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夏のホラー2016

裏野ハイツ観察日記

作者: 高千穂 絵麻

夏のホラー2016に出そうと考えていて間に合わなかったので単独で投稿しました。

 8月31日 晴


 宿題は、まったくやっていない。

 それは当然で、当たり前だけど。


 明日から学校が始まる。

 夏休みの間は、いろいろなことがあって面白かった。


 201号室のお婆ちゃんの部屋は、専門の業者さんが来てキレイになっていた。

 においも取れているっていうから、専門家はすごいんだと思った。


 何気ない日常がまた続いていくのだと思うと、少しがっかりする。

 でもきっと、僕が楽しめるような毎日になると思う。

 僕も頑張ろう。


 もう少し、裏野ハイツ(ここ)にはいられると思うから。



 8月30日 晴


 お婆ちゃんが見つかった。

 201号室に住むお婆ちゃんだ。


 僕は知っていたけど、ろうじんのこどくし、って救急隊員が言っていた。

 これでへんな臭いから解放されるらしいって。


 僕は鼻が悪くて臭いには敏感じゃないから、あまり気にしなかったけど。



 8月29日 晴


 102号室のリフォームっていうのが終わったらしい。

 のぞいてみたら、キレイになっていた。


 おじさんは部屋を出て行っちゃったみたい。



 8月27日 晴


 102号室が新しくなるんだって。

 リフォームって言ってた。

 そんなに汚れていないんだけど、どうしてなんだろう。


 住んでいたおじさんはちっとも教えてくれなかったけど。



 8月25日 晴


 102号室のおじさんが、吊り輪の体操をやって最後の着地をしていた。

 疲れていたのかな、ぐったりしていたな。


 102号室のおじさんのお友達かなあ。

 シャッキーン、シャッキーンって、モウシュウジャーの武器の音を口真似していた。

 僕もモウシュウジャー大好き。

 だって、カッコいいんだもん。


 シャッキーン!



 8月23日 雨


 102号室のおじさんが、体操をしていた。


 僕もテレビで五輪ごりんなんとか? 五輪ごりんピック? そんなやつのテレビを観ていて知ってる。

 吊り輪っていうんでしょ。


 支えが首だけなんて、とっても上手だと思った。



 8月22日 雨


 このところ雨がよく降るっていうから、101号室のおじさんが雨漏りの修理をしに屋根へ上がっていたんだ。


 僕が挨拶したらびっくりしてた。

 しりもちをついて、ひっくり返っちゃった。


 挨拶は大事だよって言われていたから、僕はきちんと挨拶したよ。


 ひっくり返ったおじさんはそのまま裏庭で寝ているけど、こぼれたペンキで真っ赤っかになっちゃった。

 なんだかおかしいの。



 8月16日 曇


 103号室にお巡りさんがいっぱい来ていた。

 玄関やベランダにシートがかけられてて、外にはテレビ局もいたかな、いっぱい人が来ていた。


 僕もテレビに出ちゃったかも。

 そうだったら面白いなあ。



 8月15日 晴


 今日は花火大会があった。

 キレイだった。


 昨日が雨だったから、ちょっと心配していたけど大丈夫だった。


 今日はよく晴れていた。



 8月14日 雨


 雨が降っているから今日は家の中で遊んだ。


 103号室の男の子が面白い手品をやってくれた。

 お父さんとお母さんに外してもらったみたい。

 頭を取って、転がしてみせたんだ。


 僕にはそんなことできないって驚いていたら、男の子はすごく喜んでいた。


 首だけで。



 8月13日 曇


 103号室の家族が旅行から帰ってきた。

 3歳の男の子は僕とよく遊ぶ子だったから旅行から帰ってきて嬉しかったけど、今日は大きなカバンにかくれんぼしていたみたいで、ちっとも遊べなかった。


 つまらないな。



 8月7日 雨


 201号室のお婆ちゃんのところへ遊びに行った。

 お婆ちゃんはびっくりして僕を見ていたけど、チャンバラごっこや鬼ごっこをして遊んでくれた。


 スイカ割りで使うようなバットを振り回すけど避けまくる僕にはちっとも当たらなくて、お婆ちゃん弱いな。


 少ししたら、急に胸を押さえてうずくまっていた。

 ダンゴムシの演技かな。上手だと思った。



 8月5日 曇


 103号室の家族はこれから旅行するんだって。

 ここの男の子とはよく遊んでいたけど、ちょっと遠くに行っちゃうっていうから、淋しいな。



 8月2日 曇


 101号室のおじさんと201号室のお婆ちゃんがビーフシチューを作ってくれた。

 僕はお肉が苦手で一口も食べなかったけど、他の住人さんたちは美味しい美味しいって食べていた。


 肉って生き物の死体だよね。

 よくそんなものを食べられるなあ。



 8月1日 雨


 101号室のおじさんと201号室のお婆ちゃんが、僕のお腹にナイフを刺していた。


 みのしろきん、っていうやつを僕のパパとママがくれなかったからだ、って言っていた。

 痛いけど段々お腹が熱くなって、眠くなって僕は寝ちゃった。


 まだ昼間だったから、夕方のモウシュウジャーのテレビが始まる前に起きられるかな。


 それと、少しだけ日記を書けた。


 宿題は、まったくやっていない。

 それは当然で、当たり前だけど。

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― 新着の感想 ―
[一言] 怖いというより面白いというのが先に来ました。 もちろん、ホラーとして充分に面白いという事です。 日記を遡るという手法で語り部の子供の存在感が際立っていますね。 読み進めていくうちにラスト(…
[良い点] これは予想だにしないラスト!怖面白かったです。 [一言] 語り口が無邪気な感じで途中までの怖さは3で、しかしラストで7まで上がりました!(十段階です
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