鳥矢町の一角に、1軒の家があった。
その家の中に、5人の男女がいる。
「うまくいったな。」
「あぁ、こんなにもうまくいくとは思わなかったぞ。」
「で、どうするのボス?この子。」
「フフフ・・・コイツは人質だ。オレ達が大金を手にするためのな。」
そう言うと、男は床に転がっている子供を見つめた。
「ん〜、ん〜・・・」
子供はジタバタともがいている。
子供の名前は、江戸川コナン。
そう・・・
コナンは、イタリアの強盗団に誘拐されてしまったのだ・・・
それは、ある日の朝の事である。
コナンはいつものように、帝丹小学校に登校する途中だった。
「ハァ・・・昨日徹夜で小説読んでたから、すっかり遅くなっちまったよ・・・」
コナンは軽快に走っていた。
「早くしねぇと、遅刻するな・・・」
そう思ったコナンは、速度を上げる。
その時、路地から飛び出して来た女にぶつかってしまった。
ドカッ!
「うわっ!!」
「キャッ!!」
コナンは地面に倒れた。
「イタタ・・・すいません!急いでいたので・・・」
「いえ、こちらこそ前をよく見ていなかったので・・・ん?」
女は、コナンの事をジッと見つめた。
「・・・」
「な、何ですか?」
コナンが聞く。
女は口を開いた。
「その顔、どこかで見たと思ったら・・・少年探偵団の江戸川コナン君ね?」
「え?」
「イタリアの強盗団の事件、君が解決したんでしょ?知ってるわよ。私、その事件の容疑者の関係者だもの・・・」
「!!」
女の声に、コナンはビクッとなった。
「(イタリア強盗団の事件の関係者!?ま、まさかこの女、アイツらの仲間なのか?)」
コナンはその場を離れようとしたが、女に右手をつかまれた。
ガッ!
「え?」
「逃がさないわよ、ボウヤ。」
そう言うと、女はコナンを羽交い締めにした。
「な、何す・・・うっ!!」
コナンが叫ぼうとしたその時、口をハンカチで覆われた。
「う、うぐぅ〜!!」
コナンはジタバタともがいたが、やがて目がトロンとなっていった。
「うぅ・・・」
女が手を放すと、コナンは地面に倒れ込んだ。
ドサッ・・・
「ウフフ・・・」
女はコナンを抱え上げると、少し先に止めてあった車の前まで歩いて行った。
「標的を捕まえたわ。開けて。」
女が言うと、車の後部座席が開けられた。
中にいたのは、三角メガネをした男。
そう、イタリアの強盗団の1人だった。
女はコナンを抱えたまま、車の後部座席に乗り込む。
車のそのまま、何事もなかったかのように走り出した。
帝丹小学校
帝丹小学校では、小林先生が出席を取り、授業が始まろうとしていた。
「授業を始める前に、皆さんにお知らせがあります。コナン君は今日はカゼでお休みです。先ほど毛利小五郎さんから電話がありました。」
澄子のお知らせが終わり、授業は始まった。
「コナン君、今日はカゼで休みなんだ。」
「カゼなら、しょうがないよな。」
歩美と元太が口々に言う。
そんな中、哀が口を開いた。
「それはおかしいわね。」
「え?どういう意味ですか、灰原さん?」
光彦が哀に聞く。
「私、朝探偵バッジで江戸川君と話したけど、彼、『遅れそうだけど必ず学校には行くよ』って言ってたわよ。」
「え!」
「それって・・・」
「どういう事ですか・・・?」
「とにかく、1時間目が終わったら小林先生連れて毛利探偵事務所に行きましょう。」
その頃、コナンは薄暗い部屋の中で目を覚まそうとしていた。
「ん・・・ここはどこだ?」
コナンは辺りを見回そうとしたが、それはムリだった。
なぜなら、彼の視界は何かで塞がっていたからだ。
「クソッ、目が何かで塞がれてる。これじゃ何も見えない・・・」
その時、どこからか声が聞こえて来た。
「おっと、目が覚めてたようですぜ、ボス。」
「そのようだな。」
「!!」
コナンが振り向くと、彼の目を塞いでいた物が取られた。
パサッ!
