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突然の彼女3・ファイナルエピソード
作:ヒロヒト.JJ



その9 卓くんのラーメン


卓くんのラーメン

 英之にバレた。私が友達の家に行って勉強してないことを。
 友達とは口裏を合わせておいたのに、まだ私の考えが甘かった。
 英之は、ママから聞いた私の友達の家に電話をして、あちらの両親にお礼を言ったそうだ。当然、私がそこにいるわけもなく、英之は事の次第を知り、卓くんの家から戻った私を問い詰めた。
 もちろん、ママには聞かれないように、そっと私の部屋にやって来てのこと。
 隠してもしょうがないから、英之にイヤミのつもりで正直に言ってやろうと一瞬思った。でもそれはやっぱりまずい。
 私はギリギリのところで踏みとどまった。どうしてもママには知られたくない。
 ママと英之は普通に仲がいい。ママは英之の冷酷さを知らないから。義理の子の私への仕打ちを知らないから。
 
 今、精神的に弱っているママを悩ませることはできない。英之の仕打ちも、卓くんちで勉強してることも、絶対言うべきでないと私は心に誓った。
「私、ママや英之お父さんに迷惑をかけるようなことは絶対してませんから。高校も希望の学校に絶対うかりますから!」

 この一言だけで、それ以降、私は貝のように口を閉ざした。
 私が頑固なのは英之もよく知っている。これ以上聞いても無駄だと悟った英之は、
「勝手にしなさい!希望の高校へ入れなかったら学費は自分で稼いで行くことだ!」
と、捨て台詞を残して部屋を出て行った。


 今日も卓くんの家に来ても集中力がない。昨日のことが頭の片隅で引きずっている。
「どうしたいずみ?集中してないみたいだね?」
 やっぱり卓くんにもバレた。
「ちょっと…色々あって…」
「…じゃあ今日はこのくらいにしとこうか?」
 私は自分に言い聞かせるつもりで首を横に振った。
「ううん。やるよ。こんなんでしょっちゅうやめてたら受験なんてできないもん」
「そっか…よし、じゃ頑張ろうな!」
「うん。卓くん、私にもっと気合入れてくれていいんだよ?」
「いや、そう言われてもねぇ(^^ゞ僕はそんなタイプじゃないんだ」
「じゃどんなタイプ?」
「そんな自己診断なんてできないよ。でもね、僕は今まで人から気合を入れられると、余計に緊張して失敗しちゃうんだよ」
「あ、それなんかわかる」
「こう言っちゃご都合主義かもしれないけど、僕は誉められて伸びるタイプだって自分で思ってるんだw怒られると委縮するんだ。まぁ腰抜けと言われたらそれまでだけどね」
「卓くんの腰抜け!」
「あら(ノ__)ノコケッ!」
「あは(*^▽^*)冗談だよw じゃあもうひと頑張りするね!」

 
 やればなんとか知らないうちに集中していて、気づけばいつも定時の食事時間になっていた。
 そこで私のうっかりミスが発覚。そう、それはコンビニに寄っていつものおにぎりを買って来るのを忘れてしまったこと。
 昨日の英之とのことで頭がもやもやしたまま、ここに直行で来てしまったんだ。
 どうやら卓くんもそれに気づいたようだ。
「いずみ、今日は食べるもの持って来なかったのかい?」
「え?…んとぉ…私、今日なんか食欲ないんだ。。」
 首をかしげる卓くん。
「ほんとに?」
「う、うん。だから先にシャワーして来るね」
 私はぎこちなく立ち上がる。

 
 シャワーしてる最中にお腹が鳴った。恥ずかしい…卓くんに聞かれなくて良かった。
 今日はこのあとすぐ帰って家でごはん食べようかな。。 
 卓くんには体調が少し悪いって言えばいいよね。さっきも食欲ないって言ってあるし。よし決めたっ!

 脱衣室から出ると、とってもあったかそうな良い匂いが私の鼻をくすぐった。
 見るとそこには、卓くんがちょうどラーメンをテーブルに運んでいるところだった。
「タイミングばっちりだね。いずみのシャワーの時間は規則的だから、ラーメンの出来上がる時間も計算しやすかったよ」
「卓くん。。」
「あったかいうちに食べなさい」
「…でも私…食欲が。。」
「うん。わかってるわかってる。でもあっさり味の塩ラーメンだよ。ツルツルっと食べれるさ。僕も昔より進歩したんだ」
「進歩って?」
「ちゃんと野菜も…ほら、ほうれん草も入ってるし、メンマもナルトも海苔も入れたよ。しかもこれ見て!僕自慢の半熟味付けゆでたまごなんだ」
「うわ、すごい!卓くんの手作り?」
「そうだよ。昔みたいに素ラーメンはやめたんだ。体にやさしくて健康的だろ?」
「インスタントラーメンをやめた方がもっと健康的だと思うけど(^_^;)」
「あはは(^◇^)確かに。でも今日は勘弁して。さ、あったかいうちにどうぞ」
「・・・うん。。」

 卓くんには見透かされていた。私が食欲ないなんて言ったウソを。
 私がずっと悩んでいたために、うっかりおにぎりを買って来るのを忘れたことを。
 そしてこんな状態の私に、理由も何も聞かずにラーメンを作ってくれた。
 私のために。。

 ひとくちラーメンをすすった。
「おいしい。。」
 たかがインスタントラーメンなのに、ものすごくおいしいと思った。本当に心の底からそう感じた。
「やっと少し微笑んでくれたね。いずみはやっぱり笑顔が似合うよ」
「やだぁ…(♯^ - ^♯)そんなこと言われたら恥ずかしいよ卓くん」
「ごめんごめん。食べづらいよな。じゃ僕は洗濯ものを片づけて来るから」
 そう言って卓くんは隣の部屋に入って行った。

 私はラーメンを食べながら思った。
 そう言えば、しばらく家族みんなで一緒にごはんを食べていない。
 朝は食べないで学校へ行くし、昼はお弁当。夜は卓くんちでおにぎり。

 私の家族って・・・なんかわからない。
 卓くんも家族の一員に入れちゃいけないのかな。。

 卓くんは優しい。優しすぎるよ。。
 気づくと私は泣いていた。ラーメンをすすりながら泣けてくるのはなぜだろう?

 卓くんのあっかたいラーメン。。
 おいしいのに。。こんなにおいしいのに泣くなんて。。
                (続く)


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