最初のプロット作成段階から予定に入っていた新キャラ登場です。
第18話:卒業、そして始まり
「翔君!」
「あ、菜摘さん、卒業おめでとうございます!」
遂に菜摘さんの卒業式、胸に着けた花飾りが卒業生の証。
「ありがとう」
「お別れですね」
「ふぐぅ、えぐぅ、ひぐぅ」
「…っ!?」
前触れも無くいきなり何か言いながら泣き出した。っていうか何言ってるか分んないけど。
ひとしきり泣いた後、涙を袖でゴシゴシ拭って、泣き笑いの表情。
「あのね、その第2ボタン欲しいの!」
「え? このブレザーのボタンでいいんですか?」
「うん!」
ボタンを外して菜摘さんに渡すと、嬉しそうに笑って、また頬を涙が伝った。
「大事にするね」
遠くから菜摘さんを呼ぶ声が聞こえる。
「誰か呼んでますよ」
「あ、孝子たちだ、また後でね」
「はい」
友達のほうに小走りに転びそうになりながら走っていく菜摘さん。
そこ出っ張りとか何も無いから!
っつかコケなくて良かった、せっかく綺麗な制服が台無しになるもんね。
「翔君、私にもボタン頂戴」
振り向くと園田先生だった・・・。
「先生、卒業生じゃないじゃん!」
「卒業生を見送る教師よ、担任じゃないけどね」
何故か無い胸…いや結構ある胸を反らす。
「翔君がギラギラした獣の目で私を見てるわ」
と両手で自分の身体を抱くような仕草をする。
「見てないから!」
ってか胸は見たけど…。
…
「じゃーん!」
と言って、菜摘さんは両手でボタンを掲げる。
「何それ?」
「翔君からもらったボタンです!」
そんな大層なものではないでしょうに。
「菜摘さんって結構古風なんだ」
「えへへ」
「ずるい! おにいちゃん、わたしにも頂戴!」
「欄ちゃん…これはね、卒業生の特権なんだよ?」
菜摘さんは欄ちゃんに諭すように説明する。
「むぅ」
拗ねた…、まぁ欄ちゃんにもその内、分るだろう。
「じゃあ、乾杯しましょう!」
それぞれがジュースやお酒の入ったグラスや持つ。
もちろんお酒は京子さんと園田先生…って何で先生居んねん!?
「ごそ…ごちょー…」
「…?」
「ごしょーばんに預かろうと思って」
「はぁ…まあいいや」
何故か皆がこっちを見ている。
「な、なんですか?」
「乾杯の音頭とりなさいよ」
葉子さんの命令は絶対です。 逆らうと大変な目に合います。
「えー…では…菜摘さんご卒業おめでとうございます! 乾杯!」
「「かんぱーい!」」
皆おめでとうを言いながら、菜摘さんのグラスに自分のグラスを付けていく。
「翔君、はい」
「あ、はい、おめでとうございます」
チンっとグラスが鳴る。
「翔君、あのね、今はね、これからが楽しみなの」
「え?」
「大学に行ったら、また新しい出会いもあるし、翔君よりカッコイイ人が現れるかもしれないし」
「そんな人いっぱいいると思いますよ?」
「翔は相変わらず分ってないな」
横から入って来たのは、明らかにジュースじゃない飲み物を持ったあきらさんだった。
「あきらさんそれ…」
「なんか変な味のするジュースだ」
ジュースじゃないけど、まいっか、良くないけど、たいして入ってないし。
「何が分ってないんですか?」
「翔…お、まえは、格好良いと、お、もう…ぞ」
って酔ってんのかい!
フラフラしてるところを京子さんに、どこかに連れて行かれた。
「だからね、翔君も自分の気持ちを大事にしてね」
菜摘さんはすっきりと晴れ渡ったような笑顔を見せた。
その笑顔を見たとき、肩が軽くなったような気がした。
それから、夜遅くまで、みんなでワイワイ過ごした。
途中、酔ったあきらさんが突然服を脱ぎ出して、みんなで止めたけど…。
…
「うー、葉子? きのうの記憶がないのだが? 頭も痛いし」
いかにも具合が悪そうに食堂にやってきた、あきらさん。
「あんた何も覚えてないの?」
「…うん」
「あんたきのう洋服全部脱いだのよ?」
「…えっ!?」
うわぁ、この人、何サラッと嘘言ってるんだろ。
「…えっと、そこには、その、翔も居たのか…?」
「居たわよ、隅から隅までじっくり見てたわよ?」
「…なにっ!?」
「ちょ…!? なに言って…」
半眼で睨むのやめてください!