「・・・」
コナンの目に映っていたのは、イタリアの強盗団の3人と2人の男女だった。
そこでようやく、コナンは自分の手足が縄で縛られている事に気づいた。
「うっ、ぐっ・・・」
コナンは体を動かしたが、一向に縄は解けない。
「よぅ、ボウズ。ワシの子分共がお世話になったらしいな。」
「アンタ、誰だ?」
「私か?私はディノ・カパネ。イタリアの強盗団のボスだ。」
「ボクを誘拐してどうする気?」
コナンはカパネをにらみつけた。
「君を誘拐したのは、金を手に入れるためだ。母国に戻る資金を稼ぐためのな。」
「逃亡資金ってワケ?」
「理解が早いな、少年。その通りだよ。」
カパネは不敵に笑う。
「ねぇ。」
コナンはカパネに話しかけた。
「何だ、少年?」
「お願い、ボクを解放して!」
「何?」
「こんな事してもムダだよ!ボクの仲間は優秀なんだ!すぐにボクを見つけ、オマエ達を捕まえてくれる!今からでも遅くない!こんな行為はもう止めて!!」
「うるさい少年だな。おい、デルタ。その子の口を塞げ。」
「はい。」
デルタと呼ばれた三角メガネの男はガムテープをビッと切ると、コナンの背後に回った。
「!」
「少し黙ってろ。」
「や、止めて!ムググッ・・・」
コナンは口にガムテープを貼られてしまった。
「ん〜、ん〜!!」
コナンは叫んだ。
「これで良し。フィー、その子から携帯を奪え。」
フィーと呼ばれた丸メガネの男は、コナンのランドセルから携帯電話を取り出した。
「んっ、んんっ!!」
コナンは首を横に振って必死に叫んだが、ガムテープのせいで声にならない。
「フィー、電話を貸せ。」
カパネはフィーから携帯を受け取ると、毛利探偵事務所の番号を調べ始めた。
コナンはカパネが電話をかけようとするのをただ見ている事しかできなかった。
同じ頃・・・
1時間目の授業終了後、哀達は小林先生を連れて毛利探偵事務所にやって来ていた。
ピンポーン・・・
哀が呼び鈴を鳴らすと、小五郎が降りて来た。
「お、哀君・・・」
「おじさん、ちょっと聞きたい事があるんだけど・・・」
「わかっている。コナンの事だろう?」
「え!?そ、それじゃ、江戸川君は・・・」
「あぁ・・・何者かに誘拐されてしまったらしい。」
「ええ!!そんな・・・」
歩美達の顔が曇る。
「でも、どうしてわかったの?」
「実は、コナンが出てすぐにオレがお弁当箱を渡し忘れてたのを思い出してな。届けようと思って事務所を出たんだが、しばらく走った後コナンのクツが片方落ちてるのを見つけてな。これは何かあると思って、事務所に帰った後学校に休みの電話をかけたんだ。その30分後に案の定かかってきたんだよ、脅迫電話がな。」
「電話の主は何て?」
「『江戸川コナンを誘拐した。無事に返して欲しければムダな行動は取らない事だ。1時間後にまたかける』と言っていた。」
「そう・・・」
「コナン君・・・」
「そろそろかかってくる頃だぞ。」
「おじさん、私に会話させてくれない?」
「わかった、できるだけ会話を引き延ばすんだぞ。」
小五郎が言い終わると、電話がかかってきた。
プルル、プルル・・・
