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杜坂東の事情 作者:おかつ
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最終話 前日談

あんなにバタバタと準備をしていた文化祭が、無事に終わった。
文化祭での劇『青ひげ』も難なく成功し、仮装コンテストでは、男装部門で紀和子が、女装部門で支援クラスの楓真が優勝した。男装部門に出場した紀和子は少し複雑な表情を浮かべていたが、それは仕方がないだろう。今まで男として生きてきたんだ。素直に喜んでいいものか悩んでいるのだろう。
文化祭の片づけを終えると、いつの間にか俺一人になっていた。
「……何だよあいつら。片づけ最後まで手伝ってくれればいいのによー」
そんな事を呟き、俺は自分の荷物をまとめて教室を出た。

「うっわ……ホントに誰もいねえ」
教室を出ると、廊下は真っ暗だった。もしかして先生もいないのか? ……いや、そんなはずはない。きっと誰かが俺がいないと思って電気を消したんだ。
そう思いながら、俺は万が一の為に常に持ち歩いている懐中電灯をつけて歩いた。
「えーっと、廊下の電気ー、廊下の電気はーっと……」
そう呟きながら歩いている、と。
「……ん?」
目の前に、灯りに照らされた足が見えた。
「何だよー、誰かいるなら言えよー」
そう言いながら、俺は懐中電灯をその相手に向けた。
――その子の肌は褐色で、前髪で片目が隠れていた。うちの女子制服を着ていたが……こんな子いたっけか?
「お前、何年生? 失礼を承知で聞くけどさ、お前この学校の生徒だったっけ?」
俺はそう聞くが、彼女はクスクスと笑うだけで何も答えない。
俺は首を傾げながら、「用がないなら俺帰るぞ」と言って、彼女の横をすり抜けようとした。が。
「……?」
彼女が、俺の手首を掴んだ。
「……何? お前ホント何なの? 何の用?」
俺が彼女の手を振りほどいてそう聞くと、彼女はクスクスと笑った後に言った。
「……ついてきて」
「ハ? ……ちょ、おい!」
俺の返答を待つ間もなく、彼女は急に歩きだした。しかも俺が行きたい方とは逆方向に。
『ついてきて』。……一体何を意味しているんだろうか? ついていって、何があるのだろうか?
だが、そう考えている間にも、彼女はさっさと行ってしまう。どうやら考える暇はなさそうだ。
「……あー、もう、待てって!」
俺はそう言って、彼女に素直についていった。


「ったく、何処まで行くんだよー!?」
恐らく大分歩いただろう。俺は彼女を追いながらそう叫んだ。
彼女は、相変わらずクスクス笑いながら歩いている。……が、ある教室の前で立ち止まった。
「ついたよ」
「ハァ? ここ? ……ここって」
俺はその教室の方を見て、驚きを隠せずにいた。
何故ならその教室は、確か何かの事件があって『開かずの教室』になっていたはずの場所だったのだ。
その『開かずの教室』の扉が、『開いている』のだ。
何だ? 何が起こっている? そう言えば、この『開かずの教室』の中に誰かが住み着いていると聞いた事があるような、ないような。
俺が恐る恐るその教室の中を覗き込む。と。
「!?」
突然背中を押され、俺は意図せずその教室の中に入ってしまった。
俺の背中を押したのは、彼女しかいない。
「ってえ、何す……。ヒッ!?」
俺は彼女に文句の一つも言ってやろうと顔をあげ、思わず悲鳴をあげてしまった。

――その教室の全てが、血塗れだったのだ。
黒板も、ロッカーも、机も椅子も。全て。

「何、だよ、これ……!」
「これが、『開かずの教室』の正体だよ、『佐藤光輝』君?」
「ハア!? 意味分かんねえし、何で俺の名前……!」
俺はそう聞きながら彼女の方を振り向く。
彼女は、クスクスと笑いながら俺の方に近づいてきた。思わず後ずさりをするが、当然、教室には壁がある。壁の所まで行くと、俺はもう逃げられない事を察した。
彼女は尚も近づいてくる。クスクスと、笑いながら。そうして俺に追いつくと、俺に顔を近づけて、言った。
「君はね、選ばれたんだよ。『坂杜様』の他にこの学校を守っている守り神の贄にね」
こいつは何を言っているんだ。意味が分からない。『坂杜様』じゃない『守り神』? 『贄』? 『選ばれた』? ……俺が?
ああくそ、こんな時に何故か頭がボーっとしてきて働かない。体もいつからか動かなくなっていた。クソ、動け俺の体。働け俺の頭。なんでだ。なんで。
徐々に薄れていく意識の中、彼女がクスクスと笑い、最後に言葉が聞こえてきた。

『さあ、彼の為の贄となり給え』

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(松伏視点)

「新見先生! 佐藤が行方不明って本当ですか!?」
朝のHRで佐藤が行方不明になっている事を聞き、私と丑満時は職員室に聞きに行った。
「ああ。今朝佐藤の母親から連絡があった。『息子がまだ帰ってきていない』と」
「そんな……佐藤君が……。 何かの間違いだよね? ね? そうだよね霊界堂先生?」
「それがほんまの事なんよ。うちも新見先生も手がかりを探しよるんやけど、全然なんよ」
丑満時の問いに霊界堂先生がそう答えると、丑満時は「そんな……そんな……」と何度も繰り返した。
正直、私も佐藤が親に黙って行方をくらますような奴だとは思えない。……まさか、何か事件に巻き込まれたのか?
「とにかく、俺も霊界堂先生も全力で探してるから、お前等も何か分かったら教えてくれ」
「分かりました」
そういう会話をし、私と丑満時が職員室から出ると。
「? 『坂杜様』?」
そこには、珍しく驚愕した顔の『坂杜様』が立っていた。
「……佐藤が、行方不明、だと?」
「ええ。それで私達の方でも探してみる心算ですが……。まさか、何かご存じなのですか?」
私がそう聞くと、『坂杜様』が声を震わせながら言った。
「……先日、佐藤を見かけた時に、何処か違和感を感じた。それだけじゃない。この学校自体に違和感を感じた。ずっと、気配を感じるのだ」
「気配? 何の?」
「其処までは私にも分からん。だが……、嫌な予感がする。とてつもなく、嫌な予感が」
『坂杜様』は、何かを恐れている様子でそう言った。
嫌な予感。……まさか、佐藤は既に……。否、駄目だ。そんな事を考えてはいけない。そんな事、有り得ない。……有り得ない。
「とにかく探そう! それしか私達に残された道はないよ!」
丑満時のその言葉に、私は「……そうだな」と返すしかなかった。

――佐藤が、無事である事を願いながら。

【最終話 前編へ続く】
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