プロローグ・日常
更新が停滞気味にならないように
頑張ります^^;
よろしくお願いします。
――あぁ、朝だ。俺の目覚めを誘ったのは日の光を思わせる
愛らしいスズメの鳴き声でも、リズミカルな鳩の鳴き声でもない。
こんな朝早くからどこへ行くのか行方さえ怪しまれる、
ババァを乗せた赤い、荷台付のチャリの錆びたベルの音だ。
今日もまだ誰もいない通りで意味無く何度も高い音を響かせている。
――ったく、公害もいいとこだ。
そしてまた目元なんかはたいして気にしちゃいないのに、
妙に洗練された口元限定の口紅だけの化粧。
その派手な赤色、見てて疲れるんだよ。おばちゃん。
そうやって少し開けたカーテンからチャリで放浪するおばちゃんを見送ると、
ガキの頃から愛用している年季の入ったマイせんべい布団から上半身を起こし、
頭のてっぺんからつまさきまでをうんと伸ばしてやった。
そしてホームレスの如くぼろぼろの毛布と小さなシミが目立つ
白い掛け布団を払いのけ、四つん這いになると、赤ちゃんの
ハイハイの動きをとって台所へ向かった。
高校入学から数えて早二年。
親が不在がちなため家事全般をほぼマスターした俺は、
何を血迷ったのかたまに家政婦の求人チラシや自営料理教室の
看板をまじまじと眺めるまでに至ってしまった。
まだ青春真っ盛りの16歳、主夫になるのはまだ早いな。
俺はとことん自分の素晴らしさにおける優越感に浸ると、
一人暮らし向きなお買い得ミニ冷蔵庫を開けた。
今日も朝食は昨日の晩飯の残りと、
プロ級のフライ返しさばきで作り上げる卵焼きだな。
てゆーか俺の料理のレパートリー5種類なんだけどね。
玉子焼きと、肉じゃがと、味噌汁。
そして今日は順番的に玉子焼き。
うん、決定。
俺は早急にフライパンと油、卵を用意し、コップに牛乳を注ぎ、
箸、皿の準備をし、雑に布団をたたんで部屋の隅に置く。
それと同時進行で作り上げられる、光沢のある卵焼き。
味付けも完璧だ。
わずかに投げ入れられた砂糖と、卵がマッチした甘い匂い。
半熟に焼き上がった卵の表面がふつふつと音をたてて俺のヨダレを誘う。
毎朝俺を目覚めさせる至福の刻。あぁもー。サイコーです!
――俺は慣れた手つきでフライパンから皿へと卵焼きを移し替え、
早歩き(せいぜい2、3歩くらいの距離だが)でテーブルについた。
「いただきます!」
誰もいない部屋で俺は一人そう叫ぶと、わんこそば
早食い選手権のような勢いで卵焼きにがっついた。
チャンピオンさながらの新記録でキレイに抹消された卵焼き。
だがしかし、消したはいいがきっと俺の学校からの帰宅まで、
洗われることの無いであろう油っぽい食器達。
悪いなダ○ソーの百均皿。
今の俺にはお前にダイヤモンドの輝きを持たせるほどの
余裕が無いんだ。ていうか朝は、どうもめんどくせー。
苔が生えたままのダイヤモンドの原石は放置、
俺は急いで用意を始めた。ギリギリまで寝ていたい俺は、
30分で朝の支度を片付ける。
5分程度で迅速に洗顔と歯磨き、洗濯物干しを終わらせた俺は、
パジャマ代わりのジャージを脱いで、俺なりにカッコよく制服を着こなす。
とどめに少し緩めたネクタイを結び、3種の神器
(ドライヤー、ワックス、ブラシ)を使って髪の毛をセットする。
完璧に「俺」が出来上がった。今日のコンセプトは、
「スクールガイ・青春真っ盛り!だけどちょっぴりイタズラっ子☆」
だ。イカすネーミングセンスに自己満足。しかし俺を追い詰める
タイムリミット。出来れば一限目の直前、皆が騒いでる間に
さりげなく教室に入って準備するのが俺の理想だ。
授業中に皆さんから視線を浴びるのは俺的にあまりよろしくない。
30人から凝視されるのは恥ずかしいし。
「さてとぉ・・・・」
オッサンみたいな独り言を呟いた俺は、
MDウォークマンをブレザーの胸ポケットに突っ込んだ。
聴くのは、こだわりを感じる洋楽とか、インディーズの
若者バンドとか、そーいう類じゃない。
高校生なら誰でも知ってるような、
聞き覚えのあるJPOPばかり。無理して知らん奴の曲買って
失敗したら、1000円近く無駄になるからな。
一箇所出っ張った再生ボタンをポチッと押すと、
人気バンドのイントロが俺の耳だけに響く。
「・・・行って来まぁす」
扉を開けると、今日お初にお目にかかります、
早起きのお天道様。
俺は家を出ると、ドアを閉めて空を仰いだ。
「あぁー。だるっ」
今日もいつもと同じことをして、
同じように終わる。
そんな事考えてたらふいに出てきた独り言。
ちょっと恥ずかしくなったから、周り見てから
ダッシュで逃げた。
今日から俺の人生に、
大きな分岐点が訪れることも知らずに。
どうでしたか?
まだ主人公君の名前
出てないんですけどね。
ちゃんとありますよw 一応。