哀は電話を取った。
「はい、もしもし。」
「何だ、ガキじゃねぇか。」
「ガキで悪かったわね。あなた達が誘拐犯という名の不届き者かしら?」
「随分強気な小娘だな。その通りだ。」
「あなた達の要求は何?」
「オレ達の要求は、身代金だ。人質のガキを助けたければ、2億円用意しろ。」
「に、2億円?」
歩美達の顔に緊張が走った。
「・・・わかったわ。お金は何とか用意させる。その代わり、江戸川君の声を聞かせて。」
「オマエ、このガキの彼女か何かか?」
「なっ!?ま、まぁ、似たようなものよ。」
哀は少し赤面しながら言った。
「良いだろう、声を聞かせてやる。」
カパネはコナンを引き寄せると、口のガムテープをはがし電話を耳元に当てた。
「は、灰原・・・?」
「江戸川君!無事なのね?」
「ああ、何とか大丈夫だよ・・・手足を縛られてるけど・・・」
「あなた今、どこにいるの?」
「どこかの家の1室・・・連れて来られた時に目隠しされてたみたいで、どこの町かはわからないんだ・・・」
「どうやら小娘とこのガキは親しいようだな。よし小娘、オマエが身代金を持って来い。」
「私が?」
「そうだ。」
「上等よ。持って行ってあげようじゃない。」
哀の返事に、小五郎達は驚いた。
「ダ、ダメだよ灰原!オマエを危険な目に遭わせるワケにはいかない!頼むから来ないで!!」
「うるさいヤツだな。オミクロン!」
オミクロンという四角メガネの大男が近づいて来て、コナンを抱え込み口を手で塞いだ。
「う〜っ、う〜っ!!」
「え、江戸川君!!あなた達、彼に何を!?」
「安心しろ、部下が少し口を手で塞いだだけだ。」
「言っておくけど、彼に手を出したら許さないわよ?」
「フン、安心しろ。手荒な事はしない。場所については後ほどかける電話で言おう。いいか、警察には知らせるなよ。」
カパネはそう言うと、電話を切った。
「オミクロン、ソイツの口を塞いで地下室に運んでおけ。」
「わかりました。」
オミクロンはコナンの口にガムテープを貼ると、彼を背中に抱えた。
「んん〜・・・」
コナンは力なくもがきながら、運ばれて行った。
「で、これからどうする?おじさん。」
「相手は警察に電話するなと言っていたが・・・」
「毛利さん、警察に知らせるのは止めましょう。コナン君の安全を最優先に考えれば・・・」
「そうだな。哀君、気をつけるんだぞ。」
「はい。わかってます。」
哀は強気で言った。
「(工藤君、私が必ず助け出すから安心して待っててね・・・)」
哀はコナン救出を強く決意した。
その頃、コナンは1軒家の地下室に監禁されていた。
コナンは柱に縛りつけられている。
「んっ、んんっ・・・」
コナンは縄を解こうと懸命にもがくが、所詮子供の力ではビクともしない。
「うぅ・・・」
コナンは俯いた。
「んんぅ・・・(情けないよ・・・1度捕まえたイタリアの強盗団に、こんなにも簡単に拉致されちゃうなんて・・・助けて欲しいけど、灰原には来て欲しくない・・・アイツには、迷惑をかけたくないから・・・)」
その時、ドアが開いてカパネ達がやって来た。
ガチャ!
