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突然の彼女3・ファイナルエピソード
作:ヒロヒト.JJ



その4 いずみのやるせなさ


いずみのやるせなさ

 私が学校から帰ると今日もリビングが散らかっていた。
 もちろん妹の“ひなた”がしたことはわかっている。
 最初のうちはママや私もすぐに片づけたけど、最近はそのまんま。
 あとでまとめて一気に掃除するって感じ。

 テーブルにメモ書きがあった。
 ママはひなたと一緒に夕飯の買い物に行ったらしい。
 私は見慣れた汚いリビングを気にもとめず、ソファに横になった。

 4歳のひなたはよくヒスを起こす。
 お気に入りの玩具で遊んでいても、急に叩きつけて壊したり物を投げたりする。
 幸い、お皿だとか食器のような割れ物は投げないから今のところ助かっている。
 でもこんなことが毎日だと、片付けするにも気がめいる。

 そんな時、私と5分違いほどで英之お父さんが出張から帰宅した。
 私はすぐにソファから起き上がった。
 そう、私はこの義理の父親を“英之お父さん”と呼んでいる。
 さすがに卓くんのように、英之くんとは呼べない雰囲気があった。
 といって、パパとも呼べず、単純にお父さんとも言えなかった。
 私個人的には呼び捨てにしたいくらなんだけど、一応養ってもらってる手前、顔をたてて名前のあとにお父さんを連結させて呼んでやってるのだ。
 でも心の中ではいつも“英之”としか言わない。

「随分散らかってるな。いずみ、片付けなさい」
 いつもなら夜9時過ぎまで帰って来ない英之なのに、出張の帰りの汽車が早く着いたのかどうか知らないけど、こんな夕方にもならない時間に家に戻るのは予想外だ。
「あとでするから」
「あとにすると絶対しないからダメだ」
「いつもママと夜にやってるもん」
「ママに負担をかけないように、いずみがやればいいだろ!」
 全くウザい義理のオヤジになった。たまたま早く帰って来たからって、ママと私のペースを乱さないでほしい!
 ママと結婚したときは私にも優しかったのに。今に思えばあのときがウソのよう。
 
「だって、これみんなひなたがやったんだよ」
 英之はムッとした目で私を見た。
「いずみはひなたより何歳年上のお姉ちゃんなんだ?妹のしたことはいずみがフォローしなきゃダメだろ!」
 こんな理不尽なこと言われると普通誰でもこう反論したくなると思う。

“自分のしたことは自分でやらせるのがしつけってもんでしょ!”と。

 でも私はずっとその反論ができないでいた。それは英之が口癖のように言うセリフ。
「ひなたは耳が聞こえないんだから苛立つのは当たり前だ!まだ子供なのに大きなストレスをためてるんだ!ひなたの身になって考えてみろ!」

 これを言われたら一言も返せない。。
 それに私もひなたが可愛い。難聴の妹に厳しいしつけをするのにも抵抗がある。
 ママもひなたのしつけには甘い。理由はわかってる。
 ずっと前に、ママが泣きじゃくりながら英之と話してるのを聞いたことがる。
 ママは、生れつき耳が聞こえないひなたを産んだことに、ショックと重大な責任を感じているのだ。 
 そのことで英之も私によく説明する。
「今のママは精神的に弱っているから、些細な注意でも神経にさわる。だからこそ、いずみがしっかりとひなたの面倒を見なきゃダメなんだぞ!」

 そんなのわかってる。ホントにうっとうしい義理のオヤジ。
 第一、自分はどうなのさ?仕事はできるかもしれないけど、家事や育児は全くしない。
 だけどひなたは英之が大好き。そして当然だけどあのオヤジはひなたを溺愛してる。
 仕事から帰るとすぐにひなたに満面の笑みでだっこする。
 他の大変なことは何もしないくせに・・・
 それにひなただけを可愛がる。ひなただけにしか優しくない。
 そう・・ひなたが産まれてからというものずっと。。 

 私は無言で片付けをして出かける準備をした。
「どこへ行く?」
 部屋着に着替えた英之が私に聞く。
「友達の家で受験勉強しに行くの」
「そんなの一人でするもんじゃないのか?」
「秀才の友達に教えてもらってるの」
「ふーん。。」

 もう、こんな空気の家ヤダ!早く卓くんのとこ行こう。。」
                   (続く)   







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