないので、ボンベなどの道具が必要になりますね。
ですが、海の世界もまた神秘的で綺麗なものですね。
「よいしょ……っと」
「うん? おはよう」
「おはようございます。今日のお空はどうですか?」
「今日は雲がまばらでちょうどいいよ。晴れっぱなしなんじゃないかな」
町の中にある木を登った先の、ログハウスには鳥人のお兄さんが新聞を読んでいます。
「空飛ぶかい?」
「いえ、お天気とご挨拶にきただけですので」
「……そっか。まあ、飛びたくなったらいいな。連れてってやる」
「はい」
木から降りて、今度はお墓の近くを通りかかりました。
『おはよ~、ヒメ』
「おはようございます」
そこには幽霊さんたちがふよふよと宙を浮いたり、地面にめり込むように寝ていたりします。
『昨日もお花ありがとうね』
「いえいえ」
『また昔話でも聞きたくなったらきてよ』
「ぜひ、またきますね」
幽霊さんたちは、昔の話を知っています。悲しくもその昔に死んでしまった方々なのですから。
「ヒーメ!」
うちの近くまで戻ってくると、後ろからそんな子が聞こえる。
そちらを振り向くと、猫耳の友達が抱きついてきた。
「わっ! キャカちゃん。どうしたんですか」
「こんなところでなにしてるのかなって」
「学校もお休みなのでちょっとお散歩を」
「じゃあ暇?」
「まあ、そうですね」
「それじゃあ、ちょっと来てよ。面白いもの狼人の人たちが作ったっていってたからさ」
そういって、私の手を引いて、キャカちゃんは走り出します。
「ちょっと、そんなに早く走れないです」
「あ、ごめんごめん。つい、気持ちがはやって」
獣人のみなさんの身体能力にはどうしても追いつけません。
「まあ、時間はあるしゆっくりいこっか」
「はい」
次は手を繋いでゆっくり歩いて、狼人の皆さんがいる場所へと向かいます。
これが私の日常。
これが私の世界。
――もしも、自分が地球最後の人間だったらどうしますか?