コツコツ・・・
「ボウヤ、おとなしくしているか?」
コナンは静かに頷いた。
「あの女の子は身代金を持って来てくれるようだが、果たして持って来た時に君はここにいるのかな?」
「んっ、んんっ!?(ど、どういう事!?)」
「実はね、私達が母国に帰る時には君も連れ帰ろうと思っている。なぜだと思うかね?」
「ボスはな、今ある事業に手を出しているのだ。」
「その事業とは・・・人身売買だ。」
「んんっ!?(何だって!?)」
「オレ達イタリアの強盗団がかつて奪ったメイプルリーフ金貨15000枚は、オマエ達少年探偵団にやられたせいで全部失った。」
「あの後オレ達は表向きは模範囚として振る舞いながら、オマエ達に復讐する機会を伺っていたんだよ。」
「アタシはこの人達が逮捕された当時、カパネの愛人だった。私もボウヤには恨みを抱いていたのよ。」
「私は半年前に保釈された後、復讐のために資金を稼いでいた。その一環として、人身売買を始めたのだよ。そして、保釈されたこの3人とイタリアで合流し計画を念入りに練った。もう資金も充分集まった。私達は先日来日してから少し君の事を調べた。君がどこに住んでいるのかも、どの小学校に通っているのかも。そうして、この計画は実行されたのだ。ここまで聞かされれば、自分がどうなるかもわかるだろう?」
「(人身売買の・・・商品・・・)」
「気づいたようだな。その通りだ。」
「オマエは人身売買の商品になるのだ。オレ達のためにな。」
「(や、やっぱり・・・)」
コナンはガタガタと震えた。
「そう怖がるなよ。不自由はさせないからさ。」
「まぁ、明後日になるまでに覚悟を決めておく事ね。」
「ハッハッハッ・・・」
カパネ達は笑いながら、地下室から出て行った。
「(イ、イヤだ・・・イヤだよ、売られちゃうなんて・・・)」
コナンの脳裏に、哀の顔が浮かんだ。
「(灰原、助けて・・・助けてっ!!)」
コナンは必死にもがいていた。
「(く、工藤君・・・?)」
帝丹小学校で3時間目の授業を受けていた哀は、妙な違和感を感じていた。
「(さっき、工藤君の声が聞こえた気がする・・・何かしら、この感じ・・・まるで、工藤君に何かの危機が迫っているような・・・)」
「どうしたの、哀ちゃん?」
哀の隣の席にいた歩美が、哀の方を向き小声で言った。
「吉田さん、学校が終わったら円谷君と小嶋君も連れて博士の家に来て!何だかイヤな予感がするの・・・」
「うん、わかった・・・」
歩美は、短く返事した。
学校が終わった後、歩美達は哀について阿笠邸にやって来ていた。
「哀ちゃん、何について調べるの?」
「あなた達、前に江戸川君と一緒に犯罪グループを捕まえた事あるんでしょ?」
「ええ。」
「それ、何て名前のグループだった?」
「えっと、確かイタリアの強盗団っていう悪い3人組だったよ。」
「イタリアの強盗団ね・・・検索をかけてみましょうか。」
哀はノートパソコンを開くと、キーワードを打ち込み検索を始めた。
すると、何件か検索結果が出た。
哀はその1つに目がいく。
「ディノ・カパネ?この人誰なのかしら?」
「そういえば、あの丸メガネの日本人が言ってたな。自分達のボスだってよ。」
「その人、あなた達とは会ったの?」
「ううん、奪った金貨持ったまま日本に逃げて来て、あの3人に捕まって警察に突き出されたってあの人が言ってたよ?」
「え・・・」
歩美の言葉に、哀は少し顔をしかめた。
「少しこれに接続してみましょう。」
哀は項目をクリックした。
「え・・・!?」
表示された内容に、哀は驚愕した。