「こうなったからには責任を取ってもらわないと…」
責任ってなんだ!?
「嘘よ、当然脱ぐ前に止めたわよ」
「なんだ、そうか…ほっとしたような、残念なような?」
疑問符いらないから! そこはほっとしていてください!
「そ、それより、菜摘さんは?」
葉子さんに聞いてみる。
「午後に新しいアパートに引っ越すって言ってたわよ?」
「そうなんですか? 手伝ったほうがいいかな?」
「業者に頼んだらしいから、別にいいんじゃない?」
「そうですか…」
「手伝うフリして下着とか色々見ようと思ったんじゃないの?」
「違うから!」
…
「キャア」
家に居ても暇なので、駅前まで行こうと片倉家の玄関を開けた時、
誰かがドアの前に居たらしい。
見ると尻餅をついた可愛い感じの女の子が居た…っていうかパンツ見えてますよ!
「あ、ごめん!」
急いで腕を掴んでおこしてあげる。
「ありがとうございます」
「いやこちらこそごめんね、誰かいるなんて思って無かったから」
「…」
俺の顔をじっと見つめて固まってる。
「あの…?」
「かっこいい…」
「あ、あの、もしもし?」
「ひゃわ! ごごごめんなさい!」
ひゃわって…。
「それで、この家に用事?」
「はい、大家さん居ますか?」
「大家さんっていうか家主ね」
「あ、はい」
「とりあえず入ろうか」
「はい」
しかし…可愛い娘だな。
「ここに居てくれる? 今呼んで来るから」
「はい、ありがとうございます」
「あれ? 翔君出掛けたんじゃなかったの?」
「そうなんだけど、この娘が京子さんに用があるっていうからさ」
「ふーん…」
葉子さんは値踏みするように、その娘を観察している。
うん、そんなにじろじろ見たら失礼だから!
「京子さーん」
京子さんたちの部屋の前で声をかける。そういえば京子さん達の部屋入ったことないな。
「はぁい?」
少しすると京子さんが部屋から出てきた。
「どうしたの? 私と良いことしたいの?」
「違うから!」
「あら、残念、それで何か用?」
全然残念がってないじゃん!
「お客さんですよ」
「あら、どなたかしら?」
「女の子ですよ、食堂に待たせてます」
京子さんと食堂に行くと、葉子さん、あきらさん、蘭ちゃんに
じろじろ観察されているさっきの女の子がいた。
「あ! 大家さん」
やっと助けが来たと思ったのか、ほっとした表情を見せる。
「あら、楓ちゃんじゃない、どうしたの? 来るのは明後日からじゃなかったかしら?」
「あ、はい、そうなんですけど、どんなところか見たくて」
「そう、ちょうどいいから紹介するわね、明後日からここで暮らす二宮楓ちゃんよ」
「そうなんだ」
「あら翔君嬉しそうね」
葉子さんがジト目で睨みながら、嫌味っぽく言う。
「そりゃ、女の子が増えりゃ嬉しいですよ」
「可愛い女の子が増えりゃだろ?」
火の油を注ぐな! って視線をあきらさんに送ったけど、そっぽ向かれた…。
「それって自分で自分を可愛いって認める発言よね」
「うぐっ! 確かにそうだ」
いらんこと言うから墓穴掘るんだよ。
なんて思ったら思いっきり睨まれました。心読むな!
「に、にの、二宮楓ともうす、申します、し、4月から川上高校です、
じゃにゃい、か、川上高校1年生です、よ、よろしくお願いします」
うん、緊張しすぎでだから! 途中変になってるし!
「よろしくね」「よろしくな」「おねえちゃんよろしくー」
三者三様に挨拶をする、最後は俺の番。
「楓ちゃんよろしく」
そっと手を差し出すと、何の躊躇もなく優しく握り返してきた。
「変態…」
「ちょ…あきらさん、違うから!」
さっきの仕返しか? っていうか完全に逆恨みだけどね!
「大家さん、皆さん、よろしくお願いします」
「それから私のことは大家さんじゃなくて、
京子さんか、京子さまか、お姉様って呼んでね」
何その3択…。
「はい! お姉様!」
何故、それをチョイスする!?
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