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その15 最後のみっちっちぶろぐ・前編
その15
最後のみっちっちぶろぐ・前編

 アタシ…もうこれ以上ブログを更新する気にはなれなくなっちゃった。
 なんだか書いてたら泣けてくるの。何度も書いては消しての繰り返しで。。
 だって…だってあんな森田でもあまりにも気の毒なんだもん。。

 それにアタシがブログを始めた元々のきっかけは自分のPTSDを治すため。
 アタシも昔は毎日不摂生な生活で、男に捨てられたり捨てたり…ケンカ別れもしたし、貢いだあげくに逃げられたりもした。
 でも森田に比べれば、アタシの過去なんて大したことじゃないと思うの。
 アタシの経験なんて、普通誰でも一度や二度はあるはず。単にアタシの精神が弱かっただけ。

 それに比べて森田はハンパじゃない罠にかかったんだもの。アタシの方がまだマシ。
 ゆりかパパが糸を引いた人間に、ことごとく騙された哀れな森田。。
 そして最終的にゆりかを失った。ドジな男だけど、人が良過ぎるくらい素直な奴。
 そんな森田が受けたダメージは計り知れないと思う。
 よりによって義理の父親に裏切られたんだもの。。
 
 アタシはどうしたらいいのかな?森田に何もしてやれないし、ゆりかにも。。
 昨日、茜崎さんが森田に、ゆりかとヨリを戻してほしいようなことを言ってたけど…できればそうしてあげたい。
 ゆりかだって、森田が嫌いで別れた訳じゃないって言ってたもの。。

 アタシがあれこれ思い悩んでいると、意外にも森田の方から訪ねて来た。
「昨日はシチューごちそう様でした。鍋洗って来ましたのでお返しに来ました」
「あぁ、鍋ね。。そんなのいつでもいいのに」
 アタシが不思議に思ったのは、今日の森田はワリと表情が明るいこと。
「あんた、少し元気になったみたいね?」
「はい。今日、たまった仕事を忙しくこなしていたら元気が出てきました」
「それって、仕事で気を紛らわしたってことじゃない?」
「そうでもないんですよ。僕、あれからまた色々考えて、僕なりの決断をしたんです」
「決断?」
「はい。だからもう悩んでません。そう決めたから。今日はそれを美智代さんに聞いてもらおうと思って」
「…そう。。じゃあ上がって」
「えっ?(゜〇゜;)中に入れてくれるんですか?いつも玄関だけなのに」
「あんたはアタシを襲わないでしょ」
「襲いませんけど、部屋が散らかってるんじゃ…?」
「大事な話なんでしょ?一人分の足の踏み場くらいあるわよ」
「ひ…ひとり分。。(⌒-⌒;」


 部屋に上がった森田は、いきなり床に落ちていたビニール袋に足をとられて転倒したけど、いつもよくある笑えないドジだから軽く受け流すことにしたの。
「正座はしなくていいわ。韓国では罪人の座り方なのよ」
「え?美智代さんて韓国人なんですか?」
「豆知識よっ!もうっ!言わなきゃ良かった。。」
「すいません。。」
「じゃあ大事な話を聞かせてくれない?昨日のことなんでしょ?」
「はい。。」
「どうすることにしたの?」
「どうもしないことに決めました」
「・・・そう。。そうよね。。」
「茜崎さんは僕に、ゆりかさんとヨリを戻せないかと言ってくれましたけど、それはどう考えても無理な話です」
「・・・うん。。続けて」
「仮にこれを実現するとしても、ゆりかさんに全ての事情を打ち明けなければなりません。そんなことをしたら彼女はどうなってしまうと思いますか?一度はカウンセリングに通って苦しんでいたゆりかさんを、また同じ目に遭わせることになります。いや、それ以上のことになるでしょう。彼女の精神が異常をきたしてしまうかもしれません。」
「・・・そうね。あんたの言うとおりだと思うわ」
 アタシは残念でならなかった。森田がここまでゆりかのことを考えてるのに。。
「逆に僕が感じたのは、茜崎さんの方がゆりかさんに未練があるのではと思うんですよ。ヨリを戻したいのは茜崎さんの方じゃないかって。だったらなぜ自分でそうしないんでしょう?」
「それはわかるわ。ゆりかから聞いてたもの。それが茜崎さんのこととは知らずにね」
「ど、どんな?」
「いずみちゃんの父親になる人は遊び人で、常に1か所に落ち着かない人。それができない人。当時のゆりかは一途で、相手のこともよく知らずに盲目のように好きになったけど、本性がわかって冷めてしまったらもうどうでも良くなったって言ってたわ。むしろ置き去りにされたことを恨んでるし、会うと嫌悪感さえ覚えるって」
「へぇ…ゆりかさんがそんなことを。。」
「だから茜崎さんもそのことは十分わかってるんだと思うわ。だからだと思うの。自分はゆりかに迷惑かけたし、やり直すのは無理だって」
「だからって僕にあんなことを頼むものでしょうか?」
「それは是枝さんを許せないからでしょ?あんな手でゆりかを我がものにする人間は軽蔑に値するって、昨日の帰りに彼が言ってたわ。それなら森田にゆりかをゆだねた方が彼女は幸せだって」
「買いかぶりですよ。僕にはそんな器量はありません」
「でも正直アタシね、今だから言うけど、あんたとゆりかが別れちゃったとき本当に残念だと思ってたの。もしあんたがゆりかパパに気に入られてたら絶対こんなことにはならなかったのに。。」
「…それが僕の欠点なんですよ。仕方ありません。でもそのことで今更ながらですけど不思議に思ったことがあるんです」
「なにが?」
「僕がゆりかさんと結婚してからも、お義父さんは僕を全然気に入ってはくれなかったんです。それなのに今回の一件で、慎也さんには協力を求めたじゃないですか。そこがいまいちわからないんです」
「あぁ、そのことなら簡単よ」
「簡単?」
「ええ。アタシが茜崎さんに頼まれてゆりかの家に行ったことは聞いたわよね?」
「ええ、覚えてます」
「あのときは単に様子を見に行っただけじゃなくて、聞きだしてほしい指定の内容を頼まれてたのよ」
「指定の内容?」
「そう。つまり、ゆりかパパと石丸慎也は仲が良かったかってこと」
「はぁ…それで?」
「ゆりかは慎也と付き合ってるときにパパに紹介してるし、一緒にお酒も飲んだりした親しい仲だったんだって」
「そうでしたか…慎也さんはお義父さんに気に入られてたんだ。。だからか。。」
「そう。それにあんたをどうにかしたいって気持ちは二人共通だったしね」
「確かにそうですね(^_^;)ハハ…」
「また凹んじゃった?」
「いえいえ、それはもうないです。確認できて逆にすっきりしました」

 1分ほど、無言の空間が漂った。さすがのアタシも次に言う言葉が見当たらない。
 そんなアタシに元気を装った森田がびっくりするようなことを言ったの。

「美智代さん、短い間でしたけど、今まで大変お世話になりました。僕、ここを引っ越すことに決めました」
                       (続く)
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