「どうしたんです、灰原さん?」
「3人共、見て!」
歩美達はパソコンの側に寄った。
そこには、カパネの事について少しニュースがあった。
『イタリアで最近、人身売買組織が頻繁に活動を行っている。イタリア警察はこの組織に、イタリアの強盗団のボスであるディノ・カパネが関与している可能性があると踏んで捜査しているが、まだハッキリとした証拠はつかめていない・・・』
哀はその記事を読み、顔が真っ青になった。
「円谷君、もしイタリアの強盗団の面々があなた達に恨みを持っているとしたら、何をしようとするか考えられる?」
「え?そりゃ、ボク達を精神的に追い詰めようとするんじゃないでしょうか・・・ハッ!という事は・・・」
「そう、もし彼らが脱獄したか保釈されるかしているとしたら、真っ先に狙うのはあなた達の誰かだと思わない?」
「じゃあ、コナン君を誘拐したのは・・・」
「ええ、おそらくその連中でしょうね。」
「あの3人がコナン君を・・・」
「毛利のオッサンに知らせるか?」
「待って!ちょうど電話がかかってきたみたいよ。」
哀は携帯電話に出た。
「はい、もしもし?」
「さっきのお嬢ちゃんか。私だ、カパネだ。」
「1つ聞いて良いかしら?あなた達、もしかしてイタリアの強盗団?」
哀が聞くと、カパネは不敵に笑いながら言った。
「よくわかったな、お嬢ちゃん。その通りだよ。」
「やっぱりそうだったのね。今度は何の用?」
「フフフ、いよいよ金を持って行く場所を言ってやろう。明後日の午後4時、杯戸港の6番倉庫に身代金を持って来い。何度も言うようだが、警察には知らせるな。」
「安心して、絶対に知らせないわ。それより、江戸川君は無事なの?」
「ああ、今はグッスリと眠っている。いいか、くれぐれも妙なマネはするなよ。」
カパネはそう言うと、電話を切った。
「吉田さん、おじさんを呼んで来て!」
歩美は、小五郎を呼びに行った。
ほどなく、歩美が小五郎を連れて戻って来た。
「犯人から電話があったのか、哀君!」
「はい、やはり江戸川君を誘拐したのはイタリアの強盗団でした。」
「そうだったか・・・」
小五郎は顔をしかめた。
「犯人の正体がわかった以上、早くコナンを救出しなければ・・・」
「コナン君・・・」
歩美は泣きそうな顔をしていた。
そんな歩美に、哀は優しくこう言った。
「大丈夫よ、吉田さん。彼は必ず私が助け出すわ。」
哀の言葉に、歩美は笑顔を取り戻した。
「哀君、オレから2つ頼みがある。1つ目。必ずコナンを救い出してくれ。」
「わかりました。」
「2つ目。絶対に・・・ムチャはしないでくれ。」
「はい、わかっています。」
哀は強く返事をした。
「(工藤君、待っていて・・・)」
哀はコナンの追跡メガネを手に取り、スイッチを押した。
ピッ!
「(今工藤君は、この場所にいるようね。)」
哀は無言でスイッチを切った。
その頃、コナンは・・・
「ん・・・」
コナンはうっすらと目を開けた。
「ん・・・(まだ地下室の中か・・・)」
コナンが辺りを見回していると、カパネ達が地下室に入って来た。
ガチャ!
「ボウヤ、おとなしくしてたか?」
カパネがコナンに尋ねる。
コナンは黙って首を縦に振った。
「デルタ、シグマ、オミクロン、フィー。オマエ達は私が指定した倉庫に行け。相手がガキだからといって油断するなよ。」
「わかりました。」
デルタ達は地下室を出て行った。
「ん、んんっ!!」
コナンはもがいている。
何か言いたそうだ。
「何だ、ボウヤ?」
カパネはコナンに近づくと、口に貼られているガムテープをはがした。
ピリリ!
「おじさん、あの人達に杯戸港に行けって言ったけど、何でおじさんだけ残ったの?」
コナンはカパネに聞いた。
「フフフ、その事か。実はな、デルタ達はオトリなのだよ。」
「オ、オトリ!?」
「その通りだ。ヤツらが杯戸港であの子を引きつけている間に、君を別の場所に連れて行くのさ。」
「ええ!!」
コナンは驚いた。
「米花港から君を船に乗せ、イタリアへと連れ帰る。そして、後ほどヤツらと合流するのさ。」
「そんな・・・」
「悪いな、これが君の運命なのだ。」
カパネはクククと笑った。
「何てヤツなの、おじさんは!卑怯だよ、そんなやり方で!!」
「うるさいな、ボウヤは。少し眠っていてもらおう。」
そう言うと、カパネはハンカチに麻酔薬を染み込ませると、コナンに近づいて来た。
「や、止め・・・うっ!!」
カパネはコナンの口をハンカチで覆った。
「う〜っ!!」
コナンはジタバタともがいたが、やがて目がトロンとなっていった。
「うぅ・・・」
コナンはガクッとなった。
「今の内にせいぜい良い夢を見ておくんだな・・・ハッハッハッ!」
カパネは不敵に笑うと、コナンの口にガムテープを貼り、コナンを縛りつけている縄を解いた。
そして、その縄でコナンの体を改めて縛り上げた。
ギュッギュッ!
「フッフッフッ・・・」
カパネはコナンを背中に背負った。
そのまま、コナンをどこかへと運んで行った。
翌朝、哀は追跡メガネのスイッチを入れた。
「あら?バッジの反応が昨日とちがう・・・(まさか・・・)」
哀は考え込んだ。
「(なるほど・・・それが狙いって事ね・・・)」
哀はクスッと笑うと、歩美達を呼び寄せた。
「みんな、ちょっと来て。」
「なぁに、哀ちゃん?」
歩美達が哀の元に集まった。
「あのね、ゴニョゴニョ・・・」
哀は歩美達に作戦を伝えた。
杯戸港 6番倉庫
デルタ達は、6番倉庫で哀が身代金を持って来るのを待っていた。
「フフフ、持って来た時があの子の最後だ・・・」
デルタ達は不敵に笑っていた。
しばらくして、哀の声が聞こえてきた。
「持って来たよ、おじさん!」
「わかった。今開けよう。」
デルタ達は声を哀だと思い込み、安心して扉をのカギを開けた。
ガチッ!
そして、扉が開いた。
ガラッ!
開いた先に立っていたのは・・・
「ホントだ、哀ちゃんの言った通りだったわ。」
帽子をかぶっている歩美と、彼女と一緒に来た元太と光彦だった。
「オ、オマエらは、あの時の・・・」
「あの女の子はどうしたのよ!?」
「哀ちゃんなら、別の場所に行ってるわ。」
歩美は笑った。
「よくもだましやがったなぁ!!」
デルタ達は歩美達に襲いかかろうとした。
その時・・・
「確保だぁ!!」
目暮の大声と共に、渉や美和子ら刑事達が踏み込んで来た。
「う、うわぁぁぁ!!」
デルタ達はなすすべもなく、刑事達に取り押さえられた。
「ク、クソォ・・・」
デルタ達4人は、手錠をかけられた。
ガシャン!
「がんばってよ、哀ちゃん・・・」
歩美は、静かに呟いた。
同時刻、米花港
米花港に、イタリアの強盗団のボス・カパネは車で来ていた。
「フフフ、ここまでうまくいくとはな・・・」
カパネは車のトランクに近づくと、トランクのフタを開けた。
ギィィ・・・
トランクの中には、手足を縛られたコナンがいた。
「!」
コナンは目を覚ました。
「お目覚めか、ボウヤ。」
カパネはコナンに話しかけた。
「ん〜、ん〜・・・」
コナンはもがいている。
「デルタ達から連絡がきていないのが気にかかるが、まぁ良い。私の目的は達成できるのだからな。」
そう言うと、カパネはトランクからコナンを出し、抱きかかえた。
「さて、船に積み込むとするか・・・」
カパネは港に停めた船に向かって歩き始めた。
「(とうとう連れて行かれちゃうんだ・・・今までありがとう、みんな・・・さよなら・・・)」
コナンは泣きそうな顔をしている。
「フフフ・・・ハッハッハッ・・・」
カパネが勝利を確信し不敵に笑った、その時だった。
「そこまでよ!!」
1人の女の子の声が聞こえてきたのは。
「だ、誰だ!?」
「?」
カパネは声のした方を振り向いた。
「やっと追いついたわ・・・」
そこにいたのは、哀だった。
「返してもらうわよ、江戸川君を!」
「(は、灰原・・・)」
「チッ、電話の嬢ちゃんか・・・なぜここがわかった?」
「江戸川君は、発信器がついたバッジを持ってるのよ。そしてこの追跡メガネを使って、居場所を突き止めたってワケ。」
哀はメガネを外すと、キュロットスカートのポケットに入れた。
「さぁ、誘拐犯さんの成敗といきましょうか?」
哀はカパネをにらみつけた。
「ナメるな、小娘!!」
カパネはコナンを地面に降ろすと、拳銃を取り出した。
そして、哀に向けて発砲する。
パシュ、パシュ!
しかし、哀は軽快にそれを避けた。
「なぜだ・・・なぜ当たらんのだ!!」
カパネは叫ぶ。
「当たり前でしょ?自分の事しか考えていないあなた達みたいな連中に、江戸川君を大切に思う私が負けるハズないのよ!」
そう言うと、哀は時計型麻酔銃をかまえ、カパネに向けて発射した。
パシュ!
プス!
「ぐ・・・」
カパネはうめくと、地面に倒れ込んだ。
ドサッ・・・
「江戸川君!」
哀はコナンに駆け寄ると、口のガムテープをはがした。
ピリッ!
「灰原・・・」
哀はコナンの背後に回ると、縄をほどきにかかった。
「大丈夫?今外してあげるからね。」
そう言いながら、哀はコナンを拘束から解放した。
30分後目暮警部達が到着し、カパネ達は連行された。
コナンは蘭達に囲まれている。
「無事で良かったわ、コナン君。」
「さぁ、帰るぞコナン。」
蘭と小五郎がコナンに言ったが、コナンは動こうとしない。
「どうしたの?コナン君。」
蘭はコナンに聞く。
コナンは静かに口を開いた。
「蘭姉ちゃんもみんなも、どうしてボクに話しかけられるの?」
「え?」
蘭達はその言葉の意味がわからなかった。
「どういう意味だ?」
小五郎が疑問を口にする。
「だってボク、灰原が来るのが後少しでも遅かったらイタリアに連れて行かれてたんだよ?そうなったらきっと、ボクはあの人達に汚されてたと思う。もしそうなっていたら、蘭姉ちゃん達はきっとボクを突き放す・・・そう思ってたんだ。」
コナンの言葉を、蘭達は黙って聞いている。
「ねぇ、蘭姉ちゃん達?もしボクが強盗団達の手によって汚されて、光を失っても・・・みんなはボクを暖かく迎え入れてくれるの?」
コナンの声は、ヒドく弱々しい。
哀はいてもたってもいられないという態度を見せる。
そして、次の瞬間・・・
哀はコナンを抱き締めていた。
「は、灰原・・・?」
コナンは驚いている。
哀は静かに言い始めた。
「大丈夫よ、江戸川君・・・たとえあなたがどんな事になっても、私達はあなたを受け入れるから・・・だから、心配しないで・・・」
哀の言葉に、コナンは瞳が潤んだ。
「ありがと、灰原・・・あのさ、灰原・・・?」
「なぁに?江戸川君。」
「実はオレ、前からオマエの事が好きだったんだ・・・つき合ってくれるかな?」
哀はコナンの告白に笑顔で答えた。
「ええ、喜んで。これからもヨロシクね、江戸川く・・・コナン君。」
「こちらこそ、ヨロシク・・・灰原・・・哀ちゃん。」
コナンと哀は、蘭達の前で抱き合った。
こうして、コナンを恐怖のどん底に叩き落としたイタリア強盗団の事件は幕を閉じた。
余談だが、その日からコナンと哀が仲良く手をつないで歩いていた事は言うまでもない・・・
